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健保ニュース 2020年8月下旬号

2年度の高齢者医療支援金等負担金助成事業
新型コロナの影響踏まえ交付
前期納付金 前年度と同水準の負担も助成

厚生労働省は3日付で、高齢者医療への過重な拠出金負担増を緩和する令和2年度高齢者医療支援金等負担金助成事業の交付要件など取扱要領を定め、保険局高齢者医療課長から健保組合理事長宛てに通知した。同事業の柱のひとつである、総報酬に占める前期高齢者納付金の負担の重さに応じて助成する仕組みについて、厚労省は、新型コロナウイルス感染症の影響で報酬水準が下がって拠出金の負担感がさらに増大する健保組合に対し的確に財政支援する必要があると判断。できる限り直近の標準報酬総額の見込額を把握する必要から、8月に見込額を調査し、今後、これに沿って補助率など助成基準を決定したうえで、年度末に補助金を交付することを予定している。一方、今年度で2年目となる前期納付金の急激な負担増を軽減するための助成は、負担額が同水準で推移した場合も一定の補助金が交付されるよう要件を緩和し、対象組合の拡大に伴い元年度と比べて3倍規模の67.5億円を充てる。

高齢者医療支援金等負担金助成事業は、高齢者医療運営円滑化等補助金の大半を占める主要メニューで、健保組合等の前期高齢者納付金に着目した負担軽減を目的に補助金を交付する。

2年度の同事業については、▽総報酬に占める前期納付金の割合(所要保険料率)を指標として負担を軽減する「既存分」▽平成23年度からの前期納付金の伸び率に応じて助成する「新規分」▽前期納付金の直近の急激な伸びに対応する「急増分」─の3つを柱としている。急増分の補助事業は元年度から導入された。

既存分、新規分、急増分を合わせた2年度の同事業全体の助成額は、前年度と同規模の718.5億円。内訳は、既存分が120.4億円(前年度と同額)、新規分が530.6億円(前年度比45億円減)、急増分が67.5億円(同45億円増)で、新規分の縮減分の費用を急増分に上積みする。

事業全体の助成対象は、前年度で共済組合を含めて約1100保険者、健保組合は全健保の4分の3相当の約1000組合が該当するなど、多くの健保組合に適用されている。

助成方法は、新規分、既存分、急増分の優先順位で充てる。既存分と新規分の両方の要件に該当する場合は、新規分からの交付を優先することから、この分を含めた既存分の事実上の助成規模は194億円となる。

配分額が最も大きい既存分の交付の考え方は、被保険者1人当たり総報酬が健保組合平均を下回り、2年度の所要保険料率が組合平均の1.1倍を超える場合に所要保険料率に応じて助成する。

例年は、事業実施の当該年度に対して、前年度の2月時点で当該年度の総報酬見込み額を把握し、この額をもとに夏ごろに助成基準を決めて健保組合に通知している。

ただ、今年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、標準報酬総額が同感染の影響が顕在化していなかった2月当初の見込額から大きく減少していることも想定され、所要保険料率に着目して助成する既存分については、公平性の観点からも現下の報酬状況にもとづいて助成することとした。

2年度も所要保険料率の高さに応じて複数の助成率が設定される方向だが、現時点では未定とし、8月に把握する所要保険料率や組合平均の1人当たり総報酬額などを踏まえて、既存分の交付基準を決定する。既存分の補助金の交付時期は、例年よりも後ろにずれて来年3月ごろを予定している。

一方、新規分と急増分は、通例の2月時点の見込み額をもとに2年度の助成基準を今回決定し、通知した。補助金交付は今年12月を予定する。

新規分の助成の仕組みは、団塊の世代が前期高齢者に移行する前の平成23年度からの前期納付金の伸び率に着目した負担軽減措置で、これに対し急増分は、令和元年度から2年度の単年度、または平成30年度と令和元年度の2年平均値から2年度への伸び率を適用し、足下の前期納付金の急激な伸びに着目して助成する。

急増分の要件緩和 2年平均1.05倍を新設

急増分の交付要件は、加入者1人当たりの2年度の前期納付金について、令和元年度からの単年度の伸び率が1.1倍超、平成30年度と元年度の2年平均からの伸び率が1.05倍超のうち高い方を適用し、具体的に伸び率が▽2倍超の部分の80%▽1.5倍超~2倍以下は60%▽1.1倍超(または2年平均では1.05倍超)~1.5倍以下は40%─を助成する。

2年度は交付要件の下限を見直し、急増分の補助対象を拡充することとした。
 初回の元年度の基準は単年度または2年平均で1.1倍超としており、このケースで補助を受けた保険者においては、2年度の前期納付金の負担が元年度と同水準に推移すると対象とならないが、こうした場合も引き続き助成されるよう2年平均で1.05倍超とする要件を新設した。これにより急増分の対象が広がり、全体で307保険者、このうち健保組合は292組合を予定する。

新規分は縮減分を案分 均等に7%分引き下げ

新規分の交付要件は、加入者1人当たりの前期納付金について、平成23年度と令和2年度を比べて伸び率が▽2.5倍超の部分に78%(前年度の助成率は85%)▽2倍超~2.5倍以下は58%(同65%)▽1.5倍超~2倍以下は38%(同45%)▽1.35倍超~1.5倍以下は18%(同25%)▽1.2倍超~1.35倍以下は6.97%(同13%)─を助成する。

交付対象となる23年度からの前期納付金の伸び率とこれに応じて累進的に助成率を引き上げる5つの区分は、これまでの構造を維持しつつ、配分額の見直しに伴う圧縮分を交付対象の保険者で等しく案分する観点から、前年度の助成率から均等に7%分、最も低い部分のみ6.03%分の引き下げを行うこととした。

比較の起点とする23年度の前期納付金は、単年度による負担の偏りを均すため、22、23年度の2年平均とする。この場合、23年4月1日以降に設立した健保組合は、令和2年度までの前期納付金の伸び率が設定できないため、2年度の所要保険料率が健保組合平均の1.69%を超えていることを要件に納付金の0.5%相当額を助成する。

所要保険料率が全健保組合の下位3%(0.545%以下)に該当する保険者は、財政力に照らして拠出金負担が特段重くないとみて、新規分の助成の対象外とする。新規分の対象は全体で915保険者、健保組合は862組合が予定されている。

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