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健保ニュース 2019年11月中旬号

財務省が現実路線の改革案
後期2割負担は新規75歳だけ
受診時定額負担は現役世代のため

財政制度等審議会の財政制度等分科会(分科会長・榊原定征東レ元会長)は1日、政府の来年度予算編成に向けた建議を今月中にも取りまとめるため、医療分野の改革について、財務省案にもとづいて議論した。

財務省は、制度の持続可能性を確保していくために、引き続き「保険給付範囲の在り方の見直し」「保険給付の効率的な提供」「高齢化・人口減少下での負担の公平化」の3つを制度改革の視点とした。

保険給付範囲の在り方の方向性は、▽「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」の原則の徹底▽高度・高額な医療技術や医薬品への対応─とした。保険給付の効率的な提供の方向性は、▽医療・介護提供体制の改革(過剰な病床の削減等)▽公定価格の適正化─とした。負担の公平化の方向性は、▽年齢ではなく能力に応じた負担▽支え手減少下での医療費増加に対する総合的な対応─とした。

そのうえで、今後の主な検討事項として、保険給付の在り方の見直しで、受診時定額負担の導入と薬剤自己負担の引き上げを強調した。保険給付の効率的な提供については、診療報酬の合理化・適正化、地域医療構想の推進、国民健康保険の保険者機能の強化をあげた。負担の公平化では、75歳以上の窓口負担割合について70~74歳時と同じ2割の維持、現役並み所得の判定基準の見直しを求めた。

具体的には、このうち受診時定額負担について、「(外来受診に)少額の定額負担を導入し広く負担を分かち合うべきではないか」とし、これにより、「全体として医療保険給付の伸びを抑制することを通じ、現役世代の保険料負担等を軽減しつつ、重点的に大きなリスク・高額な医療費を支えていくことが可能」とした。これまで受診時定額負担の導入では、かかりつけ医・かかりつけ薬局などへの患者誘導策として、患者負担に差を設けることなども検討課題になっていたが、今回、これには言及しなかった。

薬剤自己負担の引き上げは、①OTC医薬品と同一の有効成分を含む医療用医薬品に対する保険給付の在り方の見直し②薬剤の種類に応じた自己負担割合の設定③薬剤費の一定額までの全額自己負担─などの手法を検討すべきとした。①は保険外併用療養費制度の活用により、技術料は保険適用のままで医薬品だけ全額自己負担とする枠組みをあげた。

診療報酬改定は、国民医療費の伸びを高齢化等の要因による増加の範囲に収めるために「2%半ば以上のマイナス改定」が必要との基本認識から、次期改定においても「一定程度のマイナス改定を行い、国民負担を抑制する」ことを求めた。診療報酬本体が賃金・物価に比べて高い水準となっていることについては、国民負担の抑制や制度の持続可能性の観点から、「診療報酬本体のマイナス改定」により、是正していく必要があるとした。

改定率に関しては、予算編成過程で医科・歯科・調剤の割り当てのみが決定され、それぞれ「その中で改定財源がどの分野にどのように配分されているのかは明らかではない」と指摘し、次期改定では、医療機関の収益動向などを踏まえ、「病院(救急対応等)と診療所の間での改定率に差を設けることなど、予算編成過程において大枠を決めるべき」と主張した。

医科・歯科・調剤の各科改定率に関しは、「各科を取り巻く状況にかかわらず、それぞれの技術料部分に対して同程度の伸びとなるように横並びで改定率が設定され、単価を上乗せ」していることを問題点にあげた。調剤報酬は、「調剤報酬に依存した収益構造は依然として継続」と現状を分析し、「全体として水準を下げつつ、調剤基本料、調剤料及び薬学管理料といった調剤報酬全体の在り方について見直しを行っていくべき」とし、とくに調剤料は、「剤数や日数に比例した算定方法を適正化し大胆に縮減すべき」とした。

地域医療構想は、中間的な達成状況を評価し、不十分な場合、「都道府県知事の権限の在り方を含むより実効性が担保される方策を検討すべき」とした。地域医療介護総合確保基金の配分は、「一定の基準を設けた上で、積極的に取り組む地方団体に対して支援できるよう大胆にメリハリ付けをすべき」とした。

国保は、「公費の適切な活用等により速やかに法定外一般会計繰り入れ等を解消し、保険者として規律ある保険財政の運営を行うべき」とした。

後期高齢者の窓口負担割合は、「世代間の公平性を確保しつつ個人から見て大きな負担とならない方策が必要」とし、「新たに75歳になる者から2割の維持」を提案し、「現在1割負担となっている者の負担の引き上げではない」と明記した。同分科会は今春の建議で、「既に後期高齢者となっている者についても、数年かけて段階的に2割負担に引き上げるべき」との認識を示していたが、財務省は当面、負担増になる高齢者が生じない現実的な手法を選んだ。

現役並み所得の判定基準の見直しについては、「負担能力のある方には負担能力に応じた負担を求める」との考え方を示した。

財務省案に賛成相次ぐ
「丁寧な説明」で実現

同分科会の増田寛也会長代理(東京大学公共政策大学院客員教授)は同日の会合後に記者会見し、委員の発言要旨を紹介した。それによると、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」の理念や、能力に応じた負担を追求すべきとの意見が相次ぎ、財務省案は大筋で支持された。

後期高齢者の患者窓口負担をめぐっては、「団塊世代が2022年から後期高齢者入りすることを踏まえると原則2割負担は先送りできない」「全世代型社会保障を議論するなかで、若い世代の負担を抑制することがカギとなる。新たに75歳になる患者の2割負担を維持することや、現役並み所得の判定基準の見直しは重要性が高く、早期に実行すべき」「(後期高齢者の原則2割負担は)1人の個人でみれば負担は増えず、75歳になった時にそれまでの負担が続くという点をきちんと説明することが重要」などの意見が出た。

受診時定額負担については、「負担を増やすということでなく、給付の中身を見直すという観点で必要な改革だと考えるべき」「大きなリスクを支えるために必要ということを丁寧に説明することが重要」との指摘があった。

診療報酬に関しては、「改定率に着目するだけでなく、資源配分のメリハリ付けのような中身の議論を丁寧にしていくべき」「薬価のマイナスで(全体マイナスの)帳尻を合わせるのではなく、診療報酬本体のマイナス改定を今回きちんと実現するべき」など、実効性のある医療費抑制を多くの委員が求めた。

地域医療構想の推進では、「病院の効率化を着実に実施すべき」「過剰な急性期病床の削減が重要で、地域医療の切り捨てというようなことはなく、地域に必要とされる医療を提供していけば医療機関も黒字になり、最終的には医療費の増加傾向にも歯止めがかかる」などの指摘があった。

国保の法定外一般会計繰り入れについては、「解消の達成期限を示す必要がある」との発言が出た。

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