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健保ニュース 2020年12月上旬号

全世代型社会保障検討会議がヒアリング
佐野副会長 現役世代の負担増軽減を
後期自己負担は原則2割を主張

政府の全世代型社会保障検討会議(議長・菅義偉首相)は11月24日、首相官邸で11回目の会合を開き、後期高齢者の自己負担見直しなど医療保険制度改革に向けて、健保連の佐野雅宏副会長など関係者から意見を聴取した。佐野副会長は、「現役世代の負担は既に限界である」と訴え、後期高齢者の自己負担について、現役世代の過重な負担を軽減する観点から、原則2割負担とする必要性を強調し、少なくとも後期高齢者の約52%が該当する高額療養費制度の一般区分のすべてを対象とすべきと主張した。団塊世代が後期高齢者に入り始めて現役世代の負担が急増する2022年度初までに、現役世代の負担増を抑える改革を進めるよう要望した。ヒアリング終了後の検討会議の議論では、有識者である民間議員の大勢が2割負担を広く適用する推進論を展開した。閣僚では麻生太郎財務相が「現役世代の負担を軽減する視点が重要だ」と指摘したうえで、幅広い範囲で2割負担を導入する必要性に言及した。

菅首相 「多くの方が支える側に」

菅首相は、会議の終了に際し、「現役世代の負担上昇を抑えながら、すべての世代が安心できる社会保障制度を構築し、次世代に引き継いでいくことがわれわれの世代の責任だ。そのためにも、少しでも多くの方に支える側として活躍してもらい、能力に応じた負担をいただくことが必要である」と述べ、西村康稔全世代型社会保障改革担当相や田村憲久厚生労働相らに対して、年末の最終報告で結論を出すべく与党と調整しながら検討を進めるよう指示した。

この日の全世代型社会保障検討会議は、2部構成で進められ、前半に健保連の佐野副会長、日本医師会の中川俊男会長、4病院団体協議会の相澤孝夫議長(日本病院会会長)の3氏からヒアリングを実施し、後半に民間議員と関係閣僚の構成員で医療保険制度改革を議論した。

佐野副会長は、現行原則1割負担である後期高齢者の自己負担を原則2割負担とすべきと主張し、入院などで医療費が高額になる場合は自己負担が一定額に抑えられる高額療養費制度の仕組みがあることを指摘した。

高齢者医療拠出金の負担増大などを背景に「現役世代の負担は既に限界である」と訴え、現在の高齢者と現役世代の負担のアンバランスを解消し、負担能力のある高齢者には応分の負担を求めることによって、全世代で医療保険制度を支え、国民皆保険の持続性を確保していくことの必要性を強調した。

もうひとつの論点となっている、大病院の外来受診時定額負担の対象拡大については、賛意を表明し、増額分を医療保険財政の軽減に充てるなど中間報告で示された内容の確実な実施を求めた。

健保組合を取り巻く状況については、2019年度と現行の高齢者医療制度が導入される前の2007年度とを比較し、健保組合の支出に占める拠出金が19年度(決算見込み)で3.4兆円と12年間で1.1兆円、48%も増加したことを説明。拠出金負担が大きく拡大する一方、1人当たり総報酬額の伸び率は1.9%と低水準で、保険料率の引き上げによる現役世代の負担増で対応している実情を示した。

2009~2017年度の8年間で現役世代は医療費に比べて保険料の負担増が大きく、高齢者世代は負担が小さい実態を表す資料も提示し、世代間における「給付と負担のアンバランスが拡大しており、アンバランスの是正は喫緊の課題と考えている」と改善の必要性を強調した。

今後の後期高齢者支援金は、団塊世代が後期高齢者入りする2022年以降急増して、現役世代の負担が毎年3000~4000億円増加する推計値を提示。拠出金負担が保険給付を上回る健保組合は、2020年度の238組合(組合全体の17.4%)から22年度に733組合(同52.7%)と大幅に増加する見込みだ。

こうした前提を踏まえて、後期高齢者の自己負担については、低所得に区分される住民税非課税世帯を除いて、一般すべてへの2割負担導入を提案し、本人所得だけでなく、世帯収入の負担能力を勘案する必要性を強調した。一般すべてを2割負担とした場合であっても、後期支援金の軽減効果は年約2200億円規模であり、今後の支援金の増加額をカバーできない対象範囲であることも指摘した。

日医の中川会長は、後期高齢者の自己負担引き上げについて、受診控えが起きる可能性を懸念し、限定的にすべきとの考えを示した。現役世代の保険料負担の抑制には理解を示したが、その手法については、被用者保険の一元化や地域保険の一元化で対応すべきとした。

4病協の相澤議長は、外来受診時定額負担の拡大で一般病床200床以上の病院を目安に対象を広げる方向性について、地域の実情や病院ごとに果たす医療機能は異なるとして、導入に難色を示した。

後半の議論では、田村厚労相が2割負担とする後期高齢者の所得基準について、11月19日の医療保険部会に示した5パターンの「機械的な選択肢」(前号既報)を提出し、これを踏まえて討議した。

民間議員からは、所得上位44%(現役並み所得者を除くと37%)と2割負担の対象者が最も多いパターン「本人に住民税の負担能力がある水準」(所得35万円超、収入155万円以上)を支持する意見、さらに広げて一般区分すべてを対象とすべきとの意見が出され、可能な限り広範囲に適用する考えが大勢を占めた。

主な意見の概要は、▽負担に関しては、所得のみに着目するのではなく、資産も考慮すべきである。こうした観点から2割負担を広く適用し、世代間の公平を図り、若年層の不安を解消することが重要▽現役世代の負担を軽減し、制度の持続可能性を確保するため、一般区分のすべてを対象に2022年度から2割負担を実施すべき▽若人は平均収入以下であっても3割を負担している。年齢によって給付率に差を設けて高齢者だけを優遇する合理性は乏しい。本来は3割に統一すべきだが、75歳以上は少なくても2割を原則とすべきだ─などの声が上がった。

官邸で記者団の質問に答える佐野副会長

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