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健保ニュース 2022年10月上旬号

介護保険部会が給付と負担を議論
河本専務理事 負担能力に応じた見直しを

社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長)は9月26日、令和6年度の次期介護保険制度改正に向けて、「給付と負担」をテーマに議論を行った。

この日の会合では、厚生労働省が「給付と負担」に関するこれまでの指摘事項について、▽総論▽被保険者範囲・受給権者範囲▽現役並み所得、一定以上所得の判断基準─など、項目別に整理した。

このうち、「総論」は、全世代型社会保障構築会議が4年5月17日に取りまとめた「議論の中間整理」で、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心となっているこれまでの社会保障の構造を見直し、将来世代へ負担を先送りせずに、能力に応じて皆が支え合うことを基本としながら、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障をバランスよく確保することが重要」と明記されたことを取り上げた。

また、財政制度等審議会が4年5月25日に取りまとめた「歴史の転換点における財政運営」では、「介護保険制度の持続可能性を確保するためには、利用者負担のさらなる見直しをはじめとした介護保険給付範囲の見直しに引き続き取り組むことも必要」と提言されている。

「被保険者範囲・受給権者範囲」は、介護保険部会で、▽将来的には被保険者範囲を40歳未満の方にも拡大し介護の普遍化を図っていくべき▽60歳代後半の方の就業率や要介護認定率も勘案し第1号被保険者の年齢を引き上げる議論も必要─などの意見があり、介護保険を取り巻く状況の変化も踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当であるとされたと整理。

「現役並み所得、一定以上所得の判断基準」も、見直しに慎重な立場、積極的な立場からの意見があり、利用者への影響を踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当とされている。

健保連の河本滋史専務理事は、介護給付費が増加し続け、現役世代の負担が限界に達しているなか、「制度の安定性、持続可能性の確保に重点を置いた見直しを図っていかなければ、いずれ制度が破綻することになりかねない」と危惧した。

制度の持続可能性の確保を図るためには、負担能力に応じた負担のあり方や、給付と負担のバランスの確保、サービスの適正化、重点化等について、より踏み込んだ見直しを確実に実施する必要があると強調。

特に、現役並み所得や一定所得以上の判断基準については、負担能力に応じた見直しに向けて、低所得者に配慮しつつ、利用者負担は原則2割負担とし、3割負担の対象範囲も拡大すべきとの考えを示した。

江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、介護保険制度創設時の2000年から2025年にかけて、75歳以上人口は2.4倍、80歳以上人口は2.7倍に達するなど、当初見込みの想定外となっていると指摘し、抜本的な視点から検討が必要と主張。

持続可能性の観点から、保険料負担が限界であれば、どこかで公費の投入について議論せざるを得ないタイミングがくることが確実な状況との認識を示し、「血税である公費の投入について、国民的な議論が不可欠である」と述べた。

佐藤主光委員(一橋大学国際・公共政策大学院、大学院経済学研究科教授)は、「介護保険制度の持続可能性を確保するには、まず安定的かつ強靭な財政基盤が必要」と言及したうえで、「消費税より社会保険料の方が低所得者の負担は大きくなっている」と指摘し、「社会保険料だけに頼るのはもはや限界だということは否めない」との見解を示した。

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