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健保ニュース 2020年9月下旬号

中医協が新型コロナの特例対応を承認
呼吸不全の中等症患者を評価
救急医療管理加算を5倍相当に

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は14日、持ち回りで総会を開催し、新型コロナウイルス感染症患者の受け入れにかかる診療報酬上の特例的な対応について承認した。呼吸不全状態となる「中等症Ⅱ」以上の患者に対して5倍相当の「救急医療管理加算1」を算定できる対応であり、15日から適用した。

酸素療法が必要な中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者については、新型コロナウイルスに対応した院内感染対策や急速な病状進行に備えた診療・巡回体制が必要との観点から、5月25日の中医協総会で「救急医療管理加算1(950点)」の「3倍相当(2850点)」の点数を算定できる特例的な対応が容認された。

一方、9月4日に発行された「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第3版)」では、中等症をⅠとⅡに細分化し、酸素投与が必要な呼吸不全の症候を示す患者は「中等症Ⅱ」に区分された。入院を要した新型コロナウイルス感染症例のレジストリ(2600例)によれば、酸素投与を要した中等症は30%だった。

また、新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院へのヒアリングによると、「中等症Ⅱ」の患者のイメージとして、▽診療や巡回の頻度増に加え重症化の早期発見のための頻回検査▽継続的なモニタリングと急変時対応の準備▽複数医師による相談や多職種の連携─などが必要なことが明らかになっている。

厚労省は、「中等症Ⅱ」に位置づけられている呼吸不全状態の患者における診療濃度と管理の実態を踏まえ、さらなる診療報酬上の対応が必要と判断し、一般病棟で呼吸不全状態となる「中等症Ⅱ」以上の臨床像の患者について、5倍相当となる「救急医療管理加算1(4750点)」を算定可能とする対応を提案した。

今回の特例的な対応は、感染症法による公費負担医療の対象となる入院医療費にかかる診療報酬上の評価見直しであるため、年齢に応じた患者の窓口負担は発生しない。令和2年度で追加的に生じる国費の所要額は10億円程度と見込まれ、新型コロナウイルス感染症対策の予備費により措置された。

健保連の幸野庄司理事は、救急医療管理加算1が緊急に入院を必要とする様々な状態の重症患者を一律に評価対象としているなか、「新型コロナウイルス感染症患者のみ中等症を細分化して3倍、5倍の点数をつける必要があるのか疑問であるが、特例的な対応として捉える」と言及。

そのうえで、救急医療管理加算については、中等症の区分の判断にかかる指標の測定結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載することを要件化する必要があると問題提起した。

さらに、新型コロナウイルス感染症に対してこれまで行われてきた様々な診療報酬上の特例的な対応について、どこかの時点で算定回数や医療費に与えた影響等の検証を行い、継続すべき事項や解除すべき事項、点数設定や要件等の見直しを行う事項を整理するよう求めた。

診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「今回の提案は、現場の負担および最新の知見を適切に評価したものであり、賛同する」と述べる一方、「今、最も重要なのは、秋、冬のインフルエンザ流行期に備えた地域の医療提供体制を整備することである」との認識を示した。

医療機関としては、発熱患者がインフルエンザなのかCOVID─19なのか分からない状況では、感染防止に必要な物理的、空間的な対策を講じたうえで、診療時間や人手を割いて対応せざるを得ないと指摘。地域のかかりつけ医が診療を進められるよう、診療報酬上の対応も含めた検討を行うべきと主張した。

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