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健保ニュース 2020年4月上旬号

医療保険部会が傷病手当金など改革論議
佐野副会長
資格喪失後は雇用保険で給付
精神疾患は判断基準が必要

社会保障審議会医療保険部会(部会長・遠藤久夫国立社会保障・人口問題研究所所長)は3月26日、医療保険制度改革に向けて、傷病手当金や任意継続被保険者制度などのあり方について議論した。健保連の佐野雅宏副会長は、傷病手当金の見直しに向けて、資格喪失後の継続給付と支給件数の多い精神疾患関係の取り扱いを主要論点に位置づけ、資格喪失後の支給は雇用保険で給付すべきと従来からの主張を展開した。精神疾患関係は、本当に労務不能であるのか判断に悩む事例が多いと問題視し、適正化するとともに、支給適否の判断基準などを検討するよう求めた。支給期間については、就業支援を重視し、共済組合の仕組みにあわせて、支給された日数を通算して最大1年6か月とすることに理解を示した。これに賛同する意見が目立ち、異論は出なかった。また、佐野副会長は、任継制度の廃止か見直しの必要性を改めて強く訴えた。

政府が昨年末にまとめた全世代型社会保障検討会議の中間報告や改革工程表2019などを踏まえ、今年に入って再開した同部会での論議はこれで一巡し、今後、制度改革に向けた論点を絞るなどしてさらに深めていく。

傷病手当金は、労務不能となった日から起算して4日目から支給される。支給期間は同一疾病・負傷に関して支給を始めた日から1年6か月とするが、カウントの仕方が同じ被用者保険でも健保法と共済各法で異なる。健保組合など健康保険は、支給開始日から1年6か月を期間とし、その間に復職して不支給の期間となる出勤日も1年6か月に算入される。共済組合は、支給開始後に途中で復職して出勤した期間を1年6か月に算入せず、支給された日数を通算してカウントする。

傷病手当金の支給件数は平成29年度で190万件(健保組合70万件、協会けんぽ110万件、共済組合10万件)。支給金額は3600億円(健保組合1500億円、協会けんぽ1900億円、共済組合200億円)。

協会けんぽにおける傷病手当金の平成30年度疾病別構成割合では、精神及び行動の障害が全体の約3割で最も多く、次いで新生物の約2割と上位2疾患で約5割を占める。平均支給期間は164日で、精神疾患は212日、新生物は180日となっている。資格喪失者に対する継続給付の件数は全体の約2割で、このうち精神及び行動の障害が半数を占める。

こうした現状下で、政府の「働き方改革実行計画」(平成29年3月)や第3期がん対策推進基本計画(平成30年3月閣議決定)では仕事と治療の両立支援に向けて、傷病手当金の支給要件等を検討・措置するとされ、健康保険と共済組合で異なる支給期間の算出の仕方が主要論点となっている。

佐野副会長は、「労働力を回復するまでの生活の支えとして傷病手当金制度がある。そういう意味では、がん治療のために柔軟に利用したいという趣旨は理解できるし、支給期間の取り扱いを共済組合にあわせるのは理解できる」と述べ、健康保険も通算して最大1年6か月まで支給する仕組みに見直す方向を支持した。

一方、協会けんぽのデータにおける精神及び行動の障害の支給件数の多さに注目するとともに、健保連が過去に行った調査で、精神及び行動の障害は支給件数約3割・支給金額約6割で、継続給付分では支給額の約7割を占める実態を報告。そのうえで、見直しの論点として、「資格喪失後の継続給付の問題と精神疾患関係の取り扱いの2点を取り上げてほしい」と要求した。

資格喪失後の支給は、「職場復帰を前提とする傷病手当金ではなく、求職の意思表示が必要となる雇用保険から給付すべき」と提起。精神疾患関係の問題について、「本当に労務不能であるのかという点について判断に悩む事例が多く、健保組合としても支給決定に相当苦慮している。さらに資格喪失後となると、労務不能かどうかを含めて保険者で把握することが極めて困難である。実態把握をしたうえで、支給の適正化を図ること。また、保険者としての調査方法や判断基準についても検討してほしい」と述べた。

参考人として出席した日本経済団体連合会の井上隆常務理事も支給期間を通算して1年6か月とすることに賛同した。安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も支持する考えを示したうえで、「支給要件などを改正する際には、不正防止の観点も含めて明確な要件設定が必要となる」と述べ、不正防止対策の必要性も強調した。

厚生労働省保険局の姫野泰啓保険課長は、支給期間のカウントを共済組合方式に合わせて通算とする場合、不支給の期間も含めて「健保組合が給付管理をすることになるので、そこは実務的にどうすべきなのかが、ひとつの論点となる」との認識を示した。

佐野副会長
任継制度は廃止か見直し
「本来の役割失われている」

企業退職後も最長2年間、退職前の健保に加入できる任意継続被保険者制度をめぐる議論では、佐野副会長が「もともとは退職から再就職までのつなぎの制度であったと認識している。退職後の給付率に差があった時代は、再就職までの間の給付率の低下を防ぐ目的があった。しかし、平成15年4月から被用者保険と国保の窓口負担が3割に統一されてから、本来の役割は失われている」と指摘した。

こうした観点から、任継制度の廃止か見直しを求め、廃止できない場合は、現行2か月の勤務期間で加入できる要件を共済組合にあわせて、勤務期間を1年以上に統合すべきと主張。現行2年の被保険者期間については、厚労省が提示した任継制度加入期間の資料で、60歳未満の約8割が1年以内であるデータを引き合いに、「再就職につながっていると考えられるので、加入期間は1年に短縮してもいい」と述べた。

任継被保険者の保険料は、現在は退職時の標準報酬月額と全被保険者の平均標準報酬月額のうち、いずれか低い方の額を基準に算定されるが、「退職時の標準報酬月額をもとに算定するよう見直す」ことを主張。これにより、「国保に移った場合の保険料の激変を緩和することにもなる」との考えを示した。

藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、「国保の保険料算定は前年度所得をベースとしており、退職前後の急激な所得差を考えると、保険料負担の急増を軽減するなんらかの措置は必要である」と指摘したうえで、「ただし、最長2年の被保険者期間は可能な限り短縮すべきであり、加入要件である2か月以上の勤務期間は長くすべきである」と見直しの必要性を訴えた。安藤委員は、「今は国保移行への激変緩和が任継制度の実質的な意義となっており、本来の制度の意義が失われた以上、廃止の方向で議論するのが自然な流れである」との基本認識を示した。

石上千博委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「精神疾患の問題や解雇、雇い止めなどやむを得ず退職に至った人に切れ目のない医療アクセスを保障するセーフティネットは非常に重要だ。有期や派遣労働者など比較的弱い立場の人へしわ寄せとなる見直しは回避すべき」などと述べ、慎重な検討を求めた。

このほか、新経済・財政再生計画改革工程表2019に検討課題として掲げられている、▽高齢者医療制度などで資産の保有状況も加味した負担のあり方▽新規医薬品や医療技術の保険収載等に際して、費用対効果や財政影響などの経済性考慮や保険外併用療養の活用─などを議論した。

高齢者医療の負担資産も加味して評価

佐野副会長は、資産の保有状況を考慮した負担のあり方について、「年齢ではなく負担能力に応じた負担を考えていくためには、課税所得のみならず、金融資産や非課税年金の評価も含めて所得区分の設定を検討する必要がある」と指摘し、後期高齢者の自己負担についても資産の保有状況などを踏まえて検討すべきとした。

医薬品等の費用対効果評価の保険収載時の活用も含めた実施範囲・規模の拡大については、厚労省の提案を踏まえ、これまでと同様に中央社会保険医療協議会で検討を継続することで一致した。

佐野副会長は、「新規医薬品、医療技術の保険収載の可否などに費用対効果評価結果を活用することについて中医協で検討すべきである」と述べたうえで、高額薬剤の取り扱いも含めて今後の費用対効果評価のあり方について、医療保険部会でも議論する必要性を主張した。

予防・健康づくり対策も議論した。このなかで、佐野副会長は、「新型コロナウイルスの影響によって、特定健診・保健指導など保健事業に大きな支障が生じており、事業主との連携や加入者への働きかけができない状況が発生している。各種インセンティブの取り組みの評価などについては、こうした事情を配慮してほしい」と述べた。

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