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健保ニュース 2020年12月上旬号

75歳以上「一般」全員に2割負担
厚労省試算 後期支援金は▲2230億円

厚生労働省は11月26日、社会保障審議会医療保険部会で、後期高齢者の自己負担を1割から2割に引き上げる範囲について、高額療養費制度の一般区分に該当する全員を対象とした場合の財政試算を提示した。後期高齢者の52%と半数超を占める一般全員を2割にすると、2022年度で後期高齢者支援金が2230億円減少する。給付費は5820億円、公費は3030億円、後期高齢者の保険料は570億円それぞれ減少する。

前回11月19日の会合で、2割の所得基準について、厚労省が示した所得上位20%(現役並みを除くと13%)~44%(同37%)まで5つの選択肢に対して、健保連の佐野雅宏副会長など被用者保険者や経済界の代表委員は、範囲が不十分として、一般のすべてを対象とすべきと主張。この場合の財政影響試算を求め、こうした要請を受けて厚労省は今回、一般全体とする新たな財政試算を示した。

5つの選択肢のうちでは2割の対象が最も広い上位44%、現役並みを除く一般の37%のケースの支援金の抑制効果は、1430億円減と試算されており、ここから一般全員に広げると800億円追加のマイナス効果が生じる。

2025年度の後期支援金
現行のまま推移で8.2兆円
今年度から1.4兆円増大

また、厚労省はこの日の同部会に、2022年度、2025年度時点の後期高齢者支援金の試算を提示した。現行の原則1割自己負担のままで推移すると、団塊の世代が後期高齢者に入る2022年度の支援金は総額7.2兆円、全員が後期高齢者となる2025年度では総額8.2兆円となり、それぞれ2020年度から0.4兆円、1.4兆円増加する。

2020年度の支援金は6.8兆円。今の6.8兆円に至るまでの2010年代の支援金の増加額は平均年1600億円と試算した。これに対し2022年度の支援金の増加額は前年度比2500億円増、2025年度では3100億円増と拡大し、団塊の世代が後期高齢者となる影響が表れる。

厚労省によると、団塊の世代の影響による支援金の増加分は、2022年度、2025年度それぞれの増加額2500億円、3100億円から2010年代平均の増加額を差し引いて、2022年度は約1000億円、2025年度は1500億円と算出。厚労省は、団塊の世代の影響分について、2割に引き上げの5パターンの選択肢のいずれも支援金の負担増が抑制されて、「高齢者と現役世代が分かち合うことが可能」と位置づけている。

1人当たり支援金
年約8万円、1.7万円増

74歳以下の1人当たりの支援金は、2020年度の年額6万3100円から現行のまま推移すると、2022年度に6万8100円(20年度比5000円増)、2025年度に7万9700円(同1万6600円増)となる。2022年度の支援金負担増の抑制効果は、2割の対象が最も狭い上位20%とした場合で事業主分を含めて年400円減、対象が最も広い上位44%で1300円減と試算した。

健保連の佐野副会長は、団塊世代の影響による支援金増加分を5パターンの選択肢のいずれも「高齢者と現役世代が分かち合うことが可能」と厚労省が指摘したことに対し、支援金は毎年数千億円単位で大きく増えて積み上がっていくが、抑制額は毎年ほぼ一定の額で推移することから、適切な表現ではないとの認識を示した。

団塊世代の影響による増加分として、2010年代平均の増加額との差額が示されているが、これについて、「給付と負担における世代間のアンバランスが拡大してきた事実があるなかで、あたかも、これまでと同水準の伸びは現役世代が負担するのが前提とも読み取れる資料となっている」と訝しんだ。

また、2025年度の支援金の増加額3100億円、このうち2010年代平均との増加額と差額1500億円のいずれも対年度の増加額を示したものであって、2022年度以降の累積分が反映されていないと指摘。厚労省の提出資料では、単年度の増加分と2022~2024年度の積み上げ分の8600億円を加えると、累積額は1.17兆円に上る。

このため、5パターンのいずれの選択肢の場合も2025年度の抑制効果は、極小であると指摘し、「現役世代の負担上昇を抑制するという今回の改革の目的からほど遠いものとなっている」と断じた。「一般区分全員を2割としても支援金は約2200億円の軽減にしかならない」と述べ、「最低でも、一般区分すべてを2割とすべきである」と改めて主張した。

藤原弘之委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は「支援金が20年度の6.8兆円から25年度の8.2兆円へと1.4兆円も激増する。これこそが直面している課題である」と強調し、一般全員を2割として2000億円規模の財政効果を発揮させることが極めて重要と指摘した。

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