HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2020年8月合併号

健保ニュース

健保ニュース 2020年8月合併号

平成30年度・国民健康保険の財政状況
実質収支が215億円、初の黒字
財政基盤強化 公費投入額を拡充

厚生労働省は7月22日、「平成30年度国民健康保険(市町村)の財政状況」を公表した。30年度に国保の財政運営が都道府県単位化されて初めての決算で、決算補てんを目的とする一般会計繰入金などを除いた実質的な収支が、これまでの常態化していた赤字から一転し、215億円の黒字(前年度から644億円改善)を計上した。実質収支の黒字は、この統計を始めた平成10年度以降、判明している範囲で初めて。

厚労省は、収支改善の要因として、国保財政の基盤強化に投入する公費を予定どおり合計3400億円規模(27、30年度にそれぞれ1700億円の公費投入)に拡充したことに加え、保険料収納率の上昇などを指摘し、「財政的に言えば、一定程度円滑に初年度を乗り切った」と総括した。

30年度末の国保の被保険者数は、2752万人で前年度から119万人、4.1%減少した。
 30年度決算は、市町村と都道府県それぞれの国保特別会計を合算した額であり、財政運営の都道府県単位化に伴い、都道府県が市町村から集める国保事業費納付金や都道府県が市町村に交付する保険給付費等交付金が会計上加わったことから、収入・支出ともに前年度から約60%増加している。

医療給付分と介護分を合わせた単年度の収入額は、合計24兆3448億円(前年度比58.5%増)。このうち保険料・税収入は、前年度比3.9%減の2兆6713億円で被保険者数の減少が影響した。1人当たり保険料調定額は、9万5391円と0.2%の伸びで、公費投入の影響で1人当たり医療給付の伸び(2.0%)よりも低く抑えられた。現年度分の保険料収納率は、0.4ポイント上昇し92.85%となった。介護分を除いた医療給付分に相当する保険料は、2兆4526億円だった。

収入の主要を占める前期高齢者交付金は、同3.1%減の3兆6403億円を計上した。被用者保険からの拠出金を原資とする療養給付費等交付金は、退職被保険者等の減少により同66.1%減の624億円だった。国庫支出金は同2.8%増の3兆4534億円、都道府県支出金は1.7%減の1兆1157億円だった。

一方、支出額は合計24兆2164億円(同60.1%増)。被保険者数の減少を背景に保険給付費は、同2.3%減の8兆7966億円となった。1人当たり保険給付費は同2.0%増の30万9854円となっている。

後期高齢者支援金は同3.9%減の1兆5954億円、介護納付金は同9.2%減の5757億円とそれぞれ減少した。

収支総額から基金繰入金や繰越金、基金積立金や前年度繰上充用金などを除いた単年度収支差引額は、同44.3%減の1284億円の黒字を計上。ここから国庫支出金を清算し、決算補てんなどのための法定外一般会計繰入金を除いた実質的な収支は、前年度の450億円の赤字から664億円改善し、215億円の黒字となった。

単年度収支差(市町村、都道府県それぞれの国保特会を合算)でみた保険者の財政状況は、43府県で黒字、4道都府県(北海道、東京、埼玉、京都)で赤字だった。

法定外一般会計繰入 629億円減少

市町村の収入のうち、法定外の一般会計繰入金は1910億円で、同24.8%、629億円減少した。内訳は、決算補てん等目的分が前年度から494億円減の1258億円、それ以外の目的分が653億円となっている。

計画的に削減・解消すべき対象とされる決算補てん等目的分は、▽保険料の負担緩和1045億円(前年度比319億円減)▽公債費、借入金利息100億円(同41億円増)▽累積赤字補てん57億円(同99億円減)▽保険料の収納不足49億円(同73億円減)─などとなっている。

子ども医療費などへの独自助成や災害などによる保険料減免など削減・解消の対象といえない決算補てん等目的以外では、地方単独事業の医療給付費波及増に251億円、保健事業に187億、保険料減免に84億円などを充てた。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年