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健保ニュース 2021年8月合併号

令和3年版厚生労働白書
社会保障 セーフティネットを重層化
医療提供体制の構築など課題

厚生労働省は7月30日の閣議で、「令和3年版厚生労働白書」を報告した。
 「新型コロナウイルス感染症と社会保障」をテーマに掲げ、新型コロナ感染拡大に伴う国民生活への影響やその対応について分析を行うとともに、社会的危機における社会保障の役割や課題を考察。課題への対応を通じてセーフティネットの重層化を図る重要性を強調した。

国民生活への影響は、▽仕事や収入が急減した人への対応▽孤立の深刻化▽女性への影響▽子どもへの影響▽医療・福祉現場への影響─の5テーマについて分析。

新型コロナ感染拡大に伴う休業の増加や時間外労働の減少で所定外給与が大きく低下した影響のほか、婚姻件数や妊娠届出数が減少するなど出生数の減少を懸念した。

医療・福祉現場では、▽医療機関への受診控えのほか健診の受診率が低下▽医療費も減少し病院経営に影響▽感染者の増加に伴い病床占有率が上昇─などの影響を与えたと指摘。

他方、2年4月に初診からオンライン等による診断や処方を可能とした特例措置により、オンライン診療等を実施する医療機関が約1万7000か所に急増している現状を示した。

分析結果を受け厚労省は、新型コロナ感染拡大により課題として顕在化してきた、①危機に強い医療・福祉現場②社会保障におけるデジタル技術の実装化③多様な働き方を支えるセーフティネット④性差によって負担に偏りが生じない社会づくり⑤孤独・孤立を防ぎ、つながり・支え合うための新たなアプローチ─への対応を通じて、セーフティネットの重層化を図ることの重要性を強調した。

このうち、①は、新型コロナ感染拡大は、感染症に対応する医療機関のみならず、広く一般の医療提供体制に多大な影響を及ぼすとともに、病床や人材の確保、地域における医療機関の役割分担・連携等に関し、地域医療の様々な課題が浮き彫りとなったと問題提起。

今回の経験を踏まえ、新たな感染症の発生・拡大に備え、受け入れ候補となる医療機関や場所・人材等の確保の考え方、医療機関間の連携・役割分担などを検討することにより、危機に強い医療提供体制の構築が求められると訴えた。

②は、新型コロナ感染拡大防止の観点から、これまで取り組まれてきたオンライン化の前倒し実施や拡充、対面形式で行われてきた手続きやサービスへのオンライン化の導入など、デジタル技術の実装化が進められたと指摘。

そのうえで、デジタル技術の活用は人と人との接触回避が求められる局面での補完的な利用といった点だけでなく、利便性の向上など社会保障のアクセスにつながるとの認識を示し、「感染拡大時の対応を超えて、平時の新たな価値創造という視点から積極的な活用を図っていくことが必要」とした。

オンライン診療とオンライン服薬指導は、今回の特例的な取扱いを踏まえて医療現場に定着すべき措置について検討が進められている状況を報告。

また、マイナンバーカードが健康保険証として利用可能となり、特定健診や薬の情報がマイナポータルを介して提供されることで、転職時に健康保険証の発行を待たずに受診可能となるなど手続きや時間が効率化され、個々にあった医療の提供等の効果が期待されるとした。

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