HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2022年4月中旬号

健保ニュース

健保ニュース 2022年4月中旬号

健保連・臨時常任理事会
今期2年間の活動を総括
宮永会長 次なる改革へ迅速に対応

健保連は6日、臨時常任理事会を開き、今期2年間の活動を総括した。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、健康保険法改正による後期高齢者の窓口負担2割導入について、「長年訴えてきた声が実を結んだ大きな一歩」と評価。他方、医療保険制度が抱える構造的な問題は継続的な改善が必要と危機感を示し、迅速に次なる改革へ踏み出すべきと強調した。続いて、2年間を振り返った佐野雅宏副会長は、健保組合の財政面の課題など今後の積み残し課題を中心に、昨年秋にまとめた「提言」を柱に着実に取り組んでいく考えを表明した。(宮永会長、佐野副会長の発言要旨は次のとおり。)

今期の2年間は、コロナ禍によって、対面での理事会、総会を開催することがかなわなかった。

私自身も健保連会長に就任以来、直接、あいさつする機会が少なく、大変残念に感じていたが、15日の改選総会において、来期の新たな役員体制が決まることとなるので、今期の締めくくりとして、私から一言あいさつを申し上げる。

さて、新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックから2年が経った。
 未曾有の事態のなかでも、加入者の健康と安心を支えるために、健保組合の事業運営に真摯に取り組まれている皆さんに心から敬意を表する。

また、国難と言うべき状況に対し、ワクチンの職域接種等の協力についても深くお礼を申し上げる。

コロナ禍にあった今期2年を振り返ると、医療保険制度、社会保障制度を取り巻く状況にも大きな動きがあった。

一昨年の9月には、自民党の有志議員による「国民皆保険を守る議員連盟」が設立され、制度問題・課題が山積するなか、改革実現を求めるうえで、政治の場におけるしっかりとした土壌が整った。

その後、昨年6月には、後期高齢者の窓口負担2割導入を含む、健康保険法改正が行われ、また、今月から実施された診療報酬改定も象徴的な動きのあるものとなった。

こうした改革は、私たちが長年訴え続けてきた声が実を結んだものであり、私自身、大きな一歩であると受け止めている。

しかし、健保組合、医療保険制度が抱える構造的な問題には依然として継続的な改善が必要であり、危機が去ったわけではない。

2022年度は、コロナ禍に伴う受診控えなどで医療費が減ることによって、一旦、拠出金負担がやわらぐ見通しだが、団塊の世代が後期高齢者となっていく2023年から2025年にかけては、高齢者医療費が急増し、これまで以上に厳しい状況に追い込まれることが見込まれる。

また支え手の生産年齢人口の減少もあって、財政的に極めて心配な状況が続く。
 医療保険制度の持続性を高めるためには、すぐにでも、次なる改革に踏み出さなければならない。

政府には早急かつ真摯な検討を求め、健保連としても、昨年まとめた新たな提言をもとに積極的に発信し、その実現を訴えていく所存だ。

健保連は今期のはじめに、委員会の見直しや健保連本部の部署再編など組織体制を強化し、機動的かつ効果的に活動する体制を整え、また、コロナ禍という想定を超えるような大きな出来事にも、迅速かつ適切に対応するよう努めてきた。

さらに、健保組合のICT化に向けた対応、加えて健保連の施設に関する課題についても、対応してきた。

これも役員の皆さんのお力添えがなければ、何事もなしえることはできなかった。
 ひとかたならぬ協力、尽力をいただいたこと、改めてお礼申し上げるとともに、会員組合の皆さんのご支援・ご協力にも心から感謝を申し上げる。

これからウィズコロナの社会、また世界情勢からも先を見通しづらい状況が続く。
 そうしたなか私どもが一翼を担う国民皆保険は日本が誇る素晴らしい制度であり、それを中核として支える健保組合も欠かせない存在だ。いずれも子供や孫の世代にも引き継いでいかなければならない。

そのために、今、この厳しい状況にあっても、私たち世代が皆保険を守る努力を続けることが必要だ。

改革はまだまだ、道半ばだ。
 国民が健康で安心して暮らせる社会を続けるためにも、皆様の引き続きの協力・支援をお願い申し上げ、あいさつとする。

組合の財政構造など積み残し課題
佐野副会長 「提言」を柱に展開図る

この2年間で、「変わったこと・動いたこと」と「変わっていないこと・動いていないこと」に分けてコメントする。

まず、「変わったこと・動いたこと」だが、大きく3点ある。
 1点目、最大の変化要因は新型コロナウイルス感染症であり、ある意味、コロナに翻弄され続けた2年間だった。

健保連の組織運営にも甚大な影響があり、総会は2年間、書面のみでリアル開催・WEB開催もなく、全国大会も令和2年度は中止、昨年は規模を大幅に縮小して実施した。

WEB活用は進んだが、健保連では、本部・都道府県連合会とも、「会員健保組合との距離感」の取り方の難しさ、課題が浮き彫りとなった。

また、コロナにより医療提供体制の弱点、脆弱さも顕在化した。医療界にとっても、「緊急対応時の重要性」と「対応力の違いによる格差問題」の両方が明らかになり、プラスマイナスが顕著に出たのではないか。

コロナ対応でわれわれ健保組合が直接果たした役割としては、職域ワクチン接種への協力が挙げられる。

当初、国が考えていた市町村ルートだけでは、思うように接種数を増やせなかったなかで、職域接種の推進に健保組合・事業主と連携して取り組み、国難ともいえる対応に貢献できた。

職域ルートの接種数は接種全体の10%以上を占め、現役世代では20%以上に及んだ。
 健保組合の皆さんの多大なる支援・協力に感謝申し上げるとともに、今後も情報提供をはじめ積極的に取り組んでいきたい。

2点目は、昨年成立した「健保法改正」であり、長年主張してきた「後期高齢者の窓口負担2割導入」が、まだ不十分とはいえ、ようやく一歩動いたことは大きな前進であり、変化だ。

政治対応では、令和2年に設立された自民党の議連が大きな動きであり、都道府県連合会の支援・協力も得て、200名を超える議員参加の議連をスタートできたことのインパクトは大きい。

厚労省・財務省などの主要官庁に対する影響力も増しているが、いかに具体的成果につなげるかが今後の課題と考えている。

制度面の変化を踏まえ、われわれの要求実現活動も新たなステージを迎える。昨年秋にまとめた「提言」では、3本の柱を設定した。この取り組みを強化して、今後の成果につなげていきたい。

また、先日決定された、4年度の診療報酬改定においても、大きな動きがあった。これまでのわれわれの要望・要求が相当実施されることになり、かなりの成果を得ることができた。

改定水準自体は、全体でマイナス改定となったものの、本体部分では若干のプラス改定となり、やや残念ではあったが、これまで長年要望してきたリフィル処方が導入されるなど、今後につながる内容も盛り込まれた。

3点目は、健保連内部の委員会活動であり、皆さんの協力を得て、活発な議論を展開した。
 審査支払対策委員会では、支払基金との手数料交渉で、従来以上に大きく踏み込んだ折衝を行い、目先の4年度手数料は据え置きとなったが、翌年度以降につながる内容となった。

また、交付金交付事業委員会では、医療の高度化、医療費の高額化を踏まえた「高額医療交付金交付事業」の4年度見直しを決定した。財政支援交付金交付事業も含めた交付金交付事業全体の見直しにも着手しており、次年度でもさらに検討を進める予定となっている。

一方で、「変わっていないこと・動いていないこと」だが、思い通りにいっていないことの最大要素は、ICT関連だ。

政府として、デジタル化・ICT化の施策は数多く打ち出しているが、われわれに関連する案件で、これはうまく進んでいると思える事案はほとんどない、大変残念な状況にある。

医療界などの動きも極めて鈍いなかで、無理やり制度をスタートし、健保組合のメリットもまったく出ないのに、コスト負担だけさせられる悪循環が続いている。

健保組合のストレスはたまる一方で、大きく状況を動かすためにも、政府の本気度をより出してほしい。

もう1つは、「健保組合の財政構造」だ。コロナ影響による医療費減などはあるが、基本的な構造問題は何ら変わっていない。当初予想していた2022年危機は、コロナ影響でやや薄らいだ感はあるが、単に先送りされただけで、2023年から2025年にかけての厳しい状況はさらに強まってくる。

抜本的見直しが必要なことは言うまでもないが、財政支援についても、これまでの仕組みの延長線だけでは到底対応できない。

これ以外にも、健保組合が課題として抱える拠出金の年度単位のブレが大きいことも改善が図られていない状況だ。

また、柔整等療養費や介護納付金の取扱いについても、健保組合からの声が強い中で、なかなか改善のきっかけをつかめていない。

こういった健保組合が要望してきた課題について、皆さんに成果として届けることができておらず、健保連本部としても、今後の積み残し課題だと認識している。

今期2年間の総括を踏まえ、今後、健保組合・健保連としてどのように取り組んでいくかだが、環境変化も激しく、予想しにくい事態が起こることが常態化しているなか、難しい部分はあるが、やはり昨年秋にまとめた「提言」を柱に考えていく必要がある。

「提言」の内容をさらに深掘りすると、「コロナ禍を踏まえた国民が安心できる安全で効率的な医療の実現」は、これまで医療提供体制の見直しというと「医療の効率化」、すなわち、保険給付費の支出減のロジックで捉えるイメージも強かったが、一方で、「かかりつけ医のさらなる推進」や「リフィル処方の活用」などの具体的課題は、制度の普及促進に向けて、健保組合、健保連、さらには加入者を巻き込んでいかに具体的な行動につなげていくかということも考えていく必要がある。

「現役世代の負担軽減と世代間の公平性確保」については、次期改正が想定される2024年に向けて、国会での法案審議などを逆算すると、今年中に改正の中身を固める必要がある。それほど時間的余裕があるわけではなく、目標の優先順位づけ・具体的ターゲットの明確化なども避けて通れない。

「健康寿命の延伸に向けた保健事業のさらなる推進」は、何といっても健保組合の成果を示して、「健保組合の価値」をいかにアピールするかにつきる。外部からの健保組合に対する期待も大きい部分であり、健保組合のプレゼンスアップにつなげたい。

これらを踏まえた「財政支援」の強化も当然、喫緊の課題であるが、財務省をはじめ、ハードルが非常に高いことはご存じのとおりであり、政治・マスコミを含め、あらゆるルートでチャレンジする必要がある。

また、本年度の政治面での大きなポイントは、7月に予定されている参議院議員選挙だ。われわれに理解のある候補者への支援・応援はロビー活動において大きな成果がある。

昨年秋の衆議院総選挙で、各都道府県連合会をはじめ、精力的に動いていただいたことは、自民党をはじめ各政党における健保組合・健保連の大幅なプレゼンスアップにつながっている。

今回の参議院議員選挙でも皆さんの協力をお願いしたい。加えて、参議院議員選挙があることで、国の政策スケジュールも影響を受ける。選挙が終わった秋以降に本格化する議論への対応を含め、しっかりと対応していきたい。

どの項目をとっても「言うは易し、行うは難し」の典型のような課題ばかりだが、1つひとつ着実に取り組んでいくしかない。皆さんの引き続きの支援・協力をよろしくお願いする。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年