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健保ニュース 2022年10月下旬号

健保組合・令和3年度決算見込
▲825億円で8年ぶり赤字
給付費と拠出金 保険料収入上回る伸び

健保連は6日、厚生労働省内で記者会見を開き、健保組合の令和3年度決算見込を発表した。経常収支差引額は825億円の赤字で、平成25年度以来、8年ぶりの赤字に転じ、全体の5割を超える740組合が赤字となった。保険給付費と高齢者等拠出金が、保険料収入を大きく上回るペースで伸びたことが主な要因。平均保険料率は9.23%、実質保険料率は9.35%に上昇し、いずれも過去最高を更新した。健保連の佐野雅宏副会長は、今後の財政見通しについて、「75歳に到達する団塊世代の増加で、5年度以降、拠出金は毎年増加し、さらなる財政悪化が見込まれる」と危機感を露わにした。

元年度比で月額0.2%減
賞与は1.6%減に

令和3年度の健保組合決算見込は、本会へ報告のあった1387組合の決算見込数値をもとに、4年3月末に存在する1388組合の財政状況を推計した。

組合数は前年度と同数の1388組合で、被保険者数は1653万8791人と前年度に比べ4757人(0.0%)減少した。また、被扶養者数は同28万9435人(2.4%)減の1197万2040人。扶養率は前年度と同じ0.74人となっている。

被保険者数と被扶養者数を合わせた総加入者数は2851万831人で前年度比29万4192人(1.0%)減となった。

保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は37万7556円で同1309円(0.3%)増、平均標準賞与額は116万1583円で同3万2433円(2.9%)増と、月額、賞与額とも増加。

前年度から回復基調となったが、新型コロナ感染拡大前の令和元年度決算と比較すると、月額0.2%減、賞与1.6%減と依然として低い水準にとどまっている。

平均・実質料率が過去最高
協会平均以上は2割超

平均保険料率(一般保険料率+調整保険料率)は9.23%で、前年度比0.01ポイント増加した。

収支均衡に必要な実質保険料率は、同0.45ポイント増の9.35%。いずれも過去最高を更新した。

協会けんぽの平均保険料率10.0%以上の健保組合は307組合(前年度比1組合減)で、全組合の22.21%を占めている。

保険料率の負担状況をみると、事業主分5.013%、被保険者分4.219%だった。

保険給付費が8.7%増
前期納付金は6.4%増

令和3年度決算見込の経常収支状況をみると、経常収入総額は前年度比883億円(1.1%)増の8兆3841億円、経常支出総額は同4667億円(5.8%)増の8兆4666億円で、経常収支差引額は825億円の赤字を計上した。

平成25年度以来、8年ぶりの赤字決算となった。
 赤字の主な要因は、保険給付費と拠出金が、保険料収入の伸びを上回るペースで増加したことが影響した。

収入面をみると、経常収入総額の98.6%を占める保険料収入は8兆2652億円で前年度比810億円、1.0%増。

一方、支出面は経常支出8兆4666億円のうち、▽保険給付費4兆2469億円(構成比50.2%)▽後期高齢者支援金2兆132億円(同23.8%)▽前期高齢者納付金1兆6377億円(同19.3%)▽保健事業費3698億円(同4.4%)─。

保険給付費は同3408億円、8.7%と大幅に増加し、新型コロナ感染拡大前の令和元年度と比較しても3.1%伸びている。

拠出金は同1057億円、3.0%増加。このうち、前期高齢者納付金は同986億円、6.4%増と大きく増加した。

データヘルス計画等、健康維持・増進のための保健事業費は、同248億円、7.2%増。コロナ禍前の元年度と比べても1.9%の伸びとなった。

赤字組合が全体の54%
3割は拠出金負担半分以上

経常収支差825億円の赤字となった結果、赤字組合は前年度に比べ282組合増加し、全体の53.5%を占める740組合に上昇した。赤字組合の赤字額は前年度に比べ1770億円増え、総額▲2750億円に達する。

一方、黒字組合は282組合減少し、全体の46.6%となる647組合。黒字額は2013億円減少し、総額1924億円となった。

義務的経費(法定給付費と拠出金の合計)に占める拠出金負担割合は、法定給付費(前年度比8.9%増)が拠出金(同3.0%増)の伸びを大きく上回ったため、46.7%と同1.4ポイント低下した。拠出金負担割合が50%以上の組合は411組合で全体の29.6%を占めた。

生活関連サービス業等
経常収支がさらに悪化

3年度決算見込の業態別にみた被保険者1人当たり経常収支差引額は、2年度に新型コロナの影響を受けた、▽生活関連サービス業、娯楽業(▲5万1915円)▽宿泊業、飲食サービス業(▲3万8081円)▽飲食用品小売業(▲3万2349円)▽運輸業(▲2万9935円)▽繊維製品製造業(▲2万1205円)─でさらに悪化している。

実質保険料率は、▽宿泊業、飲食サービス業(11.7%)▽飲食用品小売業(10.9%)▽運輸業(10.3%)▽繊維製品製造業(10.3%)▽飲食料品以外の小売業(10.2%)▽複合サービス業(10.1%)▽紙製品製造業(10.1%)─で協会けんぽの平均保険料率を上回った。

標準報酬月額は、▽労働者派遣業(前年度比3.5%減)▽宿泊業、飲食サービス業(同2.8%減)▽生活関連サービス業、娯楽業(同1.7%減)▽公務(同0.7%減)▽飲食用品小売業(同0.6%減)▽運輸業(同0.5%減)▽電気・ガス・熱供給・水道業(同0.2%減)─で減少。

また、標準賞与額は、▽労働者派遣業(同13.3%減)▽運輸業(同5.4%減)▽公務(同1.6%減)▽生活関連サービス業、娯楽業(同0.7%減)─で減少した。

5年度の健保組合財政
1700億円の赤字見通し

今後の健保組合財政について、令和4年度は一時的な高齢者拠出金の精算戻り等の支出減により、収支が一時的に改善すると見込む一方、今年の7月以降、新型コロナウイルス感染症第7波の影響等もあり、外来医療費が予想を大きく上回る勢いで伸びていることから、今後の動向を慎重に見極める必要があるとした。

5年度は、75歳に到達する団塊世代の増加により、拠出金は2700億円(前年度比7.9%)増と急増。収支は▲1700億円と再度、赤字に転じ、5年度以降、毎年増加する拠出金に伴いさらなる財政悪化を見込んだ。

健保組合の3年度介護保険決算見込
平均保険料率 過去最高の1.77%

健保連は6日の記者会見で、健保組合の「令和3年度介護保険決算見込状況」を公表した。

健保組合の介護納付金総額は前年度比202億円(2.04%)増の1兆98億円、被保険者1人当たり介護納付金額は同1561円(1.42%)増の11万1456円にそれぞれ上昇。

平均介護保険料率(令和4年2月末)は同0.08ポイント増の1.77%、被保険者1人当たり保険料負担額(年額)は同6847円(6.3%)増の11万5790円で、いずれも過去最高を更新した。

平均介護保険料率に健康保険の一般保険料率と調整保険料率の平均9.232%を加えた合算保険料率の平均は11.002%となる。

3年度決算見込の収支状況をみると、収入総額は同497億円(4.78%)増の1兆889億円、支出総額は同221億円(2.23%)増の1兆132億円で、収入が支出を757億円上回った。

介護保険収入は1兆490億円で、介護保険料率の引き上げなどにより、前年度に比べ680億円(6.93%)増加。1人当たり額は11万5790円で、同6847円(6.28%)増えた。

健保組合に加入する第2号被保険者数は1189万2234人(前年度比1万2696人、0.11%減)で、このうち、健保組合の被保険者が897万6948人(同5万5821人、0.63%増)となっている。

平均標準報酬月額は42万7220円(同68円、0.02%減)、平均標準賞与額は135万7610円(同2万7661円、2.08%増)だった。

令和3年度健保組合決算見込み

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