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健保ニュース 2019年12月上旬号

医療保険部会が任継制度のあり方を議論
被用者保険者 廃止含め見直しを主張
国保運営の地方自治体は反対

医療保険部会は11月21日、企業を退職後も一定の要件で引き続き最長2年間、退職前の健康保険制度に加入できる任意継続被保険者制度のあり方を議論した。健保連など被用者保険者の代表委員は、保険者間の給付率が統一された皆保険制度の下での任継制度の存続を疑問視し、同制度の見直しを主張したが、国保を運営する地方自治体側はこれに反対し、現行の仕組みを維持するよう求めた。遠藤部会長は議論の終了に際し、任継制度のあり方を「引き続き検討する」と述べた。

任継制度の見直しは、前回平成28年の医療保険制度改革論議も含めて同部会で検討課題となっても意見集約に至らず、見送られてきた経緯がある。被用者保険と国保の適用に関わるテーマでもあるため、今回、年金制度改革で検討中の被用者保険適用拡大と合わせて、任継制度のあり方を再度議題に取り上げた。

任継制度は、資格喪失の前日まで2か月以上継続して被保険者であったことを加入要件とし、▽任継被保険者となった日から2年が経過した▽死亡した▽保険料を納付期日までに納付しなかった▽他の被用者保険などの被保険者となった─ときに資格を失う。

保険料は全額を被保険者が負担し、退職時の標準報酬月額と当該保険者の全被保険者の平均標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担する。 任継制度を創設した当初の意義は、解雇や退職に伴う無保険状態を回避することにあったが、昭和36年に国民皆保険が実現されると、国保への移行による給付率の低下防止が主たる目的となり、平成15年に7割給付率に統一されてからは、「国保への移行に伴う保険料負担の激変を緩和すること」と整理されている。 厚労省はこの日の会合で、28年11月の同部会に示した資料を再度提出した。

任継制度の見直しの論点は、これまでの健保連の主張を踏まえ、▽加入要件である勤務期間を現行2か月から1年に延長②現行2年の任継被保険者期間を1年に短縮③従前(退職時)の標準報酬月額にもとづき保険料を設定─の3点をあげている。 健保連の佐野雅宏副会長は、「任継制度の適用対象の多くがもともとの制度の趣旨とかけ離れて、完全にリタイアした退職者が対象となっている」と指摘。「現在、被用者は被用者保険に加入すべきとの考えから、短時間労働者の適用がさらに拡大されようとしているが、一方で、退職後も被用者保険に加入し続けられる任継制度への問題意識が高まっている」とし、任継制度見直しの議論を加速化すべきと主張した。また、過去に提出した資料と同じものではなく、直近の実態を表すデータの提示を求めた。

安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、保険料負担の激変緩和が実態となっている任継制度に対して、「制度本来の意義が失われた以上は、廃止の方向で議論するのが自然の流れである」と主張した。将来的な廃止を前提にして、まずは制度見直しの論点の①〜③の実施を求めた。

一方、全国市長会代表委員の代理として出席した松岡参考人は、任継制度の現状の役割を「退職者の医療を保障するもの」と捉え、退職後直ちに国保に移行して最大2年間は、退職前の所得にもとづき高い国保保険料が算定されることから、任継制度の廃止や被保険者期間を短縮すると、滞納が発生しかねないと危惧した。

加入要件である勤務期間を延長することについては、「短期勤務の労働者が任継制度を使えなくなり、比較的弱い立場の人にしわ寄せが来る」と指摘した。

そのうえで、任継制度見直しにより、国保が数百億円規模の負担増となる厚労省の財政影響試算を踏まえ、「市町村の立場からは容認しがたい」と見直しに強く反対した。全国知事会代表委員代理の家保参考人も同調し、現状の任継制度を維持すべきと主張した。

厚労省の試算では、加入要件を2か月から1年に延長した場合、健保組合は保険料収入が100億円減少するが、給付費と拠出金など支出が200億円減り、合計で100億円の負担減となる。協会けんぽも100億円(収入▲200億円、支出▲300億円)の負担減となる。

国保は収入が400億円増える一方、支出が500億円増え、合計100億円の負担増となる。
 被保険者期間を2年から1年に短縮すると、健保組合と協会けんぽは、それぞれ200億円の負担減。国保は200億円の負担増となる。 退職時の標準報酬月額で保険料を設定した場合の収入増は、健保組合150億円、協会けんぽ250億円と試算している。

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