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健保ニュース 2020年11月上旬号

医療保険部会が任継制度見直しを議論
保険料設定で退職前報酬も可能
佐野副会長 厚労省案は踏み込み不足

厚生労働省は10月28日の社会保障審議会・医療保険部会で、次期医療保険制度改革の一環として、任意継続被保険者制度の見直し案を提示した。任継被保険者に賦課する保険料の設定方法について、健保組合の規約により、従前(退職時)の標準報酬月額を算定基礎として選べることを可能とする考えを示した。被保険者期間は最長2年とする現状の仕組みを維持する方針だが、被保険者からの申請による任意脱退を認める。いずれも健保法の改正が必要となる。健保連の佐野雅宏副会長は、厚労省案の保険料設定の柔軟化を支持したが、被保険者期間と加入要件も合わせて見直す必要性を強調した。市町村国保の代表委員は、国保の負担増に直結する見直しでないことから、反対しなかった。この日の同部会は、任継制度や傷病手当金などをめぐって議論した。

任意継続被保険者制度は、企業を退職後も一定の要件で引き続き最長2年間、退職前の健康保険制度の加入できる仕組み。

これまでも任継制度の見直し議論は同部会で行われており、健保連など被用者保険者の代表委員は、保険者間の給付率が統一された皆保険制度の下での任継制度の存続を疑問視し、廃止を含めた見直しを主張しているが、地方自治体など国保を運営する側は、国保の負担増となる見直しに強く反対する構図が続いている。

厚生労働省は、任継制度の役割について、▽昭和36年に国民皆保険が実現するまでは、解雇・退職に伴う無保険の回避▽平成15年に7割給付率に統一されるまでは、国保への移行による給付率の低下防止▽現状は、国保への移行に伴う保険料負担の激変緩和─と整理し、医療保険制度の大きな改革を節目に目的が変わり、給付率が統一されて以降も今日的意義は失われていないとの立場だ。

任継制度は、資格喪失の前日まで2か月以上継続して被保険者であったことを加入要件として、▽任継被保険者となった日から2年が経過した▽死亡した▽保険料を納付期日までに納付しなかった▽他の被用者保険や後期高齢者医療制度の被保険者となった─ときに資格を失う。

保険料は全額を任継被保険者が負担し、退職時の標準報酬月額と当該保険者の全被保険者の平均標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担する。

健保連は任継制度の見直しに向けて、①退職時の標準報酬月額にもとづき保険料を設定②現行2年間の被保険者期間を1年に短縮③加入要件である資格喪失前の勤務期間を現行2か月以上から1年以上に延長─の3点を要望していた。

厚労省はこのうち、他制度に財政影響を及ぼさない保険料設定方法の①を提示した。
 組合自治の運営の下、保険料算定の基礎を「健保組合の規約により、従前の標準報酬月額」とすることもできるようにして、保険料収入増が図られる低い方でない額の設定を認める考え。協会けんぽは、現状の方法で保険料を設定することとして、見直しの対象外とする。

健保組合の保険料設定を柔軟化することについて、厚労省は「健保組合によっては、管掌企業の雇用形態や、組合の財政状況を踏まえ、退職前に高額の給与が支払われていた者についても、退職前と同等の応能負担を課すことが適当な場合もあると考えられる」としている。

被保険者期間を1年に短縮することについては、国保に移行して最大2年間は退職前の高い所得にもとづいて国保保険料が算定されるケースも一定数あり、退職後の被保険者の選択の幅を狭めるなどと指摘し、一律に制限を設けることに難色を示した。

厚労省の提案は、現行の最長2年の被保険者期間を維持したうえで、自主的に任継被保険者から外れることができない仕組みを見直し、例えば、国保への移行に際して、あえて保険料を納めないことで任継の資格を喪失させるのではなく、「被保険者の申請による任意脱退」を認めるもの。

厚労省は、現状で保険料未納により資格を喪失した場合、国保の資格の遡及適用やレセプトの返戻を行うなど、資格運用や保険料徴収、保険給付の側面で事務負担が発生していると指摘し、任意脱退を認めることで、こうした事務を効率化する利点があるとみている。

加入要件の勤務期間については、1年以上とする延長案を「有期雇用の労働者などの短期間での転職が多い被保険者が制度を利用できなくなり、被保険者の選択の幅を制限する」として、現行の2か月以上を維持する方針を示した。

健保連の佐野副会長は「任継制度は本来の役割を終えたので、廃止するのが基本」と述べたうえで、被保険者期間について、健保連が平成28年に実施した調査で、転職等で他の被用者保険に移行した者の9割が1年以下の加入期間であった実態に言及し、「1年程度に短縮すべきだ」と主張した。

加入要件である勤務期間については、共済組合が現行1年以上であることや、今後、短時間労働者への適用拡大が段階的に進められて被用者保険に加入しやすくなることを踏まえ、見直す必要を訴えた。

安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、従前の標準報酬月額に固定することを認める保険料の算定方法について、協会けんぽには導入しない厚労省案に不満を表し、運営委員会の議を経ることを前提に健保組合と同様の取り扱いとすることを要望した。

被保険者期間は1年に短縮することを提案。加入要件については、「2か月勤務すれば2年継続して被保険者となれる仕組みに違和感がある」と述べ、「2か月を維持するのであれば、被保険者期間を1年に短縮すべき」と提起した。

厚労省保険局の姫野泰啓保険課長は、協会けんぽに従前の標準報酬月額の選択を認めない理由について、▽健保組合に比べて、構成員の雇用形態などの同一性が低い▽現行制度下でも健保組合に限り、より低い標準報酬月額を算定基礎とすることが認められている▽今回の見直しは、全被保険者の平均標準報酬月額を上回る、比較的に高収入の者に影響が出る。一方、協会けんぽは構造的に平均的な収入が相対的に低い─などと指摘し、「従来どおりの仕組みがふさわしい」との認識を示した。

原勝則委員(国保中央会理事長)は、「任継制度の見直しで懸念するのは、国保への移行が進むことで保険料負担が急増することだ」と指摘し、今回の厚労省の提案では「国保財政への影響はないと理解している」と厚労省に確認した。姫野保険課長は、「被保険者の資格を一律に移行させるものではないので、基本的に制度間の財政影響は生じない」と応答した。

任継制度の加入者(被扶養者含む)は、減少傾向にあり、平成30年度で協会けんぽが47万人、健保組合が38.5万人で合計約86万人。任継被保険者の勤務期間は、協会けんぽは2割、健保組合は1割の者が2か月以上1年未満となっている。

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