HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2021年2月中旬号

健保ニュース

健保ニュース 2021年2月中旬号

河本常務理事インタビュー
現役世代負担軽減へ一層の改革を
健保法等改正案の動向を注視

健保連の河本滋史常務理事は本誌のインタビューで、健保組合を取り巻く最近の情勢を語った。後期高齢者の医療費窓口負担の2割への引き上げなどを盛り込んだ健康保険法等改正案が5日に閣議決定されたことに言及し、現役世代のさらなる負担軽減などの観点から、今後の制度改革や財政支援の必要性を国会審議を通じて法案の附帯決議に反映されるよう、与野党へ働きかけていく方針を示した。2割負担の対象については、単身で年収200万円以上と決定されたが、範囲が不十分と指摘した。傷病手当金については、資格喪失後の継続給付が維持されることとなったが、社会保障審議会医療保険部会では継続課題とされ、引き続き見直しを求めていくと強調した。任意継続被保険者制度については、今後も廃止を含めた見直しを訴えていく方針を示した。

後期高齢者医療の窓口負担の見直し

これまで取り組んできた高齢者医療制度の構造改革については、昨年12月に全世代型社会保障検討会議の最終報告を受け、後期高齢者医療の窓口負担が2割に引き上げられることとなった。

あらゆる手段を通じ、高齢者医療費に対する現役世代の負担は既に限界であり、高齢者と現役世代の負担のアンバランスを解消し、負担能力のある高齢者には応分の負担を求め、全世代で医療保険制度を支え国民皆保険の持続性を確保することが必要と訴えてきた。昨年11月24日には全世代型社会保障検討会議のヒアリングを受け、健保連の佐野副会長がその実現を強く求め、民間議員からは、その考えを支持する意見をいただいた。

しかし最終報告では、2割負担の対象範囲が、年収200万円以上で、対象者数が370万人にとどまった。2割負担の対象範囲については、高額療養費の一般区分に該当する方すべてとすることを求めていたわれわれにとっては、不十分と考えている。

後期高齢者医療の窓口負担2割引き上げを盛り込んだ関連法案が2月5日に閣議決定された。今回の見直しにとどまらず、現役世代のさらなる負担軽減と、国民皆保険制度の持続可能性の観点から、今後、さらなる制度改革や財政支援等の取り組みが必要である点を、質疑や附帯決議に反映して頂くべく、与野党への働きかけを行う方針だ。

傷病手当金の見直し

健康保険における傷病手当金の支給期間については、同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間とされている。現状では、その間に被保険者が一時的に労務可能となり、傷病手当金が支給されなかった期間についても、1年6か月に含まれるとされている。

しかし、共済組合では傷病手当金が支給されなかった期間を、1年6か月の支給期間に含めずに取り扱っていることや、治療のために入退院を繰り返すがん患者などが柔軟に利用できないとの指摘もあり、傷病手当金の支給期間を通算して1年6か月とする取り扱いに変更される。

資格喪失後の継続給付については、職場復帰を目的としている傷病手当金ということを考えた場合、資格喪失後も支給するというのは問題で、雇用保険の給付ではないかと主張してきたが、今回は改正が見送られた。健保組合では精神疾患の取り扱いなどをはじめ、その確認作業に相当に苦労している。医療保険部会では継続課題とされているので、引き続き見直しを求めたい。

任意継続被保険者制度の見直し

任意継続被保険者制度は、今回、健保組合について、規約において退職時の標準報酬月額で保険料を算定できることになり、また被保険者からの申請による資格喪失が可能となる。しかし、現行2年間の被保険者期間や、2か月以上とされる加入要件については、医療保険部会で検討の俎上にあがったものの、結果として見直しは見送られた。

任意継続被保険者制度は、退職した被保険者が国保に移行することで発生する給付率の低下の緩和という制度本来の役割は終えたと思っているので、基本的に廃止する方向で検討すべきと考えている。

今後、段階的な被保険者の適用拡大が実施されることもあり、継続して廃止を含めた制度の見直しを訴えていきたい。

令和3年度介護報酬改定

令和3年度の介護報酬改定は、人材確保や物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況などを勘案し、全体で0.7%引き上げることとなった。このうち0.05%分は、新型コロナウイルス感染症への対応を評価するための財源となる。

委員として参加している介護給付費分科会では、今回の介護報酬の改定にあたり、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年以降、高齢人口がピークに達することを考えた場合、介護サービスの需要が増大し、介護給付費が急増していくことを考慮すると、これまでと同様な拡充を続けるのでなく重点化・効率化で評価するべきと訴えてきた。

その理由として、制度の支え手である現役世代の減少に加えて、コロナ禍による経済状況の悪化に伴い、勤労世代の報酬の減少、そして新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う緊急事態宣言の再発令によるさらなる経済の深刻化があるからだ。

加えて、健保組合の財政状況は、高齢者医療費への負担も含め非常に厳しく、第2号被保険者の介護納付金をまかなうため、介護保険料率の大幅な上昇を余儀なくされている。そのため分科会では、介護保険を支える側の現役世代は、これ以上の負担増に耐えられないと訴えてきた。

結果として、0.7%の引き上げとなったが、次期介護報酬改定に向けては、限られた財源の中で、効率化等により削れるものは削る一方で、必要かつ効率的・効果的な介護サービスは評価するなど、適正化、重点化に力点を置いた見直しの検討を求めていくつもりだ。

3年度政府予算案

令和3年度の政府予算案は、一般会計総額約106.6兆円で、厚生労働省所管の社会保障関係費は約32.8兆円。このうち医療は約12兆円、介護は約3.5兆円となっている。約4800億円と見込んだ高齢化に伴う自然増は、毎年改定による薬価の引き下げで、国費約1000億円を削減するなどして約3500億円に抑制した。

健保組合関係助成費は、新型コロナウイルス対策を柱とする2年度第3次補正予算と合わせると、944.8億円と、2年度当初予算に比べ44.4億円増となった。

このうち、高齢者医療支援金等負担金助成事業など拠出金負担増を軽減するための財政支援は、厳しい財政事情のなか2年度当初予算と同額の820.4億円が計上された。さらに3年目を迎える保険者機能強化支援事業は、3年度分を前倒しし補正予算で一体的に取り扱い、約32億円増の50.6億円を計上し、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、補助率を引き上げるほか、対象組合を拡大することになっている。

健保連は、昨年来、新型コロナウイルス感染症拡大による財政影響が、著しい健保組合に対する緊急支援を強く訴えてきたが、今回、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、保険者機能強化支援事業の補助率の引き上げと対象健保組合の拡大に対する予算が措置されたものである。

今回、新たに補助対象となる健保組合の選定については、極力、厳しい状況に置かれている組合の足下の実態を反映した基準とするべく、今後、補助金の交付要綱作成過程で、厚労省と調整する考えである。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年