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健保ニュース 2021年7月下旬号

中医協が調剤報酬の議論を開始
処方箋の反復利用など論点に
幸野理事 分割調剤の抜本見直しを

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は14日、総会を開き、令和4年度の次期診療報酬改定に向け、「調剤」をテーマに議論した。厚生労働省は、政府の「骨太方針2021」を踏まえた今後の対応として、「処方箋の反復利用」を論点として提起し、診療側委員からは長期処方を助長する方向に反対する意見や、処方箋様式の見直しを求める意見があった。健保連の幸野庄司理事は、現行の分割調剤の仕組みが普及しないのは明白と指摘し、抜本的な見直しを要望。病状が安定し、長期に渡って同じ処方を受ける患者に対して、処方箋を繰り返し利用できる仕組みも検討すべきと強調した。他方、対人業務へのシフトを踏まえた調剤報酬のあり方については、薬局の機能類型に対応した体系へと再編するよう訴えた。

厚労省は14日の中医協総会に、次期診療報酬改定に向けた検討テーマとして「調剤」についての課題と論点を示した。

調剤にかかる診療報酬は、対物業務は調剤基本料や調剤料、対人業務は薬学管理料を主な評価とし、対物から対人へのシフトを踏まえ、令和2年度の診療報酬改定では、薬剤服用歴管理指導料について、同一薬局の利用を推進するための見直しなどを行った。

技術料に占める割合は、調剤基本料(28.5%)、調剤料(51.6%)、薬学管理料(19.9%)で構成され、対人業務を評価する薬学管理料の占める割合は2割程度となっている現状が説明された。

他方、政府が閣議決定した「骨太方針2021」に、「症状が安定している患者について、医師および薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」と明記されたことや、対象患者やリフィル処方箋の有効期限、対象薬剤の規制など、海外におけるリフィル制度の特徴について報告した。

オンライン服薬指導については、「成長戦略フォローアップ2021」で、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大に際しての時限的措置の実績を踏まえ、今夏を目途に医薬品医療機器等法にもとづくルールや診療報酬の評価について必要な見直しを検討する」と盛り込まれたことが説明された。

そのうえで、▽薬局・薬剤師が対物中心の業務から対人業務へとシフトすることを踏まえた診療報酬のあり方▽かかりつけ薬剤師・薬局の普及促進、多剤・重複投薬への取り組み、処方箋の反復利用など、「骨太方針2021」等を踏まえた今後の対応▽オンライン服薬指導の診療報酬について必要な検討─の3点を論点として提起した。

対人業務へのシフトを踏まえた診療報酬のあり方については、健保連の幸野庄司理事が、薬局が対人業務の評価を算定できない現状を、「未だに対物業務のみで経営が成り立つ報酬となっているため」と問題提起し、対人業務中心の薬局と調剤業務偏重の薬局の報酬に差をつける見直しが必要とした。

さらに、「調剤料、調剤基本料、薬学管理料から成る現行の調剤報酬の財源構成を大きく変えていかないと薬局の機能は変わることはない」と指摘。

薬局の機能を地域連携薬局や専門医療機関連携薬局に類型した薬機法等改正に呼応し、調剤報酬体系を再編する方向に舵を切るべきとの考えを示した。

処方箋の反復利用に対しては、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)が、令和2年の分割調剤の算定回数が前年から減少しているのは、必要性や有用性を感じられないことが要因と分析。また、海外におけるリフィル制度の特徴から、日本でも分割調剤できる薬剤を制限する議論が必要と訴えた。

そのうえで、長期処方は残薬リスクや多剤投与に気付きにくくなるなど、患者の薬物療法と保険財政に対する弊害が多いと主張し、「長期処方を助長する方向には、日本医師会として、従来通りしっかり反対する」と言及した。

健保連の幸野庄司理事は、「コロナ禍の受診控えに伴い、多くの患者が長期処方を希望すると想定されるなか、分割調剤はほとんど算定されていない」と述べ、「現行の煩雑な仕組みが普及しないことは明らかであり、何らかの抜本的な見直しを行わないと今後も絶対に普及することはない」と断言。

次期改定では、病状が安定している生活習慣病患者や、長期に渡って同じ処方を受けている患者に対し、医師の決める範囲内で、処方箋を繰り返し利用できることも選択肢として考えるべきと強調した。

診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、分割調剤が進まない理由として、現行の処方箋様式による現場への負担があると指摘。処方箋様式の見直しを検討したうえで、医療機関と薬局の適切かつ確実な連携の下での実施を前提に、一定期間内の処方箋の反復利用について議論すべきとの考えを示した。

オンライン服薬指導については、支払側の眞田享委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)が、対人業務の一環として、患者への安全の担保を前提に、活用を促進する方策の検討を進めていくことが重要と主張。

健保連の幸野理事は、オンライン診療に平仄を合わせ、かかりつけ医機能の普及に資する形でオンライン服薬指導の制度を設計していく必要があるとした。

敷地内薬局の対応 論点に明示を要望
診療側

このほか、この日の会合では、厚労省が「調剤」の論点に盛り込まなかった、いわゆる「敷地内薬局」のあり方についても意見が集中した。

診療側の有澤委員は、病院の敷地内に開設する保険薬局について、「適切な医薬分業のあり方や地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の利用、かかりつけ薬剤師の推進などに逆行するもの」と指摘。

経済的・構造的に独立性が担保されない、もしくは、機能として院内薬局と変わらない薬局である場合は保険指定する必要はないとの認識を示した。

診療報酬上の対応など、これらの流れを止めるためのルールの見直しが必要と強調し、今後の調剤の議論で敷地内薬局の対応を論点として明示するよう厚労省に要望した。

松本吉郎委員(日本医師会常任理事)も、「敷地内薬局について、大病院で利益供与を認めるような募集が行われていることは大変遺憾に思う」と同調し、院内薬局との違いについて考え方を整理する必要があると問題提起。地方で敷地内薬局が極度に進むことにより、地域を支える調剤薬局がなくなってしまう危うさも懸念した。

健保連の幸野理事は、「敷地内薬局が悪ということではなく、患者がかかりつけ薬局に行くという受療行動を促すような仕組みを構築する必要がある」との考えを示した。

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