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健保ニュース 2022年5月下旬号

ブラザー健康保険組合インタビュー
創意工夫の仕掛け作りで保健事業を推進

「業界で保健事業№1の健保組合になる」をビジョンに掲げ、保健事業に戦略的に取り組むブラザー健康保険組合(小池利和理事長・愛知県)。令和3年度には、地域や職場における保健・栄養の改善および体力つくり運動を推進し、顕著な成果を上げている組織を顕彰する「体力つくり優秀組織表彰」(主催:体力つくり国民会議)の体力つくり国民会議議長賞を受賞した(本誌3月上旬号№2291既報)。同健保組合の神瀬雅之常務理事と中根弥枝保健推進センター長に、保健事業の取り組みについて伺った。


─体力つくり国民会議議長賞受賞の感想について。

神瀬常務理事 このたびの受賞は、長年にわたる地道な運動習慣づくりの取り組みが評価されたものと受けとめている。当組合では、早期から母体企業の協力のもと、組合員の健康状態をレセプト・健診情報を用いて分析していた。その結果、運動習慣保持者率の低さが課題として浮かび、運動習慣づくりに重点を置いた保健事業を展開してきた。平成8年に導入した「ストレッチ体操」、平成22年からは10月と11月の2か月間を「ブラザー健康生活月間」と定め、母体企業・労働組合と連携しながら様々な健康イベントを実施している。職場でのチーム単位・家族単位など、参加しやすい仕掛け作りもしてきた。こうした長年の努力が認められたのではと考えている。

中根保健推進センター長 今回の受賞について、母体企業のホームページで大きく報じられたり、出版社から取材の申し込みを受けるなどの反響があった。当組合の体力づくり事業の功績が内外から評価され、大変嬉しく思っている。


─保健事業の運営体制について。

中根保健推進センター長 保健事業を担う保健推進センターには保健師4名、事務職4名が在籍。保健師は、母体企業の健康管理センターと連携し健康施策のPDCA、データヘルス計画の作成、特定保健指導や受診勧奨などを実施している。事務職は、健康施策の案内作成や送付、アンケート集計、事業所担当者間の調整を行っている。
 ブラザーグループでは、平成28年に制定された「健康経営理念」にもとづき、令和7年までに達成すべき長期目標「健康ブラザー2025」に向け、健保組合・母体企業・労働組合が三位一体となり健康経営を推進している。三者にとってアプローチの対象は被保険者・従業員・組合員と同じであることから、三者それぞれからアプローチすることで効果を上げている。例えば、特定健診では、▽案内の周知徹底▽定期健診と同時実施により就業時間内の実施が可能▽人事通達の発出により母体企業からも受診勧奨をしてもらう─など、対象者が参加しやすい環境を整備できるといったメリットがある。


─注力している保健事業について。

神瀬常務理事 先述のとおり、当組合では運動習慣の定着が課題だ。運動は、睡眠の質の向上やメタボリックシンドロームの改善にもつながると言われる。健康の基本は「歩くこと」から、ウォーキングや歩くイベントに力を入れている。春には家族で動物園を楽しみながら歩く「ファミリーウォーク」、秋には職場のチームで歩数を競う「チームDEウォーク」や母体企業の体育館で行う「わくわく健康カーニバル」という体育祭(現在はオンライン開催)などを開催し、少しでも体を動かし歩く習慣付けができるよう、事業展開している。


─コロナ禍での保健事業について。

神瀬常務理事 コロナ禍でも事業を止めないことを重視し、現下の状況に応じたイベントができないか創意工夫した。一例では、毎年体育館で玉入れや健康測定、エクササイズなどを行っていた「わくわく健康カーニバル」はオンライン開催に切り替え、端末で画面共有しながら一緒にストレッチを行ったり、ストップウォッチを使い1つのイベントを一緒にするなどを行っている。参加人数はリアル開催時よりも若干減ったが、自宅で参加できるため、家族ぐるみでの参加者が増えたという効果があった。

中根保健推進センター長 新型コロナウイルスの感染拡大により自粛生活が余儀なくされ、在宅勤務の導入で被保険者が運動不足になった、心が塞ぎがちになるといった心身両面での不安の声が事業所への聞き取りで得られた。
 これらの対策としては、やはり運動が効果的なため、RIZAPの運動動画をホームページで配信するほか、母体企業の社長が出演者となったオリジナル動画「Brother体操」を制作、配信した。母体企業がグローバル展開していることを考慮し、日本語のほか、ベトナム語、中国語2種類、英語の字幕も用意した。実践を促すための仕掛け作りとして、「Brother体操」をしている動画を投稿してもらい、従業員投票により優勝チームを決めるというコンテストを実施したところ、海外からもクオリティーの高い応募があった。このように、仕掛け作りにも工夫しながら、健康づくりの支援を継続している。


─事業の効果について。

中根保健推進センター長 顕著な効果をあげたのは、平成11年に開始した禁煙活動だ。母体企業では、ボトムアップ型の健康づくりが根付いている。禁煙活動に関しても、まずは労働組合と母体企業それぞれから喫煙者・非喫煙者が集まり、効果的な禁煙対策について協議した。さらに、従業員にもアンケートを取ったうえで禁煙計画を策定。これに基づき禁煙活動に取り組んだところ、活動開始当初40.8%だった喫煙率は、令和3年には20.7%まで改善した。今後は、「健康ブラザー2025」で掲げる喫煙率10%未満をめざし、さらに取り組みを進めたい。


─被扶養者対策について。

中根保健推進センター長 当組合では、30歳以上の被扶養者に健診費用の補助をしている。健診の申し込みには、WEB 、FAX、QRコードと複数の選択肢を設け、申し込みしやすい環境を整備している。未受診者対策としては、未受診の理由を把握し、理由に合わせたアプローチをすることで高い効果を上げている。具体的には、健診案内書類の中に予め同封してある用紙に未受診理由を記入いただき、▽パート先など職場で受診が理由の場合は、3000円のプリペイドカードと引き換えに健診結果を送付いただく▽主治医のいる医療機関で受診が理由の場合は、集合契約Bの受診券を発送する▽理由を未返送の場合は、被保険者を通じて促す─といった具合だ。


─今後の課題や抱負について。

神瀬常務理事 がん検診、特に女性特有のがん検診の補助対象年齢を引き下げたり、特定健診・保健指導対象年齢の40歳以上にこだわらずアプローチの対象を広げ、予防、早期発見、早期治療により生涯医療費の引き下げにつなげたい。また、こどもをアンバサダーとした取り組みができないか検討中だ。

中根保健推進センター長 前期高齢者の医療費を分析したところ、被扶養者より被保険者の方が高く、疾病構造はがんよりも骨折が増加傾向にあることが判明した。
 健康教育は現役時代から行うことが重要であり、エイジ・マネジメントに取り組む必要性を感じる。

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