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健保ニュース 2021年2月下旬号

地域医療構想WG
具体的対応方針 大都市部は調整会議で検討

厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(座長・尾形裕也九州大学名誉教授)は12日、会合を開き、大都市など人口100万人以上の構想区域の公立・公的医療機関等について、診療実績が類似している医療機関が近隣にあるという理由で、厚労省が再編・統合の対象機関を指定するのではなく、該当区域の地域医療構想調整会議の検討に委ねる方針を了承した。

地域医療構想の実現に向けては、手始めに公立・公的医療機関等の診療実績などを再検証し、統合・再編に向けた検証結果を昨年秋までに取りまとめる予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、検討が滞っていた。そのため前回のワーキンググループでは、人口100万人以上の地域と他の地域とでは状況が異なるため、他の地域と同じ基準で検討することに懸念の声が上がっていた。

この日は、厚労省が人口100万人以上の区域における医療機関の設置状況を説明。それによると、100万人以上の区域は、50万人以上100万人未満に比べ面積は小さいものの、病院数や医師数は約2倍となっており、さらに20万人以上50万人未満との比較では、病院数や医師数が約4倍になっている現状を明らかにした。

また同一区域で最も近い病院までの移動時間の状況では、人口100万人以上の区域では、99%の病院が車で20分以内の距離に別の病院が存在し、そのうち半数以上が20分以内の距離に10を超える複数の病院が所在することが報告された。

さらに2025年までと2040年までの人口減少率別の割合では、100万人以上の半数以上の区域が2025年まで人口が増加するうえ、3分の1程度が2040年まで人口が増加。それに対し100万人未満では、減少する区域が大多数を占め、2040年まで人口が増える区域は、50万人以上100万人未満では対象区域の9%、20万人以上50万人未満では3%と少なく、大都市と地方とでは、医療需要や人口の変動が異なることも合わせて明らかにされた。

そのため厚労省は、人口100万人以上の大都市を抱える構想区域について、診療実績が類似している医療機関が近隣にある「類似かつ近接」という視点にもとづく分析手法により、機能転換や規模の適正化、再編・統合などを求めるのでなく、各公立・公的医療機関等が対象区域での地域医療構想調整会議で診療実績や医療需要の推移などに関するデータを解析し、地域の実情に合わせた医療機関の役割や機能など具体的な対応方針について議論することを求める方針を示した。

構成員として出席した健保連の幸野庄司理事は、この提案に対し賛意を示したうえで、「今般の新型コロナウイルスの感染拡大で、感染症患者の受け入れなどは公立・公的医療機関にしか担えない役割があることが判明した」と指摘し、今後の検討にあたっては、人口100万人以上の区域では民間医療機関が圧倒的に多いことを考慮すると、「類似かつ近接」という手法で、再編・統合を進めるべきでないと述べた。

さらに人口100万人以上の大都市は、今後、人口が増加するが高齢化も加速するため、診療実績や療養病床の配置状況、年齢構成の将来推計による疾病構造の変化などを踏まえ、急性期から回復期や慢性期への医療機能の転換など、自らが検討できる環境を整えるべきとの考えを示し、厚労省に対し急性期以外の回復期、慢性期といった診療データの分析を進める必要性を訴えた。

このほか、この日のワーキンググループでは、民間医療機関では担えない機能に特化した医療機能の再編、病床数等の適正化を促す「重点支援区域」の進捗状況についても報告された。

それによると、令和2年1月から今年1月まで公立・公的医療機関を中心に11道県の14区域の重点支援区域を選定し、そのうち、新潟(燕)や兵庫(伊丹)など5区域で再編に関する基本的な方針について合意したほか、宮城(石巻・登米・気仙沼)や山口(柳井)など3区域で病床の医療機能の転換、病床数の変更、工事の着工など再編に向けた具体的な取り組みに着手していることが報告された。

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