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健保ニュース 2022年10月上旬号

厚労省が3年度概算医療費を公表
前年度比4.6%増の44.2兆円
コロナ禍受診控え反動で過去最大

厚生労働省は9月16日、「令和3年度医療費の動向」を公表した。医療保険と公費負担医療分の3年度概算医療費は前年度比4.6%増の44.2兆円で、2年度から2兆円増えた。新型コロナウイルス感染症に伴う患者の受診控えで同3.1%減少した2年度概算医療費の反動などを要因に、過去最大の増加率・額となった。単価に相当する1日当たり医療費は同1.3%、患者数に相当する受診延日数は同3.3%それぞれ上昇。1人当たり医療費は同5.0%、1万7千円増えた。他方、新型コロナの影響が少なかった元年度概算医療費と比べても1.4%増加しており、今後の動向が注視される。

医療保険と公費負担医療分の医療費を集計した概算医療費は、労働災害や全額自費の診療を含まない速報値で、国民医療費の約98%に相当する。

概算医療費の動向をみると、平成28年度41.3兆円(前年度比0.4%減)、29年度42.2兆円(同2.3%増)、30年度42.6兆円(同0.8%増)、令和元年度43.6兆円(同2.4%増)、2年度42.2兆円(同3.1%減)と推移してきた。

診療報酬改定、薬価改定の影響を除くと、高齢化や医療の高度化により毎年2%程度、伸びる傾向となっていたが、2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う受診控えや手術の延期、新たな生活様式の浸透などにより、概算医療費は同3.1%、1.3兆円減少した。

その反動や通常の医療費の増加に伴い、3年度の概算医療費は同4.6%、2.0兆円増と過去最大の伸び率・額となった。

他方、新型コロナの影響が少なかった元年度と比べると1.4%増加し、1年当たり換算では0.7%の伸び率となる。厚生労働省は、「新型コロナの影響で1日当たり医療費は増えているが、従来の年2%程度と比べると、通常の伸び率には戻っていない」と説明。3年度の毎年薬価改定(▲0.9%)が与えた影響も想定される。

医療機関を受診した延患者数に相当する「受診延日数」は、人口減少に伴い平成28年度以降、同マイナス1%弱の伸びで推移し、令和2年度は新型コロナの感染拡大の影響で同8.5%減と大幅に低下。3年度は同3.3%増に反転したが、前々年度と比較すると5.5%減で、受診控えの影響は一定程度残る。

一方、医療費の単価に相当する「1日当たり医療費」は、平成28年度以降、同2~3%程度の伸びで推移し、令和2年度は重度な患者の比重が大きくなったことで同5.8%に上昇。3年度は新型コロナの影響で同1.3%増(前々年度比7.3%増)とさらに増え、医療費全体の伸び率は同4.6%増となった。

厚労省は、3年度概算医療費の▽人口増の影響(前年度比0.5%減)▽高齢化の影響(同1.1%増)▽診療報酬改定等(同0.9%減)─を除いた伸び率は同5.0%増、休日数等補正後の伸び率は同4.7%増(前々年度比0.8%増)になるとした。

3年度概算医療費は、対前年度比では全診療種類別で増加となる一方、対前々年度比では入院が0.3%減少した。受診延日数を前々年度と比較すると、いずれの診療種類別も4~7%程度減少。1日当たり医療費は、入院(6.7%増)と調剤(5.2%増)が入院外(9.6%増)、歯科(9.0%増)に比べ小さい。

3年度の1人当たり医療費は前年度比5.0%増の35.2万円で、同1.7万円増加。年齢階層別にみると、未就学者が同20%を超える伸びを示す一方、75歳以上は受診控えが影響し、前々年度比で1.4%減少した。

このほか、厚労省は、主傷病がCOVID─19であるレセプトを対象に3年度の医療費を集計すると、4500億円程度となることを明らかにした。患者数の増大で、2年度の1200億円から4倍近く増加し、医療費全体の1%を占めた。

被用者保険の医療費
前年度比8.5%増に反転

75歳未満の医療保険適用分は、前年度比6.4%増の25.0兆円で、このうち被用者保険が同8.5%増の14.1兆円(全体の32.0%)、国民健康保険が同3.7%増の10.8兆円(同24.5%)で、被用者保険は2年度の同3.6%減から大幅な増加に反転した。

75歳以上の医療保険適用分は、同2.7%増の17.1兆円(同38.6%)。公費負担医療は、同1.1%増の2.2兆円(同4.9%)となった。

被用者保険は、1人当たり医療費が18.2万円で、同8.8%増加するとともに、加入者数が同0.3%減(本人同0.6%増、家族同1.8%減)の7767万人となった。

加入者数の増減に反し、医療費の伸び率は本人の同8.1%増に対して、家族は同8.8%増と大きく増加した。

国保は1人当たり医療費が被用者保険の2倍を上回る37.9万円で、同5.8%増加。被用者保険への移行と高齢化により加入者数は同2.0%減の2863万人となったが、医療費の伸び率は平成27年度以来、6年ぶりに増加に転じた。

被用者保険と国保を合わせた未就学者は、1人当たり医療費が同22.3%増の22.1万円、加入者数は同3.2%減の603万人。医療費の伸び率は受診控えの影響で同19.1%減少した2年度から18.4%増へ大幅に反転した。

75歳以上の医療保険適用分は、加入者数が同0.7%増の1819万人に増加し、1人当たり医療費は同2.0%増の93.9万円に上昇。医療費の伸び率が同2.4%減に減少した前年度から増加に転じた。

医療費全体の構成割合は
医74%、歯7%、調18%

診療種類別にみると、医科は前年度比4.9%増の32.9兆円で、入院が17.6兆円(前年度比2.8%増)、入院外が15.3兆円(同7.5%増)となった。

歯科は同4.8%増の3.1兆円、調剤は同2.7%増の7.8兆円、訪問看護療養は同18.4%増の0.43兆円だった。2年度連続で大幅に増加した訪問看護療養を除き、前年度の減少から増加に反転。特に、入院外は、受診控えの反動で同4.3%減から同7.5%増に大きく転じた。

医療費の構成割合は、医科74.4%(入院39.8%、入院外34.6%)、歯科7.1%、調剤17.5%、訪問看護療養1.0%で、医科入院が最も多くを占めたが医科入院外との差は縮小した。

医科入院は受診延日数が同1.0%減の4.4億日、1日当たり医療費が同3.9%増の40.4千円。医科入院外は受診延日数が同4.5%増の15.2億日、1日当たり医療費が同2.9%増の10.1千円で、医科入院外は医科入院に比べ受診延日数は大きく増加する一方、1日当たり医療費は元年度の同6.5%増に比べ低い伸び率となった。

病院の1施設当たり医療費は同4.7%増の29億2816万円で、大学が同6.1%増の202億7737万円、公的が同5.0%増の57億5908万円、法人が同3.7%増の18億8357万円、個人が同5.2%増の7億3963万円。いずれも前年度の減少から増加に反転した。

医科診療所の1施設当たり医療費は同7.0%増の1億344万円で、2年度連続増加の産婦人科を除き、いずれも前年度の減少から増加に反転。特に、小児科は2年度の同22.2%減から同42.3%増、耳鼻咽喉科は2年度の同19.5%減から13.6%増に大きく転じた。

歯科は、受診延日数が同2.5%増の4.0億日、1日当たり医療費が同2.2%増の7.9千円。1施設当たり医療費は、歯科病院が同6.4%増の9765万円、歯科診療所が同5.1%増の4489万円だった。

調剤医療費の74%が薬剤料
後発品数量割合82%で停滞

調剤医療費の構成割合は、技術料が前年度比7.1%増の2兆103億円(全体の26.1%)、薬剤料が同1.3%増の5兆6800億円(同73.7%)、特定保険医療材料料が同3.9%増の156億円(同0.2%)で、薬剤料が依然、7割超を占める。

薬剤料の内訳をみると、全体の8割を占める内服薬が同0.9%増の4兆5267億円に増加。注射薬は、全体の8%程度にとどまるが、同13.2%増と大きな伸び率を示した。後発医薬品の薬剤料は、同0.5%増の1兆1391億円となった。

処方箋1枚当たり調剤医療費は、年齢とともに高くなり、最も高い80歳以上85歳未満(1万1262円)は0歳以上5歳未満(3503円)の約3.2倍となる。

内服薬の処方箋1枚当たり薬剤料は同3.7%減の5666円で、これを分解すると、▽処方箋1枚当たり薬剤種類数が同0.1%減の2.76剤▽1種類当たり投薬日数が同0.5%減の28.1日▽1種類1日当たり薬剤料が同3.2%減の73円─となり、いずれも減少した。

内服薬を薬効分類別にみると、その他の代謝性医薬品の8130億円、循環器官用薬の7574億円、中枢神経系用薬の6978億円、腫瘍用薬の5222億円が高く、腫瘍用薬は伸び率が同11.6%増と大きく上昇した。

後発品の数量割合は、令和3年度末時点で同0.0%減の82.1%となり、前年度末と同じ数値にとどまった。3年度に発生した後発品にかかる供給問題などが影響したことが想定される。

後発品数量割合が80%以上の薬局の割合は73.5%で、前年度に比べ0.4ポイント上昇した。

都道府県別にみると、沖縄が89.2%で最も高く、徳島が78.5%で最も低かった。

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