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健保ニュース 2021年1月下旬号

4年度改定に向けた医療経済実態調査
厚労省が単月調査の実施を提案
中医協 2年度改定の影響把握が課題

厚生労働省は、13日に開催した中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の調査実施小委員会に、令和4年度の次期診療報酬改定に向けた「医療経済実態調査」について、2年度改定の影響を把握する観点から、3年4月から6月のいずれかの月の損益状況を元年、2年の同月と比較する「単月調査」の実施を提案した。

新型コロナウイルス感染症に伴う診療報酬上の特例対応や経過措置の延長に伴い、通常の医療経済実態調査では2年度改定の影響を把握することが困難な状況のなか、単月調査の実施について、支払側は理解を示す一方、診療側は難色を示した。

厚労省は、春先までに単月調査の準備を整えたうえで、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえつつ、実施の可否を判断するとした。

医療経済実態調査(医療機関等調査)は、病院、一般診療所、歯科診療所および保険薬局における医業経営などの実態を明らかにし、診療報酬に関する基礎資料の整備を目的に実施する。

従来は、診療報酬改定前後の2か年度における損益状況の変化を把握してきたが、2年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、単純に元年度と2年度の損益状況を比較しても、2年度改定の影響を把握することが困難という問題が生じている。

このため、厚労省は3年4月から6月までのうち新型コロナウイルス感染症の影響が小さな月を調査対象に加え、元年、2年、3年の同月における損益状況を比較することを提案。単月調査の回答が困難な場合でも有効回答として扱うこととした。

回答者の負担軽減の観点から、費用項目の内訳の一部省略を検討するほか、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ有無による経営状況も把握する。

合わせて、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金などによる国や自治体からの補助金の支援に対応するため、補助金による収益については、従来の補助金・負担金と分けて把握することを提案した。

一方、有効回答率向上への対応については、フォントやレイアウトなどを工夫し、より見やすく記入しやすい調査票、分かりやすい記入要領にするといった取り組みを進めていくことに加え、電子調査票に関する利用案内のレイアウトの工夫や電子調査票のメリットを強調する。

有効回答率は、52.4%(平成27年)、56.2%(平成29年)、54.0%(令和元年)と推移。非回答理由は、「業務多忙」、「調査内容が複雑」などが多く、調査内容・方法に対し回答施設からは、「調査内容が難しいので簡素化してほしい」、「損益、資産などの施設単位の算出が困難」といった意見が多かった。

健保連の幸野庄司理事は、「新型コロナウイルス感染症に伴う特例対応や入院基本料の経過措置延長に伴い、通常の医療経済実態調査では、2年度改定の影響を把握することは不可能と言い切れる」と指摘。新型コロナウイルス感染症の感染状況をみながら、影響の少ない月の3か年を比較する単月調査の実施は1つの案と賛意を示した。

一方、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「どの月を選択しても新型コロナウイルス感染症の影響は無視できない状況で、単月調査を実施しても分析は相当困難と考える」と言及。また、単月調査の追加実施は、「医療現場の負担をさらに増やし、有効回答率は悪化する」との認識を示した。

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