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健保ニュース 2020年2月中旬号

中医協が令和2年度診療報酬改定案を答申
医療機能の分化・強化、連携を促進
医療従事者の働き方改革も支援

中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)は7日、令和2年度診療報酬改定案を加藤勝信厚生労働相に答申した。入院医療では、とくに手厚い看護配置の急性期病棟で重篤な患者を従来より多く受け入れるよう、基準を引き上げる。外来医療では、紹介状のない患者から定額負担を徴収しなければならない地域医療支援病院の範囲を許可病床400床以上から一般病床200床以上へ広げるほか、中小病院や診療所を対象とする「機能強化加算」について、かかりつけ医に関する国民の理解を深めるために、患者が持ち帰れる解説文書の配布を要件化する。救急搬送の多い病院向けに特例的な改定財源を使って「地域医療体制確保加算」を新設するなど、医療従事者の働き方改革も支援する。3月上旬に告示する。

かかりつけ医機能の普及
加算見直しで「半歩前進」

この日の中医協は、改定の内容と附帯意見を最終確認し、田辺会長から小島敏文政務官に答申書を手渡した。

健保連の幸野庄司理事は支払側を代表し、今回改定の全体を「医療機能の分化・強化、連携が一歩前進した」と総括した。

入院医療をめぐっては、一般病棟で患者の状態を測る指標(重症度、医療・看護必要度)について、評価項目や判定基準が急性期に相応しいものへと修正され、とくに報酬水準の高い急性期一般入院料1に関して、該当患者割合の基準値が厳格化されるため、「さらなる医療機能の分化・強化、連携の推進に資する見直しの第一歩であり、評価したい」との認識を示した。

外来医療では、定額負担を徴収する病院の対象範囲拡大を「外来医療における医療機関の役割分担を図る見直し」と歓迎した。一方、機能強化加算については、「かかりつけ医機能の普及に向け、半歩前進した対応だと考える」と、一定の成果と踏み込み不足をにじませ、「各都道府県の医療機能情報提供制度(かかりつけ医に関する項目)の整備や、個々の医療機関が自らの言葉で患者の視点に立ったわかりやすい文書を作成するように求めたい」と述べた。

医療従事者の働き方改革に関しては、地域医療構想や医師偏在対策との「三位一体改革」の進捗状況を踏まえながら、新設する加算について、対象となる病院に作成を義務づける勤務医負担軽減・処遇改善計画にもとづき、「アウトカム評価の導入も含め、評価のあり方を検討していく必要がある」と主張した。

今後の課題にも言及した。団塊の世代が後期高齢者に入り始める令和4年度以降、「医療保険制度は危機的状況を迎えることが想定される」と懸念を示し、「中医協の共通理念として、国民皆保険制度の堅持を最大の目的とすることが必要」と指摘した。そのうえで、令和4年度改定に向けて、積み残した項目の調査や今回改定の検証を適切に行い、「エビデンスを踏まえ、医療機能の分化・強化、連携のさらなる推進や、効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上などを中心に引き続き検討することが重要」と強調した。

大病院は急性期に注力
「鮮明なかたちで線引き」

診療側は、松本吉郎委員(日本医師会常任理事)が代表して見解を述べた。
 まず、今回改定の大きな柱として働き方改革への対応を取り上げ、「厳しい財政状況のなかで(特例枠の)診療報酬プラス0.08%に当たる公費約126億円に加え、総合確保基金として公費約143億円が措置された。民間医療機関を含めて地域医療で特別な役割のある医療機関に対して確実に財政支援が行われるよう、しっかり対応してもらいたい」と厚労省に要望した。さらに、「医療従事者の負担軽減、働き方改革については今後も引き続き対応していくべき」と主張した。

病院の機能分化に向けては、急性期一般入院料を見直すほか、特定機能病院による回復期リハビリテーション入院料の届出と、許可病床400床以上の大病院による地域包括ケア病棟入院料の届出を認めないようにすることにより、「鮮明なかたちで線が引かれ、大病院は急性期医療にしっかり対応してもらうというメッセージが明確に打ち出されたと理解している」の認識を示した。

外来医療の機能分化については、紹介状なし受診時の定額負担の対象を広げるとともに、地域包括診療加算の要件緩和や小児かかりつけ診療料の対象年齢の拡大など、かかりつけ医機能の評価を充実することに着目し、「地域包括ケアシステムを進展させていくためには、機能分化・連携が不可欠であり、こうしたメッセージが医療現場に浸透し、着実に機能していくことを期待している」とした。

田辺会長が締め括り発言
改定の要点を4点に集約

田辺会長はすべての審議を終えた後、「委員各位の精力的な議論の結果として、現在さらに将来に向けて医療を取り巻く多くの重要課題に的確に対応するものになったのではと考えている」とし、4つの観点から今回改定のポイントを整理した。

第1は、医師などの働き方改革について、「診療報酬においてもこれを下支えするような評価を進めた」と述べた。救急医療体制に対する手当てを充実するほか、医療従事者の勤務環境を向上させるための要件緩和を実施する。

第2として、かかりつけ機能と多職種連携を強化するための対応を重視し、「人々が生活を営む地域において適切な治療を受けることができ、関係機関の連携を進めることによって身近で手厚い医療の実践に資するような評価となったと感じている」と述べた。診療情報提供料について、紹介先の医療機関がかかりつけ医などに診療状況を文書で戻した場合に算定できる区分を導入するほか、医療的ケア児に関わる学校医との連携や、精神科領域の共同対応を促す。

第3は、「急速な医療技術のイノベーションを診療報酬体系のなかに適切に位置づけた」とした。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の再発を抑制する治療や遺伝子パネル検査に対応した評価体系に見直すことを踏まえ、今後も従来と異なる技術が登場することを見通し、「適切な対応を図る際の導きになればと思う」と述べた。

第4には、急性期一般入院料の基準見直しをあげ、「支払側と診療側で意見の隔たりが大きく、結果として公益委員の裁定案を提示するかたちになったが、地域医療構想に寄り添うとともに、より安定的な運用を可能とするものとなったと考えている」と振り返った。

最後に、「支払側、診療側の双方においては、国民の視点に立って医療保険制度を維持しつつ、必要かつ適切な医療を確保することに、より一層努めていただくとともに、今回改定の効果の検証や残された課題の解決に向けた検討について、引き続き協力をお願いする」と締めくくった。

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