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健保ニュース 2021年9月上旬号

新型コロナワクチン職域接種報告会
4組合が取り組み事例を発表

健保連は7月27日、新型コロナワクチン職域接種に係るWEB事例報告会を実施した。報告会では、職域接種を実施しているトッパングループ、東京証券業、日野自動車、計機の4健保組合が取り組み事例を説明した。

事例報告では、WEB参加した健保組合からのアンケートをもとに、職域接種を実施するにあたり工夫した点や苦労した点をインタビュー形式で発表した。そのなかで、健保組合の多くがワクチン不足により納品が遅れ、接種計画のスケジュールが立てづらかったことが共通の課題として挙げられた。計機健保組合の日原順二常務理事は具体的なワクチンの供給量や納品数が分からず、医療従事者の確保やスケジュール調整で苦労したと話し、他の健保組合からも同様な声が相次いだ。(以下、事例報告会の概要を報告順に掲載)

オンラインによる予約システムを導入
トッパングループ健保組合

トッパングループ健保組合では、1000人以下の適用事業所の加入者を対象に接種を実施。1000人を超える事業所は、個々の事業所での接種を行うこととした。7月5日から開始し、8月31日までに約2800人への接種を予定しており、会場は加入事業所のオフィスを借り、実施している。8月には2回目の接種が開始され、8月末までにすべての接種を完了させる。

接種の実施にあたり、特に工夫した点として①オンラインによる予約管理システムの導入②受付から接種までの導線の明確化③接種業務終了後の反省会の実施─の3点を挙げた。

①は、加入者のワクチン接種の予約について、QRコードを用いたオンラインによる予約管理システムを導入。オンラインで予診票を接種日までに入力してもらうことにより当日のスムーズな受付事務に繋げている。

②は、色分けされたクリアファイルと導線テープ等を活用し、予診票の確認からワクチン接種までの導線を明確化した。これにより迅速かつ効率的な接種体制を確保した。さらに、個別の対応が必要な被接種者に対しては、色分けされたクリアファイルを用い区別することで、インシデント防止に役立っている。

③は接種業務の終了後に、接種会場にて反省会を実施。反省会では、ブースごとの1日の状況や改善点を話し合い、接種の迅速化や効率化に繋げ、日々改善を図っている。反省会の役割は非常に大きく、②の導線の明確化等も、この反省会での意見をもとに改善が図られた。

同健保組合の梅木稔課長は、苦労した点として、受付時間は設定しているものの、早く来てしまう方が多く、受付をどのように捌くかが重要になると話した。また、工夫した点としては、ワクチンのシリンジが1回目と2回目の納品の際に変更されており、医療従事者が分注を行う際、余分にワクチンを吸いすぎないようシリンジに印を付けたと話した。

東京証券取引所で職域接種を実施
東京証券業健保組合

東京証券業健保組合は、適用事業所の被保険者を対象に、7月1日から9月24日までの土日祝日を除いた43日間で9000人に対して接種する。会場は、加入事業所である日本取引所グループの協力により、東京証券取引所内に接種会場を設置し実施する。

同健保組合は、毎年秋にインフルエンザの予防接種を行っており、その実績から、加入事業所や被保険者から同健保組合に職域接種を実施してほしいという要望が寄せられていた。5月下旬に政府がワクチンを供給し、社員1000人以上の企業から職域接種を順次実施するとの報道があった後、日本取引所グループから東京証券取引所で職域接種を実施しないかとの申し出があり、実施する運びとなった。

同健保組合では、各事業所の従業員数に応じ接種者数を割り当て、その枠内で各事業所が接種希望者の選定を行った。会場の運営は、市町村等で接種事業を請け負っていた業者に依頼した。また、会場のレイアウトはソーシャルディスタンスの確保と、人が滞留しないようにするため会場の構造を生かしつつ、一方通行となるように導線を確保した。

同健保組合の武田太老常務理事は、ワクチン供給の目途がまったく立たないなか、職域接種を早く実施してほしいという事業所や加入者の声があり、苦労したと話した。そのうえで、ワクチン不足により、当初計画していたワクチンの量が届かず、予約管理やスケジュール管理は非常に難しかったと語った。

社内のワクチン接種の理解醸成に取り組む
日野自動車健保組合

日野自動車健保組合は、適用事業所の被保険者を中心に7月5日から開始し、7月18日までで1回目のワクチン接種を行い、8月1日から8月22日までに2回目の接種を実施する予定で、接種対象人数は6000人と見込んでいる。接種は日野自動車本社で行う。

接種の実施にあたり、特に工夫した点としては、①被接種者への情報発信②会場レイアウトの工夫③会場での待ち時間を活用した取り組みの実施─を挙げた。

①ではワクチン接種に関するQ&Aを社内イントラに掲載したり、接種スケジュールを社内報で周知したりするなどの情報発信に取り組み、社内でのワクチンの理解醸成に努めた。

②では、パーテーションを活用し、被接種者が一方通行となるよう接種会場のレイアウトを工夫した。レイアウト作成にあたっては、健保組合の職員だけでなく、事業所の職員にも協力を仰ぎ、導線を確保しつつ、運営スタッフが往来しやすいことに配慮した設計となった。

③では、待ち時間が発生しやすいエリアに、ワクチンの副反応に関するポスターなど、被接種者に知らせたい情報の提供スポットを配置した。接種後の待機エリアでは注意事項などの情報を風景も交えた動画で流すなどして、被接種者が少しでもリラックスできる環境の提供に努めた。

その他の取り組みとしては、副反応が出たときの対応として担架やベッド、車いす等を準備し、緊急搬送が必要となった際の対応方法や連携病院への連絡体制等の構築を行った。

職員の工夫などで支出を抑えて実施
計機健保組合

計機健保組合は、加入者1万人を対象に7月5日から7月17日までに1回目のワクチン接種を実施し、8月2日から8月14日までに2回目の接種を完了させる予定。

接種会場は、同健保組合のオフィスを利用するとともに、会場の運営には組合職員とボランティアをあてるなど、支出を出来るだけ抑えて接種を実施した。

接種の実施にあたっては、健保組合内にプロジェクトチームを発足させ、接種業務の流れのシミュレーションを綿密に行ったほか、会場の掲示物等は委託業者に頼ることなく職員が手作りで作成した。

接種を実施するにあたり、工夫した点として、ワクチンのバイアルごとの管理のために1つのトレーに1バイアル分のシリンジ10本をセットし、使用後に予診票と一緒に回収し、バイアルごとの接種数の確認を行った。

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