HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2020年6月下旬号

健保ニュース

健保ニュース 2020年6月下旬号

2年度薬価調査の実施計画案
議論は平行線で膠着状態
中医協の決定は7月に延期も

厚生労働省は、令和2年度医薬品価格調査(薬価調査)の実施計画をまとめ、17日に開催した中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会に提案した。

医療現場の負担に配慮する観点から、販売側調査の抽出率設定や購入側調査の客体数縮小の見直しを提案した2年度薬価調査の実施計画に対し、支払側は実施計画案の是非について早急に議論を進めることを求める反面、診療側は調査の方法は実施が決定してから議論するのが筋であるとの観点から、検討の進め方自体に反対。支払側と診療側の主張は平行線を辿り、議論の膠着状態が続いた。

2年度薬価調査の実施の可否は、政府が7月に策定予定の「骨太方針2020」で明示されることが見込まれるが、中医協では政府の判断に先行し、6月中に調査の実施方法について了承を得ることをめざして議論を進めてきた。

中医協としての議論の着地点が見出せない状態が続くなか、厚労省は最終的な中医協の判断を7月に延期することも含めて検討するとの意向を示しており、政府方針との前後関係から、中医協に提案するタイミングが議論の決定プロセスに影響を与えることが想定される。

2年度薬価調査の実施については、5月27日と6月10日の薬価専門部会での指摘を踏まえ、厚労省が、「今後の新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえた医薬品流通の実情等を注意深く見つつ、薬価調査の実施の可否について引き続き検討する」としたうえで、調査実施に必要な期間を考慮し、調査内容について事務的な準備は進めることとした。

購入側調査については、医療機関や保険薬局における現場の負担に配慮する観点から、令和元年度薬価調査の半分の規模となる病院210客体程度、診療所260客体程度、保険薬局500客体程度とすることを提案。

全ての医薬品卸から対象を抽出することとしている販売側調査については、医薬品卸の負担軽減を図りつつ、一定の調査精度を確保できるよう、全数調査と比較したシミュレーションを行ったうえで、2/3(67%)の抽出率を設定した。

抽出率を設定した場合、全数調査との誤差が一定程度生じることから、過去の薬価調査を参考に様々な角度から調査結果を確認し、必要に応じて個別精査するなどの対応を合わせて行うこととした。

このほか、地域医療機能推進機構(JCHO)が発注した医薬品入札にかかる談合疑い事案の対象となっている卸業者とJCHOとの間の取引分は、今回の調査対象から除外する。

診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「2年度薬価調査の内容は、調査の実施が決まってから議論するのが筋である」と述べたうえで、「現時点で薬価調査の具体的な実施方法について議論するのは理解できない」と主張し、検討の進め方について明確に反対。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に医療現場全体で最大限取り組んでいる現状において、薬価調査に伴う事務作業の負担を医療現場に強いるべきではないとの観点から薬価調査の実施を見送るべきとの考えを示した。

今村聡委員(日本医師会副会長)は、国民の負担を軽減するために毎年薬価改定を実施するという趣旨に理解を示す一方、新型コロナウイルス感染症に伴い医療機関が厳しい経営状況に陥っているなか、薬価改定の実施が医療現場に与える影響を想定してから薬価調査の実施にかかる提案を行うべきと指摘した。

健保連の幸野庄司理事は、「現況下で6月末までにどのような形であれば薬価調査を実施できるかを決めるのが中医協の役割である」との認識を示し、厚労省が今回提案した2年度薬価調査の実施計画の是非について早急に議論を進めるべきと強調。

2年度薬価調査は必要最低限の内容で実施することを決めたうえで、調査結果が正確性の欠けるデータとなった場合は3年度薬価改定を行わない選択肢もあると主張し、この段階で中医協が薬価調査を実施しないとの判断を決めるのは妥当でないとの見解を示した。

今後のスケジュールについて厚労省は、9月に2年度薬価調査を実施する場合、6月中に中医協で調査の実施方法等にかかる方針を決める必要があると改めて説明。そのうえで、議論の状況を踏まえつつ、最終的な中医協の判断を7月に延期することも含め、次回の中医協に提案するタイミングを検討したいとの意向を示した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年