HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2019年12月上旬号

健保ニュース

健保ニュース 2019年12月上旬号

中医協で医療経済実態に各側見解
支払側 国公立除き病院1.5%黒字
総じてヨコバイの経営状況

中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)は11月27日、次期診療報酬改定に向け、医療経済実態調査の結果に対する見解を支払側、診療側のそれぞれから聴取した。支払側は健保連の幸野庄司理事が代表し、一般病院の収支が国公立を除くと実質的に黒字であることや、一般診療所、歯科診療所、保険薬局のいずれも堅調に推移しているとした。診療側は連名の意見書を提出し、医科、歯科、調剤とも総じてヨコバイの経営状況で、医療従事者の確保や医療の質の低下に懸念を示した。

一般病院の平成30年度損益差額率をめぐり、診療側は全体で2.7%の赤字となり、医療法人でも3分の1が赤字であることに着目した。急性期一般入院料や地域一般入院料を届け出た病院でほとんど改善がみられないとも主張した。支払側は、一般病院の構成割合を補正すると全体の赤字が1.6%で、国公立を除くと1.5%の黒字、医療法人に限ると2.8%の黒字だと指摘した。経年的にみても全体的に収支が緩やかな上昇傾向にあり、とくに療養病床60%以上の病院で安定的に黒字を維持しているとの見方を示した。特定機能病院の不振については、控除対象外消費税が影響していると推定した。これは、平成26年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際、課税経費率の高い病院を中心に診療報酬による補てん不足が生じた問題で、すでに今年10月に消費税率を10%にしたのに伴う臨時改定で、不足分を埋める対応がとられた。

支払側は、国公立の経営状況を他の一般病院と比較し、▽国公立は収入に占める給与費や減価償却費などが多く高コスト体質▽公立は労働分配率が90.1%と依然として高水準なことが赤字の最大要因▽常勤職員1人当たり付加価値額が国公立で相対的に低い─とした。

診療側は、医療法人の1人当たり給与費が国公立に比べて低いとした。
 一般診療所に関しては、支払側が個人・医療法人とも有床、無床にかかわらず黒字だと指摘したのに対し、診療側は、収入が全体的に伸びないなか、医療法人で院長給与を引き下げたにもかかわらず看護補助職員などの増加より、無床診療所で損益差額率がヨコバイ、有床診療所では収入減で損益差額率が低下したと強調した。

さらに診療側は、一般診療所の損益差額率が一般病院に比べて高いとの指摘について、損益差額の計算式が異なるために単純比較できないと反論した。

歯科診療所の損益差額率については、全体で0.3ポイント上昇して20.5%の黒字だったが、診療側は、個人立で収入の伸びが診療報酬改定率を下回り、経営が厳しいとした。

薬局は法人を中心に損益差額率が低下したが、全体で5.5%の黒字となることから、支払側は安定的に推移しているとし、法人の収支悪化については、平成30年度改定で大型門前薬局に対する調剤基本料の見直しが影響していると分析した。さらに法人の場合、グループ店舗数が多いほど損益差額率が高く、20店舗以上だと7.6%の黒字に達することを指摘した。

診療側は、個人・法人いずれも薬局の収入が減少したうえに給与費が増加し、損益差額率が悪化したと説明した。損益差額率はグループ店舗数にかかわらず低下し、とくに小規模な薬局の経営基盤がぜい弱だとも指摘した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年