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健保ニュース 2022年6月中旬号

健康と経営を考える会シンポジウム
事業主と保険者連携 コラボヘルス推進を
厚労省・濵谷保険局長あいさつ

「健康と経営を考える会」は5月31日、シンポジウムを開催し、厚生労働省保険局の濵谷浩樹局長が開会あいさつに登壇した。濵谷局長は、持続可能な社会保障に向け健康寿命の延伸などの課題にしっかりと取り組んでいく必要があると強調。データヘルスが効果的・効率的に実行されるよう事業主と保険者の連携によるコラボヘルスを推進するとともに、PHRの利活用やマイナンバーカードの保険証利用に伴うオンライン資格確認等システムの普及など、政府が掲げるデータヘルス改革の基盤構築に積極的に取り組んでいく意向を示した。(濵谷局長のあいさつは次のとおり。)

わが国の人口は、団塊世代の全員が75歳以上になる2025年に向けて高齢者人口が急速に増加し、2040年には緩やかになる一方、2025年以降、生産年齢層の急激な減少が課題となる。社会保障における持続可能性確保のために、給付と負担の見直しだけでなく、健康寿命の延伸などの課題にしっかりと取り組んでいく必要がある。

厚労省では、予防・健康づくりのために保険者が実施するデータヘルスが効果的・効率的に行われるようコラボヘルスを推進している。従業員への健康投資を活力向上や生産性の向上など組織の活性化につなげられるよう事業主と保険者がタッグを組んでいただきたい。

これに合わせて、国民1人ひとりが自身の健康情報を閲覧・活用して予防・健康づくりに取り組む仕組みとしてPHRの利活用を推進している。現在閲覧できる特定健診情報・薬剤情報に加え、これからはがん検診や予防接種の履歴などもマイナポータルを通してワンストップで閲覧できる環境整備に取り組む。また、今年9月からは透析情報なども閲覧可能になる。来年1月からは電子処方箋の運用開始も予定している。

政府のデータヘルス改革の基盤となるマイナンバーカードの保険証利用については、「令和5年3月末までに概ねすべての医療機関等へのオンライン資格確認等システムの導入をめざす」としており、同年4月からは原則義務化と財政支援措置の見直し、普及状況を踏まえて保険証の原則廃止をめざすなどさらなる対策を検討している。

なお、6年度から始まる第4期特定健診等実施計画の策定に向けては、現在、特定健診・特定保健指導の見直し作業を行っており、特定保健指導にアウトカム評価の導入等が検討されている。

これらの情勢において、厚労省としては、保険者をはじめ関係機関と連携し、社会全体に予防・健康づくりの機運が広まっていくよう尽力していきたい。

講演
効果的な方法で健康増進策を
医・介連携政策課 水谷課長

健康と経営を考える会が開催したシンポジウムでは、第二部「健康データセッション」において、厚労省保険局医療介護連携政策課の水谷忠由課長が「健康経営のネクストステージに向けて保険者に期待すること」について講演した。(概要は以下のとおり)

事業主と連携した施策
健康寿命延伸につなぐ

厚労省は、2040年に推計される就業人口減少に対し、「多様な就労・社会参加」、「健康寿命の延伸」、「医療・福祉サービス改革」といった視点から、就業者数の確保、医療福祉分野の効率化に向けた対策を検討している。

このうち、「健康寿命の延伸」においては、「健康無関心層を含めた予防・健康づくりの推進」、「地域・保険者間の格差の解消」に向けた取り組みを推進中だ。

水谷課長は、医療保険者に、①データヘルスのPDCAの推進②総合的な保健事業の推進③コラボヘルスの推進─を見据えた「医療サービスの提供と予防・健康づくりを一体的に実施する主体」として、加入者の生活の安定と健康増進に貢献することが期待されていると説明。

特に、保健事業においては、健康リスクの階層化を前提に、事業主との連携を重視。例えば、ポピュレーションアプローチは事業主、ハイリスクアプローチは保険者といった役割を明確にするとともに、現役世代に対しての働きかけも重要であるとしたうえで、「効果的・効率的な方法で、加入者1人ひとりがより長く健康でいられるような取り組みをぜひ行ってほしい」と述べた。また、「保健事業は法令上の位置づけも明確であることを、事業主や被保険者との関係づくりの中でも活用していただきたい」とメッセージを送った。

さらに、厚労省でまとめた「加入者に対する効果的な情報提供の実践マニュアル」およびリーフレットを紹介。リーフレットは、健保組合が効果的な施策立案・実施を行えるよう、加入者ニーズ把握の方法を学び、保健事業の見直しを行うワークショップを元に作成した。現場に基づいた意見交換が有意義であったことなどから、今後も制度に関する所管に留まらず、現場の取り組みにおける具体的な提案も行っていくと述べた。

新しいデータヘルスの基盤
特定健診~オン資システム

令和6年度から始まる第4期特定健診等実施計画の策定に向けた特定健診・特定保健指導の見直しは、個人の受診者の行動変容につながり、成果が出たことを評価する方向(アウトカム評価の導入やICTを活用した取り組みなど)で検討を進めていると報告。「腹囲2㎝以上、体重2㎏以上の改善」を達成したことで180ポイントとするアウトカム評価にプロセス評価(健診を行い、意識が高まっているうちに初回面談を行ったことを評価するなど)を加えた評価体系と解説した。

オンライン資格確認等システムにおいては、▽医療機関の窓口で、患者の資格情報等が確認できるようになり、過誤請求や 医療機関での手入力の手間等による事務コスト削減のメリット▽マイナンバーを用いた本人確認を行うことで、医療機関や薬局において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧できるようになり、より良い医療を受けられる環境になるメリット─をあげた。PHRにより、マイナポータルで国民1人ひとりが自身の健康情報が閲覧可能となり、健康増進や生活改善などに役立てることをめざす。

今後、オンライン資格確認は、「資格確認」という一義的な役割だけではなく、情報化の「基盤」と指摘。例えば、①全国の医療機関・薬局が安全かつ常時接続②医療情報を個人ごとに把握、本人の情報を確実に提供することが可能③患者・利用者の同意を確実にかつ電子的に得ることが可能─が国のデータヘルス政策の基盤と位置付けた。

水谷課長は、「保険者には、こうした新しいデータヘルスの流れの中で、加入者への予防・健康づくりに積極的に尽力いただきたい」と締め括った。

基調講演
健康経営の基本は社員の健康
ローソン 竹増社長

4年連続で健康経営銘柄に選定され、2022年健康経営優良法人ホワイト500においても6年連続で認定されるなど、健康経営の先駆的な取り組みを行っている株式会社ローソンの竹増貞信代表取締役社長・CSOが基調講演を行った。(概要は以下のとおり)

竹増社長は、「会社が積極的に従業員の健康づくりや風通しの良い労働環境の整備を行うことで、従業員1人ひとりが自己実現に取り組み、心身ともに充実したライフ・キャリアプランを実現する環境ができる。こうした基盤こそが顧客の幸せ、さらには店舗を中心とした健康的な町づくりを目指す企業ビジョンを実現するための行動を誘引し、企業価値が向上する」とし、自らが実践する健康経営について紹介した。コンビニエンスストアをはじめ、エンターテインメント産業や金融業、農業分野に至るまで幅広い事業を展開しているローソン。「私たちはみんなと暮らすマチを幸せにします」という企業ビジョンを持ち、すべての事業において健康を志向する。

「幸せの基本は健康である」を掲げ、社長自らが健康宣言を行い、リーダーシップを発揮。自身の健康づくりを従業員へ発信するなど、能動的かつ楽しんで様々な取り組みに参加することを心掛けている。

また、従業員には、「チームワークにより絆を深め、共に働くことに喜びを感じて欲しい」と語り、働き方改革や「働き甲斐」改革を進めている。

コロナ禍においても、各支店をオンラインでつなぎ、リモート会議でコミュニケーションを図る取り組みを実践。現場で抱える悩みや提案などをリアルに共有できる風通しの良い体制を作った。

健康管理推進体制としては、CSO補佐に健康保険組合理事長を置く。専門スタッフがいる健康推進室をはじめ、人事部門・健保組合・労働組合が連携し、健康経営の強化を図る施策を展開している。

竹増社長は、「健康経営の実施体制のもとで、トップが健康の大切さを発信し、コンセプトに沿った商品開発などが進み、店舗が充実していく。その循環を従業員が実感し、顧客にも良さが伝わる」とし、「社員が健康であることは会社が健康であること。会社が健康であるということは会社が成長していくこと、これが経営のうえで最も大切である」と健康経営の重要性を説いた。

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