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健保ニュース 2021年11月上旬号

外来機能報告WG
重点外来医療機関 初・再診基準に地域性を考慮
病院の対象範囲が論点

厚生労働省の外来機能報告等に関するワーキンググループ(座長・尾形裕也九州大学名誉教授)は10月20日、4回目の会合を開き、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」(重点外来医療機関)の基準や呼称をめぐって議論した。

外来機能報告制度は、外来機能の明確化・連携を推進する観点から、一般病床または療養病床を持つ病院、診療所の管理者に対し外来機能のうち重点外来の実施状況を都道府県に報告することを義務づける。このなかで、自院で重点外来を地域で基幹的に担う重点外来医療機関となる意向がある場合は、手上げでその旨を報告する。

これを踏まえ、都道府県が設置する「協議の場」で、紹介外来を担う重点外来医療機関を地域性を考慮しつつ国が示す基準を参考に当該医療機関の意向にもとづき確認、決定する。

現状では外来機能のデータや議論が少ないことから、重点外来医療機関の明確化については、今後の外来機能報告や地域の「協議の場」での議論を重ね、改善を図りながら精緻化することを検討していく方針だ。

そのうえで、厚生労働省は、この日のWGの会合で、重点外来医療機関の基準について、地域医療支援病院の状況を踏まえ、初・再診それぞれの外来件数のうち、高額等の医療機器・設備を必要とするなど「医療資源を重点的に活用する外来」の件数の占める割合とすることを提案した。

初・再診を指標とする国の基準は一律に設定し、さらに、地域の実情や医療機関の特性を踏まえて、参考とする指標をガイドラインに盛り込む。その際、紹介・逆紹介を推進する観点から、「参考とすることが望ましい指標」として、紹介率・逆紹介率を位置づけることを提案した。具体的な水準は、調査中の9月の紹介率・逆紹介率などの結果を踏まえ検討する。

こうした提案のもと、厚労省は、基準となる初・再診についての複数のシミュレーションを示した。

例えば、初診の外来に占める重点外来の割合を35%以上かつ再診の外来に占める重点外来の割合を20%以上に設定した場合、病院全体の20%がこの基準に合致し、このうち地域医療支援病院は94%が該当する。200床以上(許可病床)の病院では52%が合致する。

初診50%以上・再診30%以上だと、病院全体の7%、地域医療支援病院は49%、200床以上で20%が合致するなど、初・再診の割合の水準を上げると該当する医療機関が少なくなる傾向が示された。

意見交換では、医療関係者の委員から、定額負担を別途徴収する紹介中心の対象病院を増やすと、患者にとって通える病院が少なくなると懸念し、限定的な範囲にとどめるべきなどの意見が出た。

健保連の幸野庄司理事は、今後導入される紹介状のない患者への受診時定額負担(一般病床200床以上で「紹介患者への外来を基本とする医療機関」が対象)が、初診料など一定額を保険給付から控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求める仕組みが想定されており、重点外来医療機関に適用される方向に着目。

重点外来医療機関は任意による手上げで選定されることを踏まえ、「病院側の収入となる現行の選定療養と異なり、今後導入される定額負担は給付から控除されるので、病院の収入とならない。病院にとって(重点外来医療機関に手を上げる)インセンティブがあるのか」と訝しんだうえで、手上げを促すようなガイドラインの策定に期待した。

重点外来医療機関の基準については、「国の基準は可能な限り大きな網をかける必要がある。その大きな網のなかで、地域特性を踏まえた目安を決めるべきだ」と述べ、広くカバーする基準を設定するよう提案した。

また、厚労省は、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」の呼称について、▽紹介患者への外来を基本とする医療機関▽紹介による受診を基本とする医療機関▽紹介外来医療機関▽紹介受診医療機関▽紹介医療機関▽医療資源活用外来基幹医療機関─の6つの候補を提案した。

あえて呼称を付けることに疑問を呈する見解も出るなど、委員の間で意見集約には至らなかった。

幸野理事は、呼称に「基本」が含まれると、例外とする解釈・運用が拡大されて患者と病院との間でトラブルが発生しかねないと懸念し、「基本」の文言がない「紹介外来医療機関」の呼称を支持した。

同WGでは「医療資源を重点的に活用する外来」の呼称も議論することとなっており、これについては、重点外来医療機関の呼称に則って検討することとした。

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