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健保ニュース 2020年7月下旬号

骨太2020などを閣議決定
毎年薬価 調査は実施、改定は十分検討
政府方針踏まえ中医協で議論へ

政府は17日の臨時閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針2020)」をはじめ、「成長戦略実行計画」、「規制改革実施計画」など今後の政権運営の指針とする関連計画を決定した。「骨太方針2020」は、焦点となっていた毎年薬価調査・改定の取り扱いについて、「本年の薬価調査を踏まえて行う2021年度の薬価改定は、新型コロナウイルスの影響も勘案し、十分に検討」と明記。政府方針の決定を受け、中央社会保険医療協議会に検討の場を移し、薬価調査の実施内容などにかかる議論を再開する。このほか、社会保障施策項目などについて年内に実行計画を策定するとともに、経済・財政一体改革の推進に向け年末までに改めて工程の具体化を図ることとした。「成長戦略実行計画」は、次期診療報酬改定に向けて、オンライン診療の拡大を検討する。「規制改革実施計画」は、社会保険診療報酬支払基金改革の強化やスイッチOTC化の促進に取り組む。

「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針2020)」は、ポストコロナ時代の「新たな日常」の早期実現に向けたデジタル化の加速や社会保障の構築に関する主な施策項目について、年内に実行計画を策定することを盛り込んだ。

これと並行し、2022年から団塊の世代が75歳になり始めることを踏まえ、「骨太方針2018・2019」にもとづき2020年末までに改めて工程の具体化を図り、経済財政一体改革を推進することとした。

「医療における現役並み所得の判定基準の見直し」や「薬剤自己負担の引上げ」などの医療保険制度の給付と負担のあり方については、「骨太方針2020」で取りまとめることとされていたが、新型コロナウイルス感染症の影響により関係審議会等の検討が進まなかったため先延ばしされた格好となった。

デジタル化の加速は、オンラインと電話による診療・服薬指導について、利用者を含めた関係者の意見を踏まえ検証を進めていくこととし、電子処方箋、オンライン服薬指導、薬剤配送によって、診療から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築するとした。

社会保障の構築は、骨太方針2018等の内容に沿い2022年までに基盤強化を着実に進め、国民皆保険の次世代への継承をめざす方針を明示。具体的な施策は、「保険者のデータヘルス計画の標準化等の取組推進」や「2022年夏を目途とした電子処方箋の運用開始」、「一般用医薬品の普及によるセルフメディケーションの推進」などを盛り込んだ。

8日の経済財政諮問会議で提示された「骨太方針2020原案」に明記されなかった「毎年薬価調査・改定」の取り扱いについては、与党との調整の結果、「本年の薬価調査を踏まえて行う2021年度の薬価改定は、骨太方針2018等の内容に新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して十分に検討し決定する」と追記された。

令和2年度薬価調査の実施内容などを決定する中央社会保険医療協議会では、調査自体の実施の可否が論点となり、議論の膠着状態が続いていたが、政府の対応が明確化されたことで、検討の場を中医協に移行し、薬価調査の実施内容や薬価改定の対象範囲などについて議論を進めていくこととなる。

このほか、令和3年度予算については、概算要求の仕組みや手続きをできる限り簡素化したうえで、感染症拡大の動向とその経済・国民生活への影響を見極めつつ、「令和3年度予算編成の基本方針」で示した方向性にもとづき対応するとした。

安倍晋三首相は、17日に開催した経済財政諮問会議で、「世界で新型コロナウイルスが流行する歴史的な危機に直面するなか、思い切った社会変革を果敢に実行することで自ら未来を切り拓いていく、強い意志を持った未来志向の骨太方針としている」と言及し、国民と力を合わせこの困難を乗り越え、未来を見据えて進んでいくためにも骨太方針2020を着実に実行していくとの意欲を示した。

成長戦略実行計画
オンライン診療の拡大を検討

成長戦略実行計画は、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた対応の一環として、感染リスクから患者や医療従事者を守る観点で、オンライン診療の積極的な活用を盛り込んだ。健康相談など非対面・遠隔サービスの充実も図ることとした。

成長戦略の細目を織り込んだフォローアップでは、令和4年度の次期診療報酬改定に向けて、平成30年度に新設したオンライン診療料の普及状況を調査・検証し、安全性・有効性が確認された疾患について、オンライン診療料の対象に追加することを検討すると明記。

さらに、オンライン診療の実施方法や実施体制の要件についても、オンライン初診などの時限的措置の検証結果にもとづき、普及・促進に向けて必要な見直しを行うこととした。

規制改革実施計画
支払基金改革やOTC薬を促進

規制改革実施計画には、医療・介護分野の重点事項として、▽持続可能な社会保障制度の整備▽健康づくり・高水準の医療サービスの創出─の観点から、「社会保険診療報酬支払基金に関する見直し」や「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大」などを盛り込み、具体的な取り組みを措置するよう厚生労働省に求めた。

支払基金の見直しは、令和3年9月の審査支払新システムの稼働や現行支部の4年度以降の業務・組織の集約化などの改革を実現するための取り組みを促進する。

審査支払新システムの稼働に向けては、コンピュータチェック9割完結を可能とする振分機能の設計・実運用化や、コンピュータチェックに適したレセプト形式の見直し、審査支払事務手数料の階層化などにかかる具体的な進捗状況と対応・工程を、今年度中に明示する方針を示した。

また、現行支部の業務・組織の集約化は、10年後の廃止が予定される4か所の審査事務センター分室について、「業務効率化の状況を踏まえながら、その廃止を検討するとともに、その後においても、業務・体制等を継続的に見直す」こととした。

一般用医薬品選択肢の拡大は、セルフメディケーションの促進策を検討するための厚労省内の部局横断的な体制構築や経済性の観点も含めたスイッチOTCの推進策、スイッチOTCの促進目標などについて今年度中に検討する。

さらに、医師が大多数を占めている「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」のメンバー構成について、リスクだけでなく必要性も討議できるよう、消費者代表を追加するなどの見直しを今年度中に措置する。

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