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健保ニュース 2022年新年号

4年度審査支払事務手数料
階層化の導入を延期
平均手数料は据え置き

健保連は12月17日の理事会で、令和4年度の審査支払事務手数料など社会保険診療報酬支払基金との契約更改に関する合意内容について了承した。4年度審査支払事務手数料については、厚生労働省と支払基金が4年度から導入する方針を示していた医科・歯科レセプトの「手数料階層化」が延期され、レセプト1件当たり平均手数料は3年度と同額の59.9円(医科歯科71.6円、調剤35.8円)に据え置かれた。健保組合の手数料負担の増加、ひいては国民負担の増加を回避するため、苦渋の決断となったが、今回の合意にあたり、負担増を伴わない階層化を5年度に実施することなど「検討事項」の協議を支払基金と行うことが確認されている。今後、2月の総会、3月の審査支払対策委員会と理事会の審議を経て、4月に契約を更改する。

期ずれ預金の使用撤回を強く求める

新型コロナの影響による支払基金の財政悪化に加え、4年度から導入予定だった「手数料階層化」、2年度決算で生じた「期ずれ預金」の取り扱いという新たな問題が加わり、4年度手数料交渉は例年以上に難航を極めた。

2年度の年間レセプト件数については、当初の見込みに比べ、約2か月分の件数に相当する1億7千件の減となり、3年度も大幅な落ち込みからの回復は見込めず、支払基金に深刻な収入不足が生じた。そのため経費の圧縮に加え、退職給付引当預金繰入を2年連続で約36億円縮減し、退職給付引当預金の充足率が50%を割り込む状況に陥った。

こうしたなか、4年度の手数料交渉に際し支払基金は、新型コロナ感染拡大前の水準までレセプト件数が戻る見通しは立たず、今後も財政が好転しないと判断し、「期ずれ預金」の活用と、前年度(平均手数料59.9円)をベースにした財政中立による「手数料階層化」の実施を提案した。

「期ずれ預金」とは、昭和25年からずれていた予算(3月診療分から2月診療分)と決算(2月診療分から1月診療分)の期間を、令和2年度決算において期ずれ解消の対応として予算(3月~2月診療分)に合わせることで、2年度決算時に約60億円(1か月分の収入)の余剰金が発生。保険者と合意した場合に使用できる積立金として別管理されていた。

今回、支払基金は4年度の審査拠点統合に伴う一時的な経費支出に充てるため、「期ずれ預金」の一部を使用する案を示したが、事前の合意なく、「期ずれ預金」を予算案に繰入計上したことに対し、健保連は「安易な財布ではない」、「まずは使途の考え方を整理すべき」と撤回を強く求めた。そのうえで4年度のレセプト件数は、新型コロナ前の令和元年度の件数を水準とすること(予算上の収入を確保)を提起する一方で、件数が伸びず不測の事態となった場合は、4年度中途での見直し協議に応じる考えも伝えた。

厳しい交渉が続いたが、健保連の強い要請により「期ずれ預金」の使用は撤回され、今後、双方で認識のすり合わせや使途・保全のルールなどについて協議することを確認するとともに、レセプト件数の見込みの修正などにも応じ、最後の焦点は階層化に絞られた。

負担増を伴う階層化は認められないと主張

元年5月の支払基金法改正により、支払基金に支払う手数料は、これまで「レセプトの枚数」を基準に設定していたものを、「レセプトの枚数」と「審査の内容等」を勘案し設定することとされ、厚労省と支払基金が4年度から「手数料階層化」を導入する方針を示した。これは、支払基金改革の効果として、審査が簡易な「判断が明らかなレセプト」(全レセプト件数の10%弱)の手数料を審査コストに応じて引き下げ、その結果、平均手数料も下がる考え方となる。支払基金も昨年7月頃までは、この考え方を審査支払対策委員会で示し、全健保組合を対象にしたWEBセミナーでもその旨、説明していた。

しかし、交渉の過程で支払基金は、財政悪化による財源不足を理由に、「判断が明らかなレセプト」の手数料を引き下げる一方、「判断が明らかなレセプト」以外のレセプトの手数料を前年度より引き上げて、財政中立による階層化を実施したいと提案した。

これに対し健保連はその他のレセプトの手数料を引き上げるなら改革の基本的な考えにそぐわないと主張。「判断が明らかなレセプト」のみの引き下げを求めた。支払基金が提案した階層化では、多くの健保組合が負担増となるため、再考を求めた。さらにその引き下げ財源として、退職給付引当預金繰入の縮減の継続を要請した。

「期ずれ預金」の使用の撤回など、妥結に向けて協議は前進したものの、支払基金としては退職給付引当預金の回復を最優先事項と位置づけ、繰入縮減の継続を拒否。これ以上の財源捻出の調整は不可能と判断し、一転して支払基金は階層化自体の延期を提案した。これには負担増のない階層化の実現をめざす健保連だけでなく、厚労省も難色を示し、通常合意確認の場となる12月7日の四者懇談会(健保連、協会けんぽ、支払基金、厚労省)当日まで折衝が行われたが、最後は四者とも苦渋の決断として延期の合意に至った。健保連としては、健保組合の負担増回避を最優先しての判断となった。

合意にあたっては、「保険者の負担増を伴わない階層化を5年度に実施すること」、「支払基金の中長期財政フレームを作成し、審査委員会費の縮減等改革の効果を保険者に示すこと」、「期ずれ預金のあり方」などを柱にした「検討事項」の協議を、速やかに進めることを確認した。

4年度は支払基金改革において、非常に重要な年となる。3年10月の新システム稼働の効果が現れ始め、4年10月には審査事務の集約が実施される。健保連としては支払基金と協議を継続し、支払基金改革により健保組合の業務効率化や負担軽減が進むよう、対応を強化していく方針だ。

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