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健保ニュース 2020年3月下旬号

大病院受診時の定額負担を医療保険部会が議論
一般200床以上を基準に検討開始
佐野副会長「議論を限定すべきでない」

厚生労働省は12日の社会保障審議会医療保険部会(部会長・遠藤久夫国立社会保障・人口問題研究所長)で、紹介状のない患者から定額負担を徴収しなければならない病院の範囲拡大について、一般病床200床以上を基準に検討する考えを示した。政府の全世代型社会保障検討会議は昨年末の中間報告で、「病床数200床以上の一般病院に拡大する」としたが、法律上で一般病院が定義されていないため、任意に徴収できる基準が一般病床200床以上となっているのを参考にした。これに対し健保連の佐野雅宏副会長は、「最初から一般病床に議論を限定するべきでない」と主張し、厚労省の統計で精神科病院以外が一般病院として扱われていることなどを踏まえ、許可病床数200床以上の一般病院で区分したデータを検討の材料として提出するよう求めた。

受診時の定額負担は、かかりつけ医に患者を向かわせて大病院への患者集中を緩和するために、平成28年度から導入された。

初診の患者と逆紹介したにもかかわらず再診した患者が、やむを得ない事情がなく紹介状を持っていなかった場合に選定療養として特別料金を徴収する仕組みで、義務的に徴収する場合には初診時5000円、再診時2500円の最低額が設定されている。

厚労省が29年度医療施設調査などから集計したところ、現行の義務対象は、特定機能病院の全86施設と地域医療支援病院のうち許可病床400床以上の347施設を合わせた433施設で、全病院の約5%を占める。このうち地域医療支援病院の基準を令和2年度診療報酬改定で一般病床200床以上に引き下げるため、4月からは義務対象が233施設増の666施設で、全病院の約8%になる。

全世代型社会保障検討会議の中間報告は、対象病院を拡大するとともに、負担額を引き上げ、増額分を公的医療保険制度の負担軽減に充てる方針を示しており、今後、地域医療支援病院以外の一般病床200床以上病院まで徴収義務を課した場合、厚労省によると、義務対象はさらに688施設増加し、全病院の約16%に相当する1354施設まで拡大する見込み。

佐野副会長は中間報告に賛成を表明し、義務対象をなるべく広範囲にするべきとの認識を示した。そのうえで、「基本的な考え方としては、大病院は入院と専門外来を中心とし、かかりつけ医が患者の受診行動を適正化するゲートキーパー的な機能を担う方向に進めてほしい。そのなかで、自らの選択で大病院を受診する患者には特別な負担をお願いするということではないか」と述べた。さらに、「受診行動の適正化、病院・診療所の機能分化という観点から、かかりつけ医の普及のためには、かかりつけ医に期待される機能を明確化し、国民と医療提供者に定義を示す必要がある」とし、「かかりつけ医機能の強化に向けて、スピード感が必要なので、具体的な方策、道筋をぜひ示してほしい」と厚労省に要望した。

安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「医療部会で外来機能とかかりつけ医機能の明確化を図ったうえで、外来の機能分化をさらに進め、大病院の負担軽減や医師の勤務環境改善が実現できる水準となるよう、過去の議論にとらわれることなく検討してもらいたい」と述べた。

藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、「かかりつけ医が身近で見つからないと、多少のお金を余分に払っても大病院に行こうとする患者の受診行動は変わらない。広く初診に応じることができ、適切な病院を紹介できる診療所の整備とアクセスの周知に取り組むべき」と指摘した。

石上千博委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「医師の偏在対策が適切に実施されないと、患者の医療機関へのアクセスを制限することにつながるのではないかという危惧を持っている」とし、「偏在対策のあるべき姿を定めて、基準を満たさない地域では定額負担の拡大を猶予するなどの個別対策が必要。診療科がないところで大病院へ行かざるを得ない地域もあり、定額負担を求めなくても良い現状の制度を維持してもらいたい」と要望した。

原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)は、「医療機能の分化と連携を進めるとか、医療従事者の働き方改革を進める観点からは、いわゆる一般病院について範囲を拡大することはやむを得ないが、地域医療への影響を考えると、病床数で一律で線を引くのはいかがなものか」と指摘した。「特定機能病院や地域医療支援病院はそもそも目的や機能が法律上で明確になっているので、線を引くのに合理性があるが、いわゆる一般病院は地域によって果たす機能が違うので、地域の実情に応じて考える必要がある」と慎重姿勢を示し、ケアミックスなどの地域密着型の病院を対象外とするか、手上げ方式にするといった対応を求めた。

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