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健保ニュース 2019年11月下旬号

健保連が柔整療養費適正化へ3つの柱
患者照会の拡大、不正対策の強化
保険者裁量による償還払いも視野

健保連の診療報酬対策委員会は18日、柔道整復療養費の適正化に向けた健保連の方針を取りまとめた。全国の健保組合を対象に実施したアンケート調査の結果にもとづき、当面は▽一部患者照会を控えることを求める指導の撤廃▽不正・不当請求事例を踏まえた適正化対策の強化▽柔整療養費の支払い方法における保険者裁量の導入─の3つを柱に主張を展開し、健保組合が保険者機能を適切に発揮できることをめざす。

柔整療養費は健保組合全体で年間840万件、約3300億円にのぼり、患者自己負担を除く保険対象額を、施術所が患者の替わりに保険請求する「受領委任払い」で実施している。保険医療機関等を対象とする療養の給付と異なり、療養費は患者が全額を窓口で一旦支払ってから保険者に自ら支給申請する「償還払い」が原則だ。しかし、柔整療養費の場合、▽かつて整形外科医が不足した時代に患者の治療機会を確保する必要があった▽柔整師法で緊急措置・応急手当を要する場合に医師の代替機能を有する▽施術が外傷性の疾患に限られ他の疾患との関連が問題となることが少ない─などの理由から、特例的に受領委任が認められ、協定・契約にもとづき地方厚生局による指導・監査を組み込んだ制度運用が定着した。

厚生労働省は過去の指導のなかで、個別の保険者が受領委任から外れることについて「国民が平等に給付を受けることができる健康保険制度の目的等から適切でない」と示すなど、すべての保険者による一律の制度としている。

しかし、現状では整形外科医が大幅に増えて診療の機会がおおむね充足されており、患者が知らないうちに保険請求が行われるなど、受領委任を要因とした不正も頻発している。さらに、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費に今年から導入された受領委任制度への参加は保険者の選択に任された「保険者裁量」で運用されるとともに、問題のある患者を償還払いへ戻す仕組みの導入も担保された。こうしたことから、厚生労働省が柔整療養費だけ保険者裁量を認めず受領委任に限定する取り扱いに対して疑問視する健保組合の声が高まってきた。

健保連の調査結果によると、柔整療養費の支払方法が保険者裁量となった場合、償還払いに移行する意向の健保組合は全体の44.8%を占め、不正が横行している現行制度への不満が浮き彫りとなった。受領委任を継続する健保組合でも、「請求件数が多いため事務処理におけるマンパワー不足」などでやむを得ず償還払いを見合わせる意見がみられた。

そのため健保連は、社会保障審議会医療保険部会の療養費検討専門委員会で議題とされている不正対策の実現を優先しつつも、遅々として議論が進まない状況が続く場合、「償還払いを可能にする保険者裁量による選択性の導入」を議題に位置づけるよう要請する。そのためにもまずは、あはきで検討が先行している問題のある患者を償還払いにする権限を保険者に与える仕組みについて早期の実現をめざしていく。

一方、足下の問題を是正する課題としては、保険者による患者照会を一部抑制するような指導の撤廃と、不正・不当請求事例を踏まえた適正化対策の強化を求める。

患者照会は、被保険者に施術の事実や内容を確認するもので、保険給付の適正化のために、健康保険法と受領委任の規程によって認められている。

しかし、厚労省が平成24年3月に発出した留意事項通知で「多部位、長期、頻度の高い施術」に対する患者照会を指導したことにより、健保組合が実施している「初検、1部位の施術」に対する患者照会の是非が問題となっている。さらに、厚労省は平成30年5月の事務連絡で、「保険者から被保険者等への照会について、不適切な実施例があると指摘されている」として、「照会が不要と思われる請求(例えば、照会すべき理由がない月に1回、1部位の施術の請求)についてまで照会を行っている例や悉皆による照会を行っている例」をあげた。そのうえで、「不正の疑いのある施術や多部位、長期、頻度が高い傾向がある、又はいわゆる部位転がしといった照会が必要な施術について照会することとされたい」と念を押した。

健保連が調査した結果、健保組合による患者照会で不適切な請求が判明する割合は、多部位の54.6%が最も高く、長期継続が50.9%、頻回が43.1%で続き、厚労省が重点的な対応を保険者に促す施術で問題は多い。しかし、初検でも37.8%、1部位でも27.0%と、患者照会で見つかる不適切な請求は少なくない。そのため健保連は、多部位、長期、頻回にとどまらず患者照会する合理性や意義があると判断し、初検・1部位のみの理由で患者照会を控えるよう示した指導に抗議し、保険者判断で広く患者照会を実施できるよう求める方針を決めた。健保組合の患者照会をけん制する一部施術者側に対しても毅然とした姿勢を示す。

初検・1部位の施術に患者照会する効果は、実際の事例をみると解りやすい。ある健保組合に臀部挫傷の支給申請が行われたが、受領委任規定で3部位未満の場合に負傷原因の記載が免除されるために施術に至った背景が不明で、患者に事情をたずねたところ、頚部の負傷で継続的に施術を受けていたのを、施術所が臀部の初検に振り替えて請求した不正が発覚した。また、猫背矯正や骨盤矯正といった療養費と認められない施術であるにもかかわらず、頚部捻挫や左背部挫傷と偽って支給申請した事例もあった。いずれも「初検、1部位の施術」への患者照会をしなければ発覚しなかった。

これらの患者照会では、違法な広告による患者の誘引や、支給申請内容を確認できない状態で患者に委任署名を求める手口も明らかになっている。自費で療養費対象外の施術を受けようと思って初めて訪れた被保険者等が、本来必要のない保険証の提示を促されたことが発端となって不正請求につながる事例もみられた。

療養費の適正化に向けて健保組合が望む対策を調査したところ、「違法看板を設置している施術所の受領委任中止」の60.7%、「1部位目からの負傷原因記載」の54.4%などが目立ち、「患者による施術毎回署名」の43.0%も多かった。

これらを踏まえて健保連は、違法看板の指導監督の徹底と罰則の強化に向け、保健所の指導権限の強化(開設届けの際の是正指導等)や、地方厚生局などによる受領委任の中止措置の適用を訴える。柔整等資格者の施術所内では認められていない整体や骨格矯正などの療法の整理も求める。

具体的な不正対策の運用では、算定基準や受領委任規程に逸脱することのないよう、施術ごとの毎回署名、1部位目からの負傷原因記載、あはきと柔整の併給制限、問題のある患者を償還払いとする保険者権限などについて、療養費検討専門委員会で早急に結論を出し、実行するよう引き続き主張していく。健保連は、団塊の世代がすべて後期高齢者となる「2025年問題」に向けた主張のなかで療養費の適正化を大きな柱に位置付けており、今後とも保険者機能を最大限発揮できる制度の実現をめざす。

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