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健保ニュース 2020年2月上旬号

中医協の短冊議論が実質的に終局
急性期入院料を公益裁定
上位区分の重篤割合基準を厳格化

中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)は令和2年度診療報酬改定に向け、具体的な内容を記した〝短冊〟と呼ばれる資料にもとづき、報酬点数を除く個別改定項目の実質的な議論を1月31日までに終えた。

最大の焦点だった急性期一般入院基本料をめぐっては、診療実績に応じた段階的な評価の基準となる「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合について、支払側と診療側の溝が埋まらず、1月29日の会合で議論を一時中断して公益委員が裁定案をまとめた。これを両側とも了承し、報酬が高い入院料区分の基準値を引き上げることになった。

一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」は、医療資源や看護業務の投入量が多い患者を選別する指標だ。モニタリングや専門的な処置の有無などのA項目、患者の行動や介助レベルなどのB項目、侵襲性の高い手術や内視鏡治療などのC項目の3つで構成し、現行は各得点の組合せによる判定基準①~④のいずれかに該当すれば、「重症度、医療・看護必要度」が高い患者とみなされる。評価の判定方法には、看護職員が毎日記録をつける「Ⅰ」と、B項目以外を診療実績データから変換する「Ⅱ」がある。2つの方法で結果が必ずしも一致しないため、該当患者割合の分布をもとにして、各入院料区分とも基準値はⅠよりⅡを低く設定している。

今回の改定では、急性期入院の実態に合わせて評価項目の一部を修正するとともに、せん妄や認知症の患者が該当しやすい判定基準②を除外したうえで、該当患者割合の基準値を見直す。

支払側は、患者7人ごとに看護職員1人の配置を条件に最も高い報酬を得られる入院料1の基準値について、現行はⅠで30%、Ⅱで25%としているのをⅠで35%、Ⅱで34%に引き上げ、患者10人ごとに看護職員1人の配置で済む入院料2、3への転換を促すよう求めた。評価項目や判定基準の見直しを織り込んだ厚生労働省の試算によると、入院料1の該当患者割合は3ポイント程度下振れすると考えられ、実態としては数値以上の病床削減効果を見込める。現行だと入院料1~4で1ポイントずつしかない基準値の階段を広げることもできる。

これに対して診療側は、基準値の変更が医療機関に与える影響が極めて大きいとし、現状の病床を維持する観点から、入院料1の基準値をⅠで27%か28%にすべきと反論した。さらに、評価項目と判定基準の見直しによって該当患者割合が8~9ポイント程度下振れする入院料4のⅠによる基準値について、現行の27%を18%か19%にするよう提案した。

公益委員は厚労省試算を踏まえ、入院料4について、「(評価項目と判定基準の見直しによる)該当患者割合の変動が大きく、基準値を現行の水準とした場合、相当数の医療機関が施設基準を満たせなくなることが想定される」とし、地域の医療提供体制に過大な影響を及ぼすことがないよう、「実態を踏まえた適切な水準」として、Ⅰで22%が妥当と判断した。

その一方で、入院料1から入院料2、3への機能分化を促すことも重視した。そのため、「該当患者割合の一時的かつ比較的小さな変動によって、該当する入院料の区分が変わることがないよう、各入院料の基準値に一定の間隔を設けるべき」と指摘し、Ⅰによる基準値で入院料1を31%、入院料2を28%、入院料3を25%と3ポイント刻みにすると結論づけた。

現行で入院料1~4いずれも5ポイントあるⅠとⅡの差は、2ポイントにして、Ⅱの基準値は入院料1が29%、入院料2が26%、入院料3が23%、入院料4が20%に設定する。

現実的には報酬区分の上位ほど基準値を厳格化するもので、診療側の懸念を考慮しながら、支払側の主張が反映された格好で落ち着いた。

入院料5~6の基準値は、最終的に中医協答申のなかで確定する見通し。入院料7は「重症度、医療・看護必要度」の測定だけが要件で、基準値がない。

判定方法はⅡの使用が適切

このほか公益委員は、ⅠとⅡによる判定の取り扱いについて、「医療従事者の負担軽減や、長期的に安定した判断を可能とする観点から、診療実績データにもとづく判定方法であるⅡを用いていくことがより適切」との考えも示した。

もともと判定方法は、看護師がすべての患者の状態を毎日確認して記録するⅠだけだったが、平成30年度改定でⅡが加わった。支払側は将来的にⅡへの一本化をめざしている。

公益委員は該当患者割合の基準値も「Ⅱを先に設定することが適当」と考えたが、原則として入院料2、3を除いて評価方法を病院が任意に選択でき、現段階ではⅡの届出が限定的なことから、今回はⅠの基準値を先に決めた。

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