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健保ニュース 2022年3月中旬号

厚労省
高齢者医療 改正法附帯決議に見直しの視点
高齢者医療等主管課長会議

厚生労働省は2日、「全国高齢者医療主管課(部)長および国民健康保険主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議」をウェブ形式で開催した。高齢者医療をめぐる動向では、保険局の本後健高齢者医療課長が高齢者医療制度の財政状況や、昨年の通常国会で成立した改正健保法等(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)にもとづき、後期高齢者の窓口2割負担を今年10月から施行するなど主要事項などを説明した。このなかで、今後の高齢者医療制度の見直しに関しては、高齢化に伴う現役世代の負担増抑制も視野に入れ、総合的な検討に着手する必要性を政府に指摘した改正法に対する参院厚労委員会での附帯決議などにもとづき、全世代型社会保障構築会議で検討が進められるとの認識を示した。

改正健保法等は昨年6月に成立。改正の柱の後期高齢者の2割負担は、単身で課税所得28万円以上かつ年収200万円以上、複数世帯で320万円以上の後期高齢者(被保険者全体の20%相当の約370万人)が対象となる。

今年10月から施行し、合わせて導入から令和7年9月末まで3年間、外来受診にかかる1か月の負担増を最大で3000円に収める配慮措置も実施する。

2割負担導入に伴う4年度(10~2月の5か月分)の財政効果は、給付費▲790億円、後期高齢者支援金▲300億円、後期高齢者の保険料▲80億円、公費▲410億円(国▲260億円、地方▲150億円)と試算されている。

改正法は現役世代の負担増緩和を狙いとするが、現役世代1人当たりの後期支援金の軽減額は本人分で月30円程度にとどまると見込まれており、抑制効果は限定的だ。昨年の法案審査でもこの点が与野党の議員から指摘され、参院厚労委員会で採択された附帯決議には、4年以降の後期高齢者が急増するなか、現役世代の負担上昇を抑えながら、持続可能な全世代型の医療保険制度を構築するため、税制も含めた総合的な検討に着手することなどが明記された。昨年6月に政府が決定した「骨太方針2021」にも同様の趣旨から社会保障全般の総合的な検討を進める方針が示された。

本後高齢者医療課長は、こうした附帯決議や骨太方針の内容を踏まえ、「今後、全世代型社会保障構築会議の場で検討が進められることとなっている」と述べた。

高齢者医療制度の財政状況(4年度予算案ベース)については、後期高齢者の医療費は18.4兆円、給付費が17兆円、患者負担は1.5兆円と説明した。給付費の約4割を現役世代が負担する後期支援金は6.9兆円、このうち健保組合の負担は2.3兆円を見込む。

65~74歳の前期高齢者給付費は6.7兆円で、国保5.1兆円、健保組合0.3兆円、協会けんぽ1.2兆円などと国保が全体の76%、被用者保険が24%を占めるが、保険者間の前期高齢者数の偏在を均す財政調整を実施すると、国保が2.1兆円に軽減される一方、若人が多い健保組合は1.2兆円の納付金が発生し、合計1.6兆円の負担となる。協会けんぽは調整前の1.2兆円から1.4兆円の納付金が発生し、全体で2.6兆円となる。

オンライン資格確認
オンライン請求を推進

高齢者医療の動向に続いて、保険局の大竹雄二保険データ企画室長がオンライン資格確認およびレセプトオンライン化について説明した。

マイナンバーカードの保険証利用を可能とするオンライン資格確認は、昨年10月20日から本格運用が開始されたが、今後、普及に向けて、▽国民に対して、医療機関等でマイナンバーカードを保険証として利用できることを周知する▽オンライン資格確認を導入する医療機関等を増やす─との方針を示した。

大竹室長は、マイナンバーカードの保険証利用について、「医療機関サイドからまだまだカードが普及していないことや、患者がカードを持ってこないから意味がないというコメントもいただくが、従来の健康保険証を使っても資格確認ができることは医療機関にとってもメリットがあるので、われわれとしても引き続きその部分は周知したい」とし、「まずは、医療機関・薬局への導入を進めて、関係者それぞれにとってメリットある仕組みとして定着させたい」と述べた。

また、オンライン資格確認を今後のデータヘルスの基盤と位置づけ、閲覧できる情報を薬剤情報・特定健診等情報から拡大し、今夏を目途に手術、移植、透析などの医療情報を追加するとともに、電子処方箋の仕組みを来年1月から稼働させるなどの予定を示した。

マイナンバーカードの保険証利用のスケジュールについては、来年3月末までに概ねすべての医療機関・薬局での導入をめざしており、「あと1年、引き続き導入に向けた働きかけを強めていきたい。並行してカードの交付も普及させ、車の両輪として進めていく」と強調した。

医療機関・薬局のオンライン資格確認の導入状況(4年2月20日時点)は、医療機関等の57.0%が顔認証付きカードリーダーを申し込んでいるが、運用を開始したのは全体の12.3%にとどまる。

マイナンバーの交付枚数は約5345万枚で、このうち保険証利用の登録は約740万件で交付枚数に占める割合は13.8%となっている。

オンライン資格確認の利用状況は、昨年10月の本格運用開始から12月末まで3か月間で、合計約4200万件の資格確認が行われた。内訳は、患者によるマイナンバーカードの利用が約26万件、保険証が約3200万件、一括照会(医療機関等が予約患者の資格が有効かどうか事前にオンライン資格確認等システムに一括して照会する)が約900万件だった。

オンライン請求の推進については、▽4年度中の返戻再請求オンライン化をめざして取り組みを進める▽紙レセプトや電子媒体による請求も含めてオンライン請求への移行を進め、将来的にオンライン請求の割合を100%に近づける。このための具体的なロードマップを作成する─との方針を示した。

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