HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2023年新年号

健保ニュース

健保ニュース 2023年新年号

医療保険制度改革へ「議論の整理」
前期に1/3報酬調整を導入
健保組合 負担軽減へ支援拡充

社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)は12月15日、次期医療保険制度改革に向けた「議論の整理」を取りまとめた。被用者保険者間の格差是正策として、令和6年度から前期高齢者の医療給付費の1/3の部分に「報酬水準に応じた調整」を導入する一方、「健保組合の負担軽減となるよう国費によるさらなる支援を行う」と明記。拠出金の「特別負担調整」に国費を拡充し、負担軽減対象となる保険者の範囲を広げるなどの支援策を盛り込んだ。健保連の佐野雅宏副会長は、健保組合の負担は限界にあると訴え、現役世代の負担軽減につながる改革の継続が不可避であると総括した。

社保審医療保険部会は次期医療保険制度改革に向けて、9月29日に審議を開始し、12月15日まで8回の審議を重ね「議論の整理」を取りまとめた。

「議論の整理」は、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、全世代が安心と信頼で支え合う持続可能な医療保険制度を構築するため、①子育て世帯への支援の強化②高齢者医療を負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し③被用者保険者間における負担能力に応じて公平に負担する仕組みの強化④医療費適正化対策の実効性の確保⑤国民健康保険制度改革の推進─を総合的なパッケージとして改革を進める必要があると明記。

今後の生産年齢人口の減少の加速化等を見据え、全世代の安心を広く支え合い、次世代に引き継いでいくために不可欠な改革の姿をまとめた内容で、厚生労働省に対し、確実に改革を行うための取り組みを求めた。

出産一時金を全世代で負
後期対象額は全体の半分

①は、出産育児一時金について、全施設の平均出産費用と近年の伸びを勘案し、直近の出産費用も賄える額を設定した。

現行の「42万円」を8万円引き上げ、令和5年4月から「50万円」に増額する。引き上げ後3年を目途に出産育児一時金のあり方を検討するとした。

一方、後期高齢者医療制度が出産育児一時金にかかる費用の一部を支援する仕組みを6年度から導入。対象範囲は出産育児一時金の対象額の7%とし、以降は、7%を起点として出産育児一時金に関する現役世代と後期高齢者の1人当たり負担額の伸び率が揃うよう割合を設定する。

対象額は、6年度および7年度は経過措置として出産育児一時金の全体(公費を除く)の1/2とし、8年度から全体を対象とすることとした。

この見直しによる6年度の制度別の影響額は、▽健保組合160億円▽協会けんぽ220億円▽共済組合等80億円▽国民健康保険60億円▽後期高齢者130億円─。後期高齢者に新たな負担が生じる一方、現役世代は、健保組合▲40億円、協会けんぽ▲60億円、共済組合等▲20億円、国民健康保険▲10億円それぞれ負担が減少する。

他方、出産費用の見える化は、直接支払制度を行っている医療機関等に対し、▽医療機関等の特色(機能や運営体制等)▽室料差額や無痛分娩の取り扱い等のサービス内容▽医療機関等における分娩に要する費用および室料差額、無痛分娩等の内容(価格等)の公表方法─の報告を求める。

また、直接支払制度の専用請求書の内容にもとづき算出した平均入院日数や出産費用、妊婦合計負担額等の平均値にかかる情報と合わせ、新設する「見える化」のためのホームページで医療機関等ごとに公表。

公表項目等の詳細は、有識者により5年夏までに検討を行い、医療保険部会に報告のうえ、6年4月を目処に実施することとした。

現役世代の負担軽減へ
高齢者負担率を見直し

②は、現役世代の負担上昇を抑制するため、第1・2号被保険者の人口比に応じて負担割合の見直しを行っている介護保険を参考に、後期高齢者1人当たり保険料と現役世代1人当たり後期高齢者支援金の伸び率が同じとなるよう、令和6年度から高齢者負担率の設定方法を見直す。

合わせて、後期高齢者の保険料賦課限度額を現行の年額66万円から80万円へ14万円引き上げるとともに、1対1となっている保険料の均等割と所得割の比率について、年金収入のみで153万円を超える後期高齢者の所得割の比率を引き上げる。

賦課限度額は当初、6年度から80万円に引き上げる提案だったが、保険料の急増に配慮し、6年度に73万円、7年度に80万円と2年間かけて段階的に引き上げる激変緩和措置を実施。

同様に、所得割の引き上げについても、年金収入154~211万円の後期高齢者は保険料を7年度から引き上げる経過措置を設けることとした。

この見直しによる財政影響を制度別にみると、6年度の後期高齢者医療制度における保険料負担は820億円上昇する一方、現役世代の健保組合は▲290億円軽減される。

また、協会けんぽは▲300億円、共済組合等は▲100億円、国民健康保険は▲80億円それぞれ保険料負担が軽減。国費は50億円減少する。

健保は年600億円増
国費は年1290億円減

③は、被用者保険者間における前期高齢者の医療給付費負担について、現行の「加入者数に応じた調整」に加え、全体の3分の1の部分に「報酬水準に応じた調整」を令和6年度から導入する。また、前期高齢者納付金の計算で複数年(3年)平均給付費を用いることとした。

他方、健保組合全体として、負担上昇がトータルとして抑制されるよう、企業の賃上げ努力を促進する形で既存の支援を見直すとともに、国費によるさらなる支援を行う。

具体的には、▽高齢者医療運営円滑化等補助金について、賃上げ等により一定以上報酬水準が引き上がった健保組合に対する補助を創設▽健保連が実施する健保組合に対する高額医療交付金交付事業について、財政的支援の制度化を行うことで事業規模を拡充▽特別負担調整への国費充当を拡大し、拠出金の負担軽減対象となる保険者の範囲を拡大─する支援を措置。

1/3報酬調整による、健保組合における前期納付金等への影響額は年600億円増える一方、協会けんぽは年970億円減少。ただし、1/3報酬調整の導入部分にかかる協会けんぽへの国庫補助の廃止で、国費は1290億円減少する反面、協会けんぽの保険料への影響額は320億円増加する。

健保組合の600億円の負担増に対しては、企業の賃上げ努力を促進する形で既存の支援を見直すとともに、高齢者負担率の見直し(▲290億円)と合わせて負担減となるよう、国費によるさらなる支援を行うとした。

第4期医療費適正化計画
フォーミュラリなど推進

④は、令和6年度から11年度を期間とする「第4期医療費適正化計画」の見直しに向けて、現行の目標のさらなる推進、新たに取り組むべき目標、取り組みの実効性を確保するための体制構築などを明記した。

後発医薬品の使用促進に向けては、フォーミュラリ等の取り組みを地域の実情に応じて検討・推進するとともに、バイオ後続品に関する目標設定を踏まえ、今後、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、新たな数値目標を設定する。

リフィル処方箋については、地域差の実態等を確認したうえで必要な取り組みを進めるとした。

重複投薬・多剤投与の適正化に向けては、電子処方箋の活用推進等、さらなる取り組みの推進を図るとともに、多剤投与は調剤報酬で6種類以上という基準が用いられていることを踏まえ、取り組みの対象を広げる。

このほか、⑤は、国会での附帯決議に明記されている出産に関する保険料の配慮のあり方について、出産する被保険者にかかる産前産後期間相当分(4か月間)の均等・所得割保険料を免除する措置を講じる。

また、退職者医療制度について、対象者の激減に伴い財政調整効果がほぼなくなっているなか、保険者等の事務コストは継続しているとして、業務のスリム化、事務コストの削減を図る観点から、前倒しで廃止することとした。

健保は全体で負担軽減に
佐野副会長が強く要望

医療保険制度改革に関し、健保連の佐野雅宏副会長は、出産育児一時金に対する後期高齢者医療制度からの支援について、「経過措置の部分は結果的に現役世代の負担は減らない」と指摘し、出産育児一時金の引き上げと全世代で支え合う仕組みの導入に1年間のタイムラグが生じることと合わせ、「この間の現役世代の負担軽減、財政支援を必ずお願いする」と要望した。

被用者保険者間の格差是正については、「単に設定料率の格差だけに着目するのでなく、保険者機能など健保組合が果たしてきた役割も加味して考えるべき」と言及し、「報酬調整はあくまでも3分の1の導入に止め、今後、さらに調整割合を引き上げるようなことがあってはならない」と強調。

被用者保険者への支援は、「今回の改革により減少した国費財源は、必ず全額を現役世代の負担軽減に充てたうえで、健保組合が全体として負担軽減となるよう、国費によるさらなる支援を確実に実施するよう訴えた。

今回の「議論の整理」については、全世代型の社会保障の構築に向け、▽現役世代の負担軽減▽世代間・世代内の負担バランスの見直し▽負担能力に応じた見直し─を行うなかで、高齢者負担率の見直しや支え合いとして後期高齢者が負担する仕組みを導入するなど、一定程度評価できる内容と言及した。

他方、「現役世代、特に健保組合を取り巻く環境は極めて厳しい状況にあり、負担は限界にある」と指摘。当面の間、高齢者が増加する一方で現役世代が減少する状況を想定し、「現役世代の負担軽減につながる改革を引き続き行うことは不可避である」と総括した。

被用者保険の格差是正については、企業、労働組合とともに懸命に取り組んできた健保組合の保険者機能の発揮を阻害することのないよう、重ねて要請した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年