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健保ニュース 2019年12月上旬号

中医協で義肢装具の評価を議論
幸野理事 採寸・採型の基準を明確化
文書による装具事業者への指示も論点

中医協は11月27日、義肢装具の提供に関する医療機関と義肢装具事業者の連携を次期改定に向けた論点として取り上げた。健保連の幸野庄司理事は、義肢装具士が採寸・採型を行った場合、医療機関が処置料を算定できないようにするべきと主張した。これに対し診療側は、医師と義肢装具士では採型・採寸の内容が異なるとして反論したが、支払側からは「義肢装具士の関わり方を明確にできる評価体系にすべき」「(医師と義肢装具士の役割を)曖昧にせずに、はっきりと分けられる評価の仕方にしていかなければならない」との意見が相次いだ。

義肢装具の採寸法や採型法といった処置料は、医師による「患部の診察」「採寸・採型」「装着確認、療養上の指導」を包括的に評価したものだが、療養費として保険者が支給する義肢装具の価格にも義肢装具士による採寸・採型の費用が含まれている。

幸野理事は、義肢装具事業者1社で1億円を超える巨額偽装請求が発覚するなど、義肢装具で療養費の不正請求が頻発している実態を踏まえ、採寸・採型の費用が診療報酬と療養費の両方から請求されることを「看過できない」と問題視した。そのうえで、「要因は、医師に対する評価の範囲が明確でないことにある」と指摘し、「医師と義肢装具士が協働で作製した場合、二重計上されているのが現状で、医療機関か義肢装具事業者のどちかしか算定できないことを明確に基準として設定してほしい」と要望した。さらに「採寸料・採型料は医師の手技を評価するものであり、義肢装具士への指示や装着確認だけを行った場合に算定できないことも明確にしてもらいたい」と申し入れた。

診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「不適切なことが行われているから是正するという前提での議論は正しくない。医師はあくまで医学的判断にもとづいてきちんと指示を出し、確認し、最後に決定することを包括的に行っている」と述べた。猪口雄二委員(全日本病院協会会長)も「整形外科やリハビリテーションにとって義肢装具は極めて重要で、いい加減な対応で終わらせることはない」と説明した。

支払側からは、吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)が、「義肢装具の評価を制度設計をした当時と時代が変わり、(医師と義肢装具士の)分担がしっかりできてきた一方で、評価が旧体系のままということで解釈に疑義が生じてきたのではないか」と指摘した。

幸野理事は、次期改定で新たな制度設計を措置する前に、当面の対応として採寸料・採型料の算定基準を明確化するよう求めたが、厚生労働省の森光敬子医療課長は、「包括的な評価ということで線引きして示すことは難しい」と回答した。

このほか、医師による作製指示などを文書化することも論点となった。厚労省は、医師の指示を評価する報酬項目の例として訪問看護指示料(300点)や療養費同意書交付料(100点)などをあげた。

幸野理事は、「装具の作製指示や装着確認は意見書として扱うべき。訪問看護の指示とは程遠く、療養費同意書交付料と同じものとするのが妥当」とした。一方、松本委員は「患者の状態にもとづいて医学的に判断して義肢装具の作製を指示するもので、(療養費同意書交付料と同じという)指摘は適切でない」と応じた。

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