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健保ニュース 2020年1月新年号

全世代型社会保障検討会議が中間報告
後期高齢者 一定所得以上を2割負担
2022年4月までに医療保険改革

政府の全世代型社会保障検討会議(議長・安倍晋三首相)は12月19日、首相官邸で5回目の会合を開き、医療、介護、年金など社会保障各分野の改革の方向性を盛り込んだ中間報告をまとめた。原則1割となっている後期高齢者医療の自己負担については、現役並み所得の3割を維持したうえで、「一定所得以上」の者を2割とする考えを示した。75歳の到達者から順次適用する段階実施のやり方ではなく、一定所得以上に該当する75歳以上の全員を2割とする。これにより、後期高齢者は1割、2割、3割の3つの負担割合となる。団塊の世代が後期高齢者に入り始める2022年に着眼し、大病院での外来受診時の定額負担を拡大することも含めて、遅くとも22年4月までに医療保険制度改革を実施する方針だ。

中間報告は、安倍政権が最重要課題と位置づける全世代型社会保障に向けて、人生100年時代の到来を視野に、これまでの主要テーマとされてきた医療、介護、年金に加え、働き方も含めた改革を進め、全世代が安心できる制度を構築するとした。

今後の改革の視点は、▽高齢者の就労機会を拡大するなど「生涯現役(エイジフリー)で活躍できる社会」▽特定の生き方、働き方が不利にならない「選択を支える社会保障」▽現行制度では22年以降に現役世代の負担が大きく上昇することから、社会保障全般の改革による「現役世代の負担上昇の抑制」▽年齢でなく負担応力に応じた負担を徹底し、「全世代が公平に支える社会保障」─の4つの柱を掲げた。

こうした認識を前提に各分野の改革の方向性を示し、医療保険制度では、後期高齢者の自己負担のあり方と定額負担の拡大を主要テーマに取り上げた。

後期高齢者の自己負担の見直しは、負担能力に応じた負担、現役世代の負担上昇の抑制の観点から、一定所得以上の者を2割とする。

今後、令和2年6月に予定する夏の最終報告に向けて、焦点となる2割該当者の所得基準や長期で頻繁な受診が必要な高齢者への影響を見極めた適切な配慮について、検討する。

紹介状なし定額負担拡大
増額分は保険財政に充当

外来受診時の定額負担の拡大は、選定療養として義務化している紹介状なしの大病院受診における定額負担の額を増やすとともに、対象病院を広げる。増額分は病院の収入に充てず、医療保険財政に繰り入れる。

具体的には、外来受診で初診に最低5000円、再診に2500円の定額負担を患者に課している仕組みについて、現在は特定機能病院と400床以上(許可病床)の地域医療支援病院を対象に実施しているが、これを200床以上の一般病院に範囲を拡大し、負担額も増額する。

患者から最低限求める定額負担の増額分については、現役世代の負担を軽減する観点から、「公的医療保険の負担を軽減するよう改める」。患者の選択にもとづく選定療養の枠組みを活用した増額分を医療保険財政に充てることから、7割給付率を将来にわたり維持すると規定する平成14年の改正健保法附則に抵触しないとの立場だ。

定額負担を拡大する趣旨は、病院・診療所における外来機能の明確化を図り、病院勤務医の負担軽減など大病院への患者の集中を是正し、かかりつけ医機能を強化する。一方、外来診療のすべての患者に〝ワンコイン〟を上乗せして追加負担を求める定額負担の手法は、「受診抑制につながる」など与党内に反対意見が多く、見送った。

後期高齢者の自己負担の見直し、定額負担の拡大はいずれも22年4月までの実施をめざす。中間報告では、これら制度改革を伴う改正法案の国会提出時期には触れていないが、最終報告を取りまとめたうえで、厚生労働省の社会保障審議会などの議論を経て、令和2年夏までに「成案を得て、速やかに必要な法制上の措置を講ずる」とした。

年金制度改革に関連しては、健康保険を含む短時間労働者への被用者保険の適用範囲について、現行の従業員501人以上とする企業規模要件を見直し、50人超の規模まで拡大する。実施スケジュールは、22年10月に100人超規模、24年10月に50人超規模とする。

中間報告は、検討会議における現時点での検討成果を中間的に整理したもの。今後の最終報告に向けて、医療保険制度改革の具体化などを引き続き与党の意見を踏まえつつ、検討を深めてく。

また、個別政策ごとに検討の進め方を示している改革工程表に沿った社会保障改革の推進と一体的な取り組みを進めるとした。このほか、「地域や保険制度、保険者の差異による保険料水準の合理的でない違いについて、その平準化に努めていく」との文言が盛り込まれた。

検討会議の構成員である加藤勝信厚労相は、医療保険の給付と負担の見直しなどについて、中間報告に示された方向性に沿って、令和2年に入ってから社会保障審議会等で本格的な議論をスタートさせるとの意向を示した。

中間報告の取りまとめについては、自民・公明両党の政府への提言を踏まえた内容となっており、とくに自民党の考えをほぼ全面的に取り入れた。

自民党は12月17日、人生100年時代戦略本部で提言をまとめた。後期高齢者の自己負担では一定所得以上の者に限って引き上げるとしつつ、具体的な負担割合は明記していなかった。

公明党は18日に中間提言をまとめ、後期高齢者の自己負担について「現行の原則1割負担という仕組みを基本」としたうえで、「負担能力に応じた負担という観点にたって、慎重に検討するべきである」とした。

外来受診時定額負担は、受診抑制に伴い重症化を招く影響があるならば受け入れることは困難と指摘。一方、病院・診療所の役割分担と連携を推進する観点から、「現行の選定療養制度のあり方を検討することも必要である」としている。

市販品類似薬の保険上の取り扱いは、今回の中間報告で取り上げられなかったが、市販品類似薬を保険外とする考え方については、▽同一薬効の他の医薬品に利用が移るだけ▽医療上の必要性という考え方が欠落しており、必要な医療であっても保険給付されなくなる─など慎重な姿勢を示した。

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