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健保ニュース 2020年10月上旬号

社保審・医療保険部会
次回以降、具体的検討に着手
後期2割などの論点まとめる

厚生労働省は16日に開催された社会保障審議会の医療保険部会(部会長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)に、医療保険制度改革に向けたこれまでの意見をもとに検討にあたっての考え方や論点をまとめた資料を提出した。次回以降、焦点の後期高齢者の窓口負担割合の見直しなど各項目に沿って、具体的な検討に着手することになる。今後、全世代型社会保障検討会議の最終報告を視野に、年内の意見の取りまとめを目指すこととなるが、後期高齢者の窓口負担のほか、大病院の定額負担の拡大、薬剤自己負担の引き上げに加え、任意継続被保険者制度の見直しなど検討項目は多岐にわたるうえ、今後の医療保険制度の根幹にかかわる大きな問題であることから、取りまとめまでには紆余曲折が見込まれる。

この日は、全世代型社会保障検討会議が昨年末にまとめた中間報告や「新経済・財政再生計画改革工程表2019」の検討項目を踏まえ、後期高齢者の窓口負担割合の見直しや大病院への患者集中を防ぎ、かかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大など10項目について、今年1月から検討を始めた同部会で委員からの意見に加え、検討にあたっての考え方と論点などを整理した資料が提出され、厚労省から説明された。

後期高齢者の窓口負担では、検討にあたっての考え方として、現役世代の負担上昇を抑えながら、全ての世代が安心できる社会保障制度を構築し、将来世代に着実に受け継いでいくために制度の持続可能性が重要と指摘したうえで、自助・共助・公助の役割分担を見直すとともに、年齢ではなく負担能力に応じた負担という視点を徹底していくとした。そのうえで論点として、高齢者の受診の特性、所得の分布状況などをもとに、具体的な施行時期、2割負担の具体的な所得基準、長期にわたり受診が必要な高齢者の生活等に与える影響をあげた。

大病院の定額負担の拡大の考え方については、全世代型社会保障検討会議中間報告で示された外来機能の明確化とかかりつけ医機能の強化を図るとの方針に基づき検討を進めるとし、論点として、対象病院の拡大範囲の考え方、公的医療保険の負担を軽減する仕組み、患者負担の増加額などについて検討を行う。

薬剤自己負担の引き上げでは、「新経済・財政再生計画改革工程表2019」で明記された薬剤の種類によって償還率を設定する外国の薬剤自己負担の仕組みを参考に、市販品類似薬の保険給付のあり方やセルフメディケーションの推進などを論点にあげている。

任意継続被保険者制度、傷病手当金も検討項目

このほか、任意継続被保険者制度と傷病手当金の見直しも検討項目に盛り込まれた。
 任意継続被保険者制度については、資格対象となる2か月以上の被保険者期間や任意継続被保険者として加入できる2年間の加入期間の問題などが指摘されているうえ、被用者保険と地域保険の給付率が異なっていた制度発足時の状況が現在では改善され、制度そのものの意義が失われていることもあり、将来的な廃止を求める意見もあがっていた。

この日の資料には、検討にあたっての考え方として、退職した被保険者が国保に移行することによる給付率の低下の緩和という本来の意義が失われており、現在は国保への移行に伴う保険料負担の激変緩和が実質的な意義となっており、現在の働き方にあった制度の見直しについて検討するとした。論点には、被保険者期間や加入期間の問題に加え、任意継続被保険者制度加入時の標準報酬月額の設定や制度見直しによる影響も視野に入れて検討を行うことが必要であると提起した。

傷病手当金については、1年6か月の支給期間を過ぎた後で、同じ疾病が生じた場合は不支給となるが、がん治療のために入退院を繰り返す場合や再発した場合など、療養のため休暇を取りながら働く事例も報告されていることから、支給期間の通算化、資格喪失後の継続給付のあり方などについて検討を行うことが必要としている。

またこの日の医療保険部会では、医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入準備に関する状況や令和元年度の概算医療費の集計結果などについて、報告があった。

健保連・佐野副会長
現役世代の負担軽減を視野に入れた検討を要望

この日の医療保険部会に出席した健保連の佐野雅宏副会長は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で現役世代の給与や賞与が減少し、健康保険料収入に影響を与えることが予想され、さらなる健保組合の財政悪化が懸念されていると指摘したうえで、今後の同部会での検討にあたっては現役世代の負担軽減を視野に入れ、議論するよう求めた。

新型コロナウイルス感染症の影響で、各企業の収益は減少傾向にあるため、健保組合の保険料の減収が見込まれている。加えて2199の事業所で保険料猶予が申請され、その額は167億円にのぼるなど組合財政に悪影響を及ぼしている。

この日、厚労省より提出された資料に対し佐野副会長は、全世代型社会保障検討会議の中間報告で記されている現役世代の負担上昇を抑えるという方針に、同部会の議論をつなげることが非常に重要と指摘したうえで、新型コロナウイルス感染症の影響による健保組合の状況を示しながら、現役世代の負担軽減を視野に入れた検討を要望した。

そのうえで後期高齢者の窓口負担については、1割負担から2割負担に引き上げても、高額療養費制度により必ずしも負担は2倍にならないというデータを提出するよう求めた。

さらに高齢者医療における現役並み所得者については、「高齢者医療における現役並み所得者にそもそも本来あるべき公費負担がないという現行の仕組みに問題はないのか議論すべきだ」と述べ、現行の仕組みを前提に検討することに対し警戒心をにじませた。

大病院への定額負担の拡大については、対象病院の拡大と合わせて、かかりつけ医機能の強化も論点に入れるよう求めたほか、事業主健診のデータフォーマットの統一化や多剤・重複投与や残薬などの解消に向けた医療へのかかり方の検討も求めた。

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