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健保ニュース 2020年10月下旬号

平成30年度社会保障費用統計
給付費は過去最高の121兆円
前年度比1.1%増 マイナス改定等で伸び鈍化

国立社会保障・人口問題研究所(田辺国昭所長)は16日、平成30年度の「社会保障費用統計」を公表した。医療、年金、介護などの公的制度から個人へ支給した現金・現物の年間総額に相当する「社会保障給付費」は前年度比1.1%増の121兆5408億円、これに施設整備費など個人が直接受け取らない費用を加えた「社会支出」は同1.0%増の125兆4294億円で、いずれも過去最高を更新した。診療報酬のマイナス改定のほか、「臨時福祉給付金」の支給が29年度で終了したことなどが影響し、小幅な伸びとなった。「社会保障財源」は、被用者保険における被保険者数増などを要因に社会保険料が前年度比2.5%増加する一方、年金積立金の運用実績が減少し、前年度比6.1%減の総額132兆5963億円に落ち込んだ。

1人当たり給付費は96万円に上昇

「社会保障費用統計」は、日本の社会保障全体の規模や政策分野ごとの構成を明らかにすることを目的に、医療保険や年金、介護保険などに関する1年間の支出について、OECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」とILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」を集計している。

平成30年度の「社会支出」は前年度比1.0%(1兆2449億円)増の125兆4294億円、「社会保障給付費」は同1.1%(1兆3391億円)増の121兆5408億円で、いずれも過去最高を更新した。

国民1人当たり平均額は、「社会支出」が同1万1900円(1.2%)増の99万2000円、「社会保障給付費」は同1万2600円(1.3%)増の96万1200円にそれぞれ上昇した。
 国内総生産(GDP)が同0.1%増の伸びに留まったため、対GDP比は「社会支出」が同0.19ポイント増の22.87%、「社会保障給付費」が同0.21ポイント増の22.16%と、ともに2年振りに増加。

「社会支出」の対GDP比を29年度時点で国際比較すると、日本(22.68%)はイギリス(21.07%)より大きいが、ドイツ(27.75%)、スウェーデン(26.46%)、アメリカ(24.88%)に比べると小さい。このうち、「高齢」は日本(10.40%)、スウェーデン(9.09%)、ドイツ(8.41%)、イギリス(6.60%)、アメリカ(6.48%)の順だった。

社会支出
高齢57兆、保健42兆 2分野で全体の約8割

政策分野別の社会支出は、老齢年金や介護保険などの「高齢」が最大の57兆6766億円(前年度比1.3%増)で全体の46.0%、次いで、医療保険や公費負担医療給付などの「保健」が42兆1870億円(同0.%増)で全体の33.6%を占めた。「高齢」と「保健」の2分野で約100兆円に達し、全体の8割を占める。

児童手当や育児・介護休業給付などの「家族」は9兆547億円で構成割合は全体の7.2%にとどまるが、伸び率は前年度比4.7%増と最も高い。27年度から本格施行された「子ども・子育て支援新制度」の充実などにより、4年連続で高い伸び率を維持。全体に占める割合も年々、上昇している。

障害年金や障害者自立支援給付などの「障害、業務災害、傷病」は全体の4.8%で、28年度から3%程度の伸び率で推移している。

求職者給付などの「失業」は、近年の雇用情勢の改善に伴い、22年度から減少傾向が続いたが、9年振りに前年度比1.2%増に反転。関連し、教育訓練給付や雇用調整助成金などの「積極的労働市場政策」も同2.9%増加した。

このほか、「他の政策分野」は、「臨時福祉給付金」を29年度で終了したことから、前年度に比べ18.4%と大幅に減少した。

社会保障給付費
医療40兆円目前も全体の33%に縮小

部門別の社会保障給付費は、「医療」が39兆7445億円、「年金」が55兆2581億円、「福祉その他」が26兆5382億円だった。

「医療」は、高齢化の進展と医療の高度化に伴う自然増で、毎年2%程度、医療費が増加しているが、平成30年度はマイナス1.19%(本体プラス0.55%、薬価マイナス1.65%、材料価格マイナス0.09%)の診療報酬改定が行われたため、前年度の1.6%増から0.8%増に伸び率が半減した。

「年金」は、前年度から年金額を据え置いたため、伸び率も前年度と同様の0.8%増で、65歳以上人口増加率(1.2%増)を下回った。

「福祉その他」は、前年度比2.3%増で、このうち、「介護対策」は同2.8%増加した。「介護対策」の伸び率は、介護保険制度発足以降でみると、28年度(2.1%増)に次ぐ低水準となる。

30年度に、介護報酬はプラス0.54%、障害福祉サービス等報酬はプラス0.47%の改定がそれぞれ行われたが、26年4月の消費増税に伴う低所得者への影響を緩和させることを目的として1人につき1万5千円を支給していた「臨時福祉給付金」が29年度で終了したこと、介護は29年度に人材の処遇改善を目的とするプラス1.14%の臨時報酬改定が行われたことなどを要因に、前年度の3.0%増(福祉その他)、4.1%増(介護対策)から伸び率が鈍化した。

各部門の構成割合は、最多の「年金」が前年度から0.1ポイント減の45.5%に、「医療」が同0.1ポイント減の32.7%にそれぞれ縮小した。一方、「福祉その他」は同0.2ポイント増の21.8%、「介護対策」は同0.1ポイント増の8.5%にそれぞれ拡大した。

社会保障財源
保険料は2.5%増 全体の約55%に拡大

社会保障財源は、「社会保険料」が72兆5890億円で全体の54.7%、「公費負担」が50兆3869億円で全体の38.0%、「他の収入」が9兆6203億円で、7.3%を占めた。

前年度からの伸び率は、「社会保険料」が前年度に比べ2.5%増えた。被用者保険における被保険者数の増加や標準報酬水準の上昇が要因で、「被保険者拠出」は2.6%、「事業主拠出」は2.4%それぞれ上昇した。

公費負担は前年度から1.0%伸びた。このうち「国庫負担」が同0.8%増の33兆5990億円、「他の公費負担」が同1.4%増の16兆7879億円だった。「国庫負担」は、基礎年金国庫負担割合2分の1への対応が影響し増加。「他の公費負担」は、後期高齢者医療制度や介護保険、障害者自立支援給付金などで増えた。

「他の収入」は、「資産収入」が同68.6%減、「その他」が同19.9%減で、前年度と比較し53.3%と大幅に減少した。年金積立金の運用実績の減少が大きく影響し、社会保障財源の対前年度伸び率は同6.1%の減少となった。

このため、「他の収入」の社会保障財源に占める割合は前年度の14.6%から7.3%に低下する一方、「社会保険料」は50.1%から54.7%、「公費負担」は35.3%から38.0%にそれぞれ上昇している。

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