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健保ニュース 2019年11月中旬号

財務省が財政審に参考資料を提出
「機能強化加算」を問題視
急性期入院、調剤でも健保連と共通認識

財務省は1日、財政制度等審議会の分科会に社会保障改革案の各論を参考資料として提出した。次期診療報酬改定に向けて健保連などが見直しを求めている機能強化加算をめぐり、「脂質異常症、高血圧症、糖尿病または認知症のいずれでもない患者についても、初診の受診時に定額240円の窓口負担(3割負担の場合)が生じる」と問題認識を示し、「こうした加算の在り方を検討すべき」と指摘した。

「機能強化加算」は平成30年度改定で新設され、地域包括診療料・加算などを届け出た診療所や中小病院が初診料に800円を上乗せできる。かかりつけ医による診療行為を評価する「地域包括診療料・加算」は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、認知症のうち2つ以上に該当する患者を対象とし、同意を得ることが条件だが、かかりつけ医機能の体制を評価する「機能強化加算」は、疾患の種類や同意の取得が要件になっておらず、初診の患者が一律、自動的に対象になってしまう。

このほか財務省は、急性期入院基本料や調剤報酬でも、健保連などの主張と同じ方向性で見直しを提言した。

急性期入院では、入院料の区分を左右する「重症度、医療・看護必要度」が一定以上の患者割合要件に関し、点数が最も高い入院料の基準を「現在の30%以上から35%以上に引き上げる」とし、他の入院料も「バランスの取れた引上げを行うべき」と指摘した。

入院基本料に病床の機能をより反映させる観点からは、「患者の状態像を表す指標に切り替えていくことがむしろ自然」とし、「将来的に、看護職員配置を要件とするのではなく、重症度、医療・看護必要度や手術実績等を算定要件とすべき」と提言した。

調剤報酬に関しては、地域に密着する薬局を想定して高い点数を設定した「調剤基本料1」について、「(特定の医療機関からの)処方せんの集中率が高く、比較的規模の大きな薬局も含まれている」と問題視し、効率的な経営を行う薬局が、幅広い医療機関の処方せんに対応する小規模な薬局と同様に扱われることのないよう、改善を求めた。

地域医療への薬局の貢献を評価する「地域支援体制加算」も検討課題にあげ、「在宅患者への積極的な対応も含めた厳格な実績要件を改めて設定するなどの見直しを行うべき」と指摘した。

医療保険制度改革の各論にも言及した。現役並み所得の後期高齢者を判定する基準は、世帯収入要件を見直すとともに、現役世代の所得水準の変化を反映すべきとの考えを示した。

現行の後期高齢者医療制度は、▽世帯内に課税所得額145万円以上の被保険者がいる▽世帯の被保険者全員の収入の合計額が520万円以上(世帯の被保険者が1人の場合は383万円以上)─の両方を満たした場合、通常だと1割の患者負担割合が3割になる。

財務省は、協会けんぽの年間総報酬額が平成29年度実績で380万円に満たない水準まで低下していることを踏まえ、実際には現役以上の所得があっても「現役並み」と判定されない仕組みで、「相当の収入があっても後期高齢者であれば1割負担になる」と指摘した。現役並み所得の基準に該当する後期高齢者の割合は減少傾向にあり、これが「実効給付率の上昇の一因となっている」と分析した。

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