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健保ニュース

健保ニュース 2020年12月上旬号

あん摩、はり・きゅうの療養費改定
12月から0.27%引き上げ

厚生労働省はこのほど、あん摩マッサージ、はり・きゅうの療養費を今年12月1日から0.27%引き上げる改定内容を健保組合などに通知した。これまであはき療養費の改定は、診療報酬改定が実施される年に合わせ、柔道整復療養費の改定と同時に行われるが、今年度は改定内容に関し施術団体間で意見がまとまらず、調整が手間取ったため、柔整療養費の改定のみ6月1日に実施され、あはき療養費の改定が遅れていた。

今回の改定では、あん摩マッサージの施術料(1局所)が340円から350円に引き上げられた。また変形徒手矯正術については、施術内容を「関節拘縮や筋委縮が起こり制限されている関節可動域の拡大を促す変形の矯正を目的とした施術である事」を明確化したうえで、「肩、肘、手首、股関節、膝、足首」といった6大関節に対し、同一部位に変形徒手矯正術とマッサージを併せて実施した場合に、1肢ごと(右上肢、右下肢、左上肢、左下肢)にマッサージの加算として450円を加算できる算定方法の変更を行った。なお変形徒手矯正術と温罨法の併施は認められない。

はり、きゅうの初検料(1術)については、現行の1710円から1770円に、同じく施術料(1術)は、1540円から1550円に引き上げられた。なお、あん摩、はり・きゅうの両施術に共通する内容として、施術報告書交付料は施術の頻度を「月平均〇回実施」というように1か月の平均施術回数を明記する様式変更を行ったうえで、300円から460円に引き上げたほか、往療料については往療距離が片道4キロメートルを超えた場合は現行の2700円から2550円に引き下げられた。

往療料の距離加算は、平成30年4月に社会保障審議会医療保険部会あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会の報告書で、施術料よりも往療料が高くなっているという現状から、距離加算を引き下げ、施術料や往療料に振り替えながら段階的に廃止する方向性が示されていた。次回の改定で、距離加算の廃止や施術料と往療料の包括化などを検討し、結論を出すこととなったが、健保連の幸野理事は、本来は今回の改定で整理される予定であったことから次回改定で必ず施行されることを要望するとともに、「現状を考えた場合、定期的、計画的に訪問して施術を行う訪問施術料を新設して、往療と区別をすることが必要ではないか」との考えを明らかにした。

また同一日、同一建物での施術については、新たな料金を検討するため「往療内訳表」により調査を実施し、その結果をもとに引き続き検討する。

あはき療養費の長期・頻回患者
3年7月以降 償還払いに変更可能

また今回のあはき療養費の料金改定に合わせ、長期・頻回な施術等に対し、健保組合の判断で受領委任払いから償還払いに変更できる仕組みが導入され、令和3年7月1日から施行される。

あはき療養費については、平成31年1月から、施術者等が被保険者等に代わり療養費の支給申請を行う「受領委任制度」が導入されたが、その際に長期・頻回な施術に関し償還払いに戻せる仕組みについて検討することとなっており、受領委任規定に明記されていた。

10月29日に開催された社会保障審議会医療保険部会のあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)では、長期・頻回の施術等に関する調査として「1年以上・月16回以上施術継続理由・状態記入書」等を収集し分析を行った結果が示され、それをもとに検討が行われた。

厚労省は、平成29年から30年にかけて申請のあった協会けんぽや国保などのあはき療養費支給のうち、初療日から1年以上かつ月16回以上の支給について、調査を実施。その結果、①全体の改善・維持・悪化の割合について、はり・きゅうは5割程度、マッサージは7割程度が状態の「維持」であり、1年から10年に至るまで変化がみられない②症状が比較的安定している患者について施術回数を増やすことによる施術効果は限定的と考えられる③初療から10年を超えて月16回以上の施術を行っている患者が一定程度存在しており、はり・きゅう4.5%、マッサージ5.3%と非常に長い場合がある─などが明らかになった。

この調査結果を踏まえ、10月29日の同専門委員会では、「初療日から2年以上かつ直近の2年のうち、5か月以上月16回以上の施術が実施されている患者について保険者が必要と認める場合、施術者や患者に対し確認を行うことができることとしてはどうか」との提案があり、手続き等を含めた内容については保険者側、施術者側とも了承したが、施行日については令和3年10月1日とされたため、健保連の幸野理事が反対の意向を示していた。その理由として、今回の検討専門委員会開催の遅れをあげ、更に1年施行を遅らせる必要はないとし、早期に様式等を示し周知を図り4月1日とするよう求めた結果、遠藤座長に一任されていた。今後、厚生労働省から詳細な手続きと様式等が示される予定。

初療日から2年以上継続している場合、患者の症状が比較的安定していると考えられるため、月16回以上の施術が実施されている場合は、標準的な施術回数から勘案して、施術効果を超えた過度・頻回な施術である可能性がある。今後、こうした施術に対し、施術管理者からの「頻回な施術を必要とした詳細な理由」及び「今後の施術計画」を確認し、「施術効果を超えた過度・頻回な施術が疑われる」と判断されれば、受領委任払いから償還払いに変更できる。こうした取り組みが、過剰請求の抑制や不正防止につながるのではと期待されている。

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