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健保ニュース 2020年5月下旬号

柔道整復療養費を適正化
健保連 支払方法を保険者裁量に
償還払い選択で不正対策を強化

健保連は受領委任制度で運用している柔道整復療養費の支払方法について、保険者裁量により法令にもとづく償還払いの選択を認めていく方針を、4月22日に開催された社会保障審議会医療保険部会の柔道整復療養費検討専門委員会(遠藤久夫座長)で表明した。保険者と行政、施術団体による受領委任契約の信頼基盤が崩れていることに加え、不正対策の議論が先延ばしされ改善が見通せないことが背景にあり、専門委員会の委員を務める健保連の幸野庄司理事は、柔整療養費の支払方法について償還払いへの変更を希望する健保組合が現れた場合、健保連として容認し、必要な手続きを行っていくことを関係者に通告した。公的保険の財政が厳しさを増すなか、「柔整療養費の不正をこれ以上放置することはできない」と問題提起し、保険者が自らの機能を発揮し不正対策を強化していくとの決意を示した。

療養費については、法令上加入者が保険者に請求して支給を受ける「償還払い」が原則だが、例外的に、柔道整復療養費は柔道整復師が公的保険の加入者から受領の委任を受け、加入者に代わって保険者に請求する「受領委任払い」が運用されている。

受領委任制度は、行政、保険者、施術者が協定・契約を締結して執り行われている仕組みであり、いわば、三者による信頼関係が大前提となる。これに対し、昨年12月、協定を締結している施術団体から、保険者に対して一方的にルールを押し付ける文書や、行政に対して誤ったルールを認めさせることを強要する文書が発出される等の背信行為が行われ、信頼関係は踏みにじられた。

また、受領委任制度は、行政が指導監査を実施できることにメリットがあるが、現状は指導監査が実態として機能していないばかりか、昨年末には受領委任制度を悪用した請求団体による大規模な不正も発覚した。

柔整療養費の不正対策については、平成28年以降、社会保障審議会医療保険部会の柔道整復療養費検討専門委員会で検討が行われてきたが、健保連が主張する「施術ごとに患者が内容を確認して署名する仕組み」や「負傷原因を1部位目から記載」などの重要課題は施術者側の反対で議論は空転し、対策は先延ばしされている。

健保連が実施した健保組合の療養費に関するアンケート調査では、柔整療養費における受領委任制度の不正対策の強化を求める声が大きく、保険者の裁量により支払方法の選択が認められた場合、約半数の健保組合が償還払いを希望していることが明らかになっていた。

こういった現状を踏まえ、健保連の幸野理事は、4月22日に開催された柔道整復療養費検討専門委員会において、「既に受領委任制度における三者協定・契約の信頼基盤は崩壊し、今後も不正対策は改善する見通しは見出せない」と強く指摘。

公的保険財政が厳しい状況のなか、「柔整療養費の不正をこれ以上放置することはできず、保険者は自らの機能で対策を強化していくしかない」と語気を強め、あはき療養費で採用している「保険者裁量」の仕組みを基に柔整療養費において償還払いの選択を進めていく考えを示した。

被保険者、事業主で構成される組合会の審議の決議を経て受領委任協定・契約の委任を解除して償還払いへの変更を希望する健保組合が現れた場合、健保連として容認し、必要な手続きを行っていく方針を表明。公の委員会の場において厚生労働省や施術者側へ事前に通告した。

幸野理事は、2月28日に開催された専門委員会においても、柔整療養費の支払方法について保険者裁量の導入を検討課題とするよう要望。療養費適正化対策の議論が遅々として進まない現状を憂い、保険者裁量による償還払いの選択に向けて一歩踏み込んだ主張を展開した。

この発言に対し、厚生労働省保険局医療課の樋口俊宏保険医療企画調査室長は、患者が怪我をした時に安心して治療を受けられるよう受領委任制度を採用してきた長年の経緯に言及。

保険者の裁量で受領委任払いから償還払いに戻した場合、患者に生じる費用負担の面から問題があると指摘し、こういった点を説明したうえで保険者と意思疎通を図っていく考えを示した。

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