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健保ニュース 2021年7月下旬号

健保組合の生活習慣病医療費調査
医科入院1割、医科入院外9割
入院外 糖尿病等3疾患で約8割

健保連はこのほど、「令和元年度生活習慣関連疾患医療費に関する調査」結果を公表した。
 調査は、1295組合の医科・調剤の電算処理レセプト(2億7098万2014件)をもとに、▽糖尿病▽脳血管障害▽虚血性心疾患▽動脈閉塞▽高血圧症▽高尿酸血症▽高脂血症▽肝機能障害▽高血圧性腎臓障害▽人工透析─を生活習慣関連10疾患として、受診率や1人当たり医療費等の医療費関連指標にもとづき動向の考察を行った。

それによると、生活習慣関連10疾患の医療費は、医療費全体の13%を占め、このうち医科入院外の占める割合が9割近いことが明らかになった。

医科入院外の医療費構成割合をみると、糖尿病が3割超、高血圧症が3割弱、高脂血症が2割弱と高く、3疾患で約8割を占めた。1人当たり医療費も、本人、家族とも糖尿病、高血圧症、高脂血症の順に高くなっている。

医科入院外の医療費構成割合などは、前年度から大きな変化はなかった。
 糖尿病、高血圧症、高脂血症の生活習慣関連3疾患については、医科入院外の受診率が極めて高く、治療薬として先発医薬品を処方される割合が比較的多いことから薬剤費への影響も大きい。

生活習慣病に対する重症化予防に加え、医療機関等で医学的妥当性や経済性を踏まえ作成された医薬品の使用方針を意味する「フォーミュラリ」の活用など、医療費を上回る勢いで増大する薬剤費の適正化対策が引き続く課題となる。

外来受診率は本人が高血圧
家族は高脂血症が最多に

生活習慣関連10疾患別の受診率(1000人当たり件数)をみると、「医科入院」では、「本人」、「家族」とも高血圧症(本人8.8件、家族4.4件)、糖尿病(同7.0件、同3.9件)、高脂血症(同5.0件、同2.6件)の順に多かった。

一方、「医科入院外」では、「本人」が高血圧症(873.6件)、高脂血症(801.0件)、糖尿病(593.9件)、「家族」が高脂血症(366.3件)、高血圧症(334.5件)、糖尿病(251.0件)」─の順で、「本人」は高血圧症、家族は高脂血症が最も多い。医科入院・外来とも「本人」の受診率が高かった。

生活習慣病 総医療費の13%
本人17%、家族7%と差異

健保組合における令和元年度の医療費総額(約3兆5227億円)のうち、生活習慣関連10疾患の医療費は約4422億円で、全体の12.6%を占めた。このうち、「医科入院」は約576億円(全体の13.0%)、「医科入院外」は約3846億円(同87.0%)で、「医科入院外」の占める割合が9割近かった。

「本人」の医療費総額(約1兆9973億円)のうち、生活習慣関連10疾患の医療費は約3434億円で、全体の17.2%。診療区分別では、「医科入院」が約437億円(全体の12.7%)、「医科入院外」が約2997億円(同87.3%)となっている。

「家族」の医療費総額(約1兆5255億円)のうち、生活習慣関連10疾患の医療費は約988億円で、全体の6.5%。「本人(17.2%)」に比べ相当程度、低い。診療区分別では、「医科入院(全体の14.1%)」、「医科入院外(同85.9%)」だった。

疾患別の医療費構成割合
外来は糖尿病3割で最多

生活習慣関連10疾患別の医療費構成割合をみると、「医科入院」は脳血管障害(37.1%)が最も高く、次いで、虚血性心疾患(28.4%)、糖尿病(12.5%)と続き、この3疾患で入院全体の約8割を占めた。

「本人」は、▽脳血管障害(34.7%)▽虚血性心疾患(33.6%)▽糖尿病(12.0%)─に対して、「家族」は、▽脳血管障害(44.3%)▽人工透析(15.3%)▽糖尿病(14.1%)─で高い割合を占めたが、「虚血性心疾患」や「人工透析」のように、「本人」と「家族」で構成割合に違いが見られた。

一方、「医科入院外」の医療費構成割合は、糖尿病(31.8%)、高血圧症(25.3%)、高脂血症(18.2%)の順に高く、3疾患で外来全体の約8割を占めた。

「本人」、「家族」とも、▽糖尿病(本人32.4%、家族29.8%)▽高血圧症(同26.0%、同23.0%)▽高脂血症(同17.5%、同20.8%)─の順に高い。高脂血症のみ、「本人」に比べ「家族」の方が高かった。

年齢階層別医療費をみると、「医科入院」は「本人」と「家族」のいずれも40歳以降で高くなる傾向にあり、「55~59歳」が最も高く、次いで、「60~64歳」の順となっていることがわかった。

「医科入院外」も、「本人」、「家族」とも「55~59歳」が最も高く、次いで、「本人」は「50~54歳」、「家族」は「60~64歳」で医療費が高かった。

1人当たり医療費は本人と家族間で大差

「医科入院」の1人当たり医療費をみると、「本人」は、▽脳血管障害(976円)▽虚血性心疾患(943円)▽糖尿病(336円)─に対して、「家族」は、▽脳血管障害(531円)▽人工透析(184円)▽糖尿病(169円)─の順で高かった。

一方、「医科入院外」の1人当たり医療費は、「本人」、「家族」とも、▽糖尿病(本人6249円、家族2169円)▽高血圧症(同5015円、同1674円)▽高脂血症(同3371円、同1514円)─の順に高い。

医科入院、医科入院外とも、「本人」と「家族」の違いにより、1人当たり医療費に2~3倍程度の大きな差が生じていることがわかった。

生活習慣関連10疾患の年齢階層別1人当たり医療費をみると、「医科入院」、「医科入院外」の「本人」、「家族」のいずれも年齢階層が上がるにつれて高く、「70~74歳」が最も高かった。

高血圧症の医療費は「55~59歳」が最多

「糖尿病」の医療費構成割合をみると、「本人」は、▽55~59歳(21.1%)▽50~54歳(18.6%)▽60~64歳(18.2%)─、「家族」は、▽55~59歳および60~64歳(18.2%)▽65~69歳(14.7%)▽50~54歳(14.0%)─で高い。

また、「高血圧症」は、「本人」、「家族」とも「55~59歳(本人22.6%、家族19.9%)」が最も高く、次いで、「60~64歳(同19.8%、同19.4%)」、「50~54歳(同19.3%、同15.8%)」と続く。

高脂血症は、「本人」の、▽55~59歳(21.9%)▽50~54歳(18.9%)▽60~64歳(18.3%)─に対し、「家族」は、▽60~64歳(21.9%)▽55~59歳(21.7%)▽65~69歳(15.8%)で高かった。

このほか、推計1入院当たり医療費をみると、「本人」は脳血管障害(101万5052円)、人工透析(78万42円)、虚血性心疾患(51万6257円)、「家族」は人工透析(108万3635円)、脳血管障害(91万6042円)、動脈閉塞(29万6925円)で高い。

また、推計平均在院日数をみると、「本人」は脳血管障害(36.4日)、「家族」は動脈閉塞(71.1日)が最長だった。

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