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健保ニュース 2022年12月上旬号

医療・介護制度改革など4分野
全社会議が年末へ「論点整理」
被用者保険格差是正 企業の賃上げ努力に支援も

全世代型社会保障構築会議(清家篤座長)は11月24日、これまでの議論を反映した「論点整理」をまとめ、同本部(本部長・岸田文雄首相)に報告した。「論点整理」は、▽こども・子育て支援の充実▽働き方に中立的な社会保障制度等の構築▽医療・介護制度の改革▽地域共生社会づくり─の改革の方向性を明示。この内容に沿った報告書を年末にまとめる。医療・介護制度の改革は、被用者保険における保険料率の格差是正に際し、企業の賃上げ努力を促進する形での支援を提言。また、「かかりつけ医機能」が発揮される制度整備に向け、医療機関・患者の「手上げ方式」による活用を打ち出した。

この日の会合では、全世代型社会保障構築会議が、これまでの議論を踏まえ、①こども・子育て支援の充実②働き方に中立的な社会保障制度等の構築③医療・介護制度の改革④地域共生社会づくり(住まいの確保等)─の4分野における論点を整理した。

2023年、2024年を見据えた短期的課題とともに、中期的、長期的な課題について、計画的に取り組みを進めていくための改革の方向性を明示。年末の取りまとめに向け議論し、全世代型社会保障構築本部に「報告」を行う。

各分野のうち、①は、妊娠・出産・子育てまで一貫して身近で相談に応じ、必要な支援につなぐ「伴走型相談支援」や0~2歳児への経済的支援の充実をはじめ、出産育児一時金の大幅な増額と出産費用の見える化、不妊治療に対する引き続きの支援を検討課題に位置づけた。

恒久的な施策には恒久的な財源が必要と主張し、「骨太の方針2022」に沿って、検討すべきと明記。また、来年度の「骨太の方針」で将来的にこども予算の倍増をめざしていくうえでの当面の道筋を示していく方向性も盛り込んだ。

②は、非正規雇用労働者の処遇改善や正規化を進めるとともに、希望すれば誰もが主体的に成長分野などの企業へ円滑に移動できるような環境整備を図ることによって、「構造的な賃上げ」につなげていく対応を基本的方向に据えた。

勤労者皆保険に向けては、企業規模要件の撤廃、非適用業種の解消を早急に実現するほか、小規模な個人事業所や適用対象外となっている短時間労働者も適用除外規定の見直しを行い、被用者保険の適用を図るべきと明記。

フリーランス・ギグワーカーについても、労働基準法上の「労働者」に該当すれば、適用対象外となる場合を除き、確実に被用者保険を適用する必要があるとした。

③は、「医療保険制度」について、現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、負担能力に応じ、すべての世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みを強化する改革を進める。

このため、▽出産育児一時金の費用を負担能力のある後期高齢者も含め医療保険の加入者全体で支え合う仕組み▽後期高齢者の保険料負担と現役世代の支援金について1人当たり伸び率を均衡▽被用者保険における保険料率の格差是正─について検討すべきと提言。

賦課限度額や所得にかかる保険料率の引き上げにより、負担能力のある高齢者に応分の負担を求める。

さらに、前期高齢者の医療費の分担に際しては、企業の賃上げ努力を促進する形での支援を検討する対応も盛り込んだ。

「医療提供体制」では、今後の高齢者人口のさらなる増加を見据え、「かかりつけ医機能」が発揮される制度整備が不可欠であると指摘した。

早急な実現に向けて、「かかりつけ医機能」の定義や活用などの論点を整理する必要があるとし、「かかりつけ医機能」の定義は現行の省令に明記されている「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」をベースに検討。

「かかりつけ医機能」の活用へ、医療機関、患者それぞれの「手上げ方式」を打ち出し、医療機関は自らが有する「かかりつけ医機能」について住民に情報提供を行うとともに、自治体や患者がその機能を把握・認識できるような仕組みとする。

他方、少子高齢化や人口減少がさらに進むなか、都道府県の責務の明確化による地域医療構想の推進、医療法人の経営状況の見える化などの医療法人改革、働き方改革の確実な実施にも取り組むとした。

「医療分野におけるDX」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の著しい進展に対応した改革を進めていく観点から、データヘルス、オンライン診療、AI・ロボット・ICTの活用などを確実に推進。また、匿名データによるEBPMへの活用や、マイナンバーと紐付いた社会保障データの利活用のあり方について整理する。

「介護保険」は、高齢者人口のさらなる増加と生産年齢人口の減少を見据えて改革を進めることが重要と問題提起。保険制度の持続可能性を確保するため、「骨太の方針2022」や「新経済・財政再生計画改革工程表2021」等に掲げられた課題を検討するよう提言した。

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