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健保ニュース 2019年12月上旬号

財政審が麻生財務相に建議
給付と負担の乖離を是正
受診時定額や後期2割負担で設計修正

財政制度等審議会(会長・榊原定征東レ社友)は11月25日、政府の財政運営に向けた意見書「令和2年度予算編成等に関する建議」を麻生太郎財務相に提出した。医療費の患者負担をめぐり、外来受診に対する定額負担の導入や、新たに75歳となる高齢者の自己負担割合を74歳までと同じ2割に維持することを提言した。診療報酬については、医療機関の実質的な経営原資である本体部分のマイナス改定を求めた。

榊原会長は建議の提出後に記者会見し、「令和の時代に着実に財政健全化を進めていくためにも、令和最初の予算編成は、今後の人口減少も踏まえ、潜在成長率の引き上げや社会保障制度の持続可能性確保に資するかどうかという点から、これまで以上に中身を吟味し、質の高い予算にするべき」と話した。

建議は、財政と社会保障の持続可能性を「表裏一体」と捉え、社会保障で「給付と負担の乖離」が拡大し続ければ、財政まで「共倒れとなりかねない」と危機感を示し、「負担の在り方の見直給付と負担の乖離を是正財政審が麻生財務相に建議受診時定額や後期2割負担で設計修正しと給付の伸びの抑制に真正面から取り組むことが不可欠」とした。

医療分野では、保険料の上昇が現役世代の可処分所得を引き下げる要因となっている一方、患者の実質的な自己負担が低下傾向にあることに着目し、「団塊の世代が2022年に後期高齢者になり始めることも踏まえれば、残された期間はわずかであり、改革はまさに待ったなしの状況」と指摘した。

財政審がこだわってきた受診時定額負担については、「進捗が大幅に遅れている」として、改めて「外来受診に対し少額の定額負担を導入し広く負担を分かち合うべき」と提案した。

ただ、過去の建議から制度設計の表現は修正した。これまでは患者の大病院志向を是正する想定で、かかりつけ医以外の受診に定額負担を限定する案や、かかりつけ医とそれ以外で定額負担に差をつける案を提言していたが、今回は、かかりつけ機能の有無によって異なる取り扱いとする考え方を示さなかった。その替わり、現役世代の保険料負担にも配慮し、諸外国に比べて頻回な外来受診を抑制することで、高額な医療費が生じた場合の安心を確保するための仕組みだと強調した。

さらに、「定額負担の導入にあわせて、かかりつけ機能の推進など医療提供体制の適正化を進めることにより、国民が受ける医療サービスの質の向上につなげられることに留意する必要がある」と説明し、定額負担によって、「貴重な医療資源の有効活用に向けた国民的な意識醸成の契機となることが期待される」と書き添えた。

薬剤費による財政圧迫問題では、▽市販品類似薬の給付範囲▽薬剤の種類に応じた自己負担割合▽一定額までの全額自己負担▽経済性を踏まえた高額薬剤の保険収載─を課題にあげ、「見直しに当たっては、新たな類型の創設も含めて保険外併用療養費制度の更なる活用を行うべき」とした。

高齢者個人の負担増なし

高齢者の自己負担割合については、後期高齢者のうち原則2割負担とする対象を新規75歳到達者に絞った。

数年かけて段階的に後期高齢者全体を原則2割負担とする従来の主張は、「世代間の公平性を確保しつつ個人から見て大きな負担増とならないようにする」ために盛り込まず、「この方策は、現在既に1割負担となっている者は対象ではなく、個々の高齢者の負担の引き上げではない」と明言した。

高齢世代内で能力に応じた公平な負担を確保する観点からは、3割負担となる現役並み所得の基準を見直すほか、金融資産を勘案して負担能力を判定する制度を検討するよう求めた。

政府が病・診の改定枠決め

次期診療報酬改定に向けては、「2年間で▲2%半ば以上のマイナス改定する必要がある」と指摘した。本部部分も、賃金や物価に比べて高い水準にある現状を「マイナス改定により是正していくべき」とした。

医科については、政府に対して「病院と診療所の間で改定率に差を設けるなど配分に当たっての大枠を示すべき」と注文した。医師の働き方改革への対応では、政策的な支援が必要なことに理解を示しながらも、「全体として労働コストが増加しないようにすべきであり、安易に患者負担・保険者負担を生じさせることは避けるべき」とけん制した。

調剤については、「全体として水準を下げつつ、調剤報酬全体の在り方について見直しが必要」との認識を示し、とくに対物業務を評価する調剤料を「剤数や日数に比例した算定方法を適正化し大胆に縮減すべき」とした。

地域医療構想の実現へ
大胆な病床削減が必要

このほか、地域医療構想の推進と国民健康保険の保険者機能強化を促した。
 地域医療構想は「進捗が大幅に遅れている」とし、公立・公的病院の対応方針に関する厚生労働省の再検証要請が「2025年の(構想)実現に向けた最後の機会であると捉えるべき」と指摘し、「病床のダウンサイジングも含んだ大胆な取組が必要」とクギを刺した。それでも進捗が不十分な場合には、都道府県知事の権限で実効性を担保する方策を検討することを提言した。

国保事業については、「本来徴収すべき保険料を、被保険者以外も負担する地方公共団体の普通会計からの法定外繰り入れによって軽減している地方団体があり、保険者として規律ある保険財政の運営とは言えない状況が続いている」と問題視した。各都道府県における現行の国保運営方針が最長で令和5年度に終了することから、「遅くとも令和5年度までに法定外一般会計繰入等を解消すべき」とした。

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