HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2022年11月下旬号

健保ニュース

健保ニュース 2022年11月下旬号

財務省が医療制度改革など提言
かかりつけ医機能発揮へ法制化
機能強化加算を継続課題に

財政制度等審議会(榊原定征会長)の財政制度分科会は7日、令和5年度予算編成と今後の財政運営への考え方を提言する「建議」の取りまとめに向け、財務省の社会保障改革案にもとづき議論した。財務省は、効果的・効率的な医療提供体制の実現を医療制度改革の最重要課題に位置づけ、医療機関の「かかりつけ医機能」を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要があると提言。「かかりつけ医機能」にかかる診療報酬上の評価である「機能強化加算」の実態を改めて問題視し、前回改定から引き続く課題に据えた。他方、医療保険の負担のあり方では、被用者保険者間の格差是正に向け、前期高齢者納付金は報酬水準に応じた調整に移行すべきとした。

前期高齢者納付金は
報酬水準に応じ調整

この日の財政制度分科会は、社会保障をテーマに議論し、財務省から総論や医療・介護分野における課題と改革の方向性が示された。

総論では、少子高齢化が加速するなかで、「能力に応じて負担し、必要に応じて給付し、持続可能な制度を次世代に伝える」という「全世代型社会保障の構築」は「極めて優先度の高い課題」と指摘し、ウィズコロナに移行するなかで全世代型への制度改革を加速する必要があると問題提起した。

医療分野では、①医療保険の負担のあり方②医療費のあり方③医療提供体制─について提言。

①は、後期高齢者の保険料と現役世代による支援金のあり方について、「少なくとも現役世代の支援金の伸びを後期高齢者保険料の伸びの水準まで抑える制度改正が必要」とした。

他方、保険料率に大きな差が生じている被用者保険者間の格差是正に向けては、加入者数に応じた調整となっている前期高齢者納付金について、後期高齢者支援金の仕組みと同様、報酬水準に応じた調整に移行すべきとの考えを示した。

5年度の毎年薬価改定
算定ルール含め完全実施

②は、直近の診療報酬点数の集計から、既に新型コロナ感染拡大前の水準を上回り、特例的な補助金で医療機関の経営は堅調であるとして、「国民負担で賄われる特例的な補助金や診療報酬は早急に縮小、廃止すべき」と訴えた。

令和4年度診療報酬改定で導入した「リフィル処方箋」は、改定率換算で▲0.1%(医療費470億円程度)と見込んだ効率化効果について早急な検証が必要と問題提起。制度の普及促進へ周知・広報を図るとともに、積極的な取り組みを行う保険者を各種インセンティブ措置で評価していくべきとした。

薬剤費総額は、薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により経済成長を上回って推移していると指摘し、5年度の毎年薬価改定は物価高における国民負担を軽減する観点から完全実施を実現すべきと強調。

さらに、「毎年薬価改定が行われるなか、2年に1度しか適用されない算定ルールがあるのは説明が困難」と問題視し、「5年度改定では実勢価改定と連動しない算定ルールもすべて適用すべき」との見解を示した。

価格の高低を問わず全医薬品について一律に2%の水準が約20年間固定されている「調整幅」は、「可及的速やかに、廃止を含めて制度のあり方を見直し、少なくとも段階的縮小を実現すべき」と強く訴えた。

このほか、高額・有効な医薬品を一定程度、公的保険に取り込みつつ、制度の持続可能性を確保していくため、▽OTC類似医薬品等の保険給付範囲からの除外▽医薬品を保険収載したまま、患者負担を含めた薬剤費等に応じた保険給付範囲の縮小─の早期導入に向け幅広く検討すべきとした。

健保連・レセ分析Ⅳから
かかりつけ・報酬を指摘

③は、効果的・効率的な医療提供体制の実現を医療制度改革の最重要課題に位置づけ、今後、後期高齢者が急速に増加するなかで、地域医療構想を早急に実現する必要があるとした。

さらに、地域医療構想を機能させるためには、診療所等の外来機能の分担も不可避であるとの認識を示し、「かかりつけ医機能」を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要があると提言した。

他方、かかりつけ医機能に関する診療報酬上の評価として平成30年度改定で創設された「機能強化加算」は、健保連が令和元年8月23日に公表した「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅳ」で、「本来は初診患者の中でもより継続的な管理が必要な疾患を有する患者への算定が期待されながらも、算定の実態がまったく異なっており、外来機能の分化につながっていないことが指摘されている」と問題提起し、そのあり方を継続課題に位置づけた。

このほか、医療法人等の経営状況の「見える化」に向けて、公的価格評価検討委員会における議論を踏まえ現場で働く医療従事者の処遇の把握を行い、費用の使途の見える化を通じた透明性の向上を図る観点から、職種ごとの1人当たりの給与額が確実に把握できるような制度設計を行うべきとした。

介護保険・利用者負担
2割負担の対象範囲拡大

介護分野では、令和4年度の総費用と1号保険料(全国平均、月額)は制度創設時の平成12年度と比較し、それぞれ約4倍と約2倍に増大しているなか、▽利用者負担の見直し▽多床室の室料負担の見直し▽ケアマネジメントの利用者負担の導入▽介護保険の第1号保険料負担の見直し─などを提言した。

利用者負担は、令和4年10月の後期高齢者医療における患者負担割合の見直し等を踏まえ、▽原則2割負担や2割負担の対象範囲拡大を図る▽現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直す─ことを、6年度からの第9期介護保険事業計画に向け早急に結論を得るべく検討していくべきとした。

合わせて、居宅と施設の公平性を確保し、どの施設でも公平な居住費(室料+光熱水費)を求めていく観点から、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床における「多床室の室料相当額」について、介護給付の基本サービス費から除外するよう主張。

利用者負担を取らない例外的取り扱いがなされてきたケアマネジメント(居宅介護支援)は、サービスのチェックと質の向上に資するよう、利用者負担を導入すべきとの考えを示した。

さらに、高齢化の進展による第1号被保険者数や給付費の増加に伴う保険料の上昇が見込まれるなか、低所得者の負担軽減に要する公費の過度な増加を防ぐため、負担能力に応じた負担の考え方に沿い、高所得の被保険者の負担による再分配を強化すべきと訴えた。

このほか、こども・子育て分野では、こども政策の充実を図り、強力に進めていくために必要となる安定的な財源の確保について、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担のあり方を含め幅広く検討を進める必要があると提言した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年