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健保ニュース 2020年4月上旬号

保険者の健診・保健指導検討会
第4期のあり方を議論
リスクに応じた適切な対応が課題

厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」(座長・多田羅浩三日本公衆衛生協会名誉会長)は3月23日、第4期に向けた特定健診・保健指導のあり方について議論した。特定健診で把握されたリスクに応じた対象者ごとの適切なアプローチや、無関心層・保健指導対象外の加入者に対するアプローチを課題とした。

厚生労働省は、この日の会合に、特定健診・特定保健指導にかかる効果検証等の検討状況や第3期から導入した特定保健指導の「モデル実施」に関する対応について報告した。 特定健診等の効果検証等については、同検討会の下に設置した「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ」で、▽検査値の改善効果および行動変容への影響▽医療費適正化効果▽その他の効果─などの検証作業を行った。

このなかで、検査値等への影響については、特定保健指導に参加した者は、多くの項目で保健指導後の検査値に改善が認められた。一方、過去に保健指導に参加した者の数値の変化が小さかったこともわかった。

禁煙に対する効果では、特定保健指導に参加した者は、参加しなかった者に比べ約1.2倍禁煙につながり、とくに初めて保健指導に参加した者については、非参加者と比べ約1.3倍禁煙につながるなど高い効果がみられた。

生活習慣病発生予防への影響をみると、平成25年度の特定保健指導対象者のうち、血圧・血糖・脂質の検査値がすべて受診勧奨判定値未満である者において、26年度の特定健診で血圧、血糖、脂質を下げる薬の服薬開始もしくは受診勧奨値以上になるリスクは、特定保健指導参加群のほうが非参加群に比べ1~3割程度少なかった。

また、厚労省は、第3期特定健診等実施計画期間(平成30~令和5年度)から、保険者による特定保健指導の積極的支援を実施するに当たり、保険者の実施量による評価に代えて、保健指導による腹囲・体重の改善状況による評価を可能とする「モデル実施」の導入状況も説明した。

従前の積極的支援の運用は、支援の投入量に応じてポイントを付与し、3か月間の介入量180ポイントを評価していたが、モデル実施では、支援のポイントではなく、3か月間の介入の成果として、「腹囲2㎝以上、体重2㎏以上の改善」を評価した。

モデル実施計画書を提出した保険者数は、平成30年度は215の健保組合を含む228保険者、令和元年度(速報値)は193の健保組合を含む205保険者だった。

平成30年度のモデル実施に関する保険者へのヒアリング調査結果をみると、対象者関連では、「数値目標の明確化により納得感が得られた」「リピーターの特定保健指導につながった」、保険者関連では、「事務負担の軽減や経費削減、特定保健指導の実施率向上につながった」などメリットをあげる回答があった。

一方、モデル実施の課題としては、通常の積極的支援と平行して取り組むことによる進捗管理の難しさや参加者が集まらないこと、委託事業者との連携があがったほか、検査値は改善しているが指標の達成とはならないケースがあることや想定より達成が困難であるとの回答があった。

今村聡委員(日本医師会副会長)は、特定健診・特定保健指導の効果について、「経年的に、どの程度効果が持続していくのか。初めて保健指導を受けた方に比べると、以前に保健指導を受けた方の効果が弱い。対象者に応じて適切に実施していくことが大事で、ただ繰り返しやっていけばいいわけではない」と発言した。

津下一代委員(あいち健康の森健康科学総合センター・センター長)は、「経年的にみると、2、3年は有意差があるが、それ以降は有意差が縮まってくる傾向がある」と述べ、「(事業の)効率性を勘案すると、毎年すべての対象者に実施するのではなく、戦略的にこれまで保健指導を受けていない方に注力し、すでに受けていた方に対しては簡略な説明、フォローアップを行い、3年後に改めて保健指導をしっかりやるなど、メリハリのある事業の可能性を考えていくことも必要ではないか」との考えを示した。

また、健保連の河本滋史常務理事は、モデル実施について、「健保連でも効果検証事業を行っており、一定の効果が出ている。現在論文化を進めており、完成の折には発表する機会をいただきたい」と述べた。

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