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健保ニュース 2019年11月上旬号

診療報酬改定へ幸野理事にインタビュー
入院実績評価で病棟転換を促進
患者の視点で外来機能を分化

令和2年度診療報酬改定に向けて中央社会保険医療協議会の議論が本格化してきた。支払側委員を務める健保連の幸野庄司理事は、医療資源を有効活用するために、入院・外来・調剤に共通する課題として、患者の状態に応じた効率的な医療が提供される制度設計を重視する。入院医療については、診療実績の評価を厳格化して病床再編を促すべきと指摘した。外来医療では患者の受療行動に着目し、かかりつけ医と病院の役割分担を進めるとともに、調剤報酬を対人業務に重点化し、地域に根差した薬局が慢性疾患の薬物治療などを継続的に管理することをポイントにあげた(以下、発言要旨)。

──令和2年度改定の全体像をどのように考えているか。
 平成30年度改定の後に医薬品の市場実勢価格が下落した分の一部が、10月の消費増税に伴う臨時改定で薬価に反映され、次期の薬価引き下げの財政規模は、不確定要素が多い。

ただ、従来から健保連をはじめとする保険者関係団体は、薬価引き下げ分を診療報酬本体の引き上げに使わず、国民に還元すべきと主張している。最近は政府の予算編成で社会保障費の伸びの抑制が焦点となり、薬価引き下げでねん出した財源をすべて本体に充てるようなことはなくなってきたが、残念ながら薬価と本体を完全に切り離すまでには至っていない。

医療保険財政が極めて厳しい状況を踏まえると、当然、本体のなかでメリハリを付けて医療の充実に必要な財源をまかなうべきだろう。

中医協では、早くも診療側が医療従事者の働き方改革を理由に基本診療料などの引き上げを主張し、支払側は猛反対した。医療機関が当然のこととして対応すべき経費を、患者が負担することには強い違和感がある。しかも、医師に残業時間規制が適用されるのは令和6年度からで、次期を含めて診療報酬改定が3回ある。まずは国の予算を有効に活用し、医療機関のマネジメント改革やタスクシェア/シフトを進め、医療現場の取り組み状況をみながら、段階的に診療報酬で対応していくことが重要と考える。

次期改定では、労働環境の改善に向けた算定要件の見直しや、紹介状のない患者から定額負担を徴収する病院の拡大など、患者の受療行動を変えるための対応が求められる。

限られた医療資源を有効活用する視点は、国民皆保険制度を維持するうえでも不可欠だ。地域医療構想や医師確保対策といった医療提供体制に関わる施策の進捗状況を確認し、入院と外来それぞれで、医療機能の分化・強化と連携をさらに推進する必要がある。患者に上手な医療のかかり方を周知啓発することには、保険者としても積極的に協力したい。

【入院医療】
急性期医療費を適正化

──入院については平成30年度改定で、適切な医療資源が効率的に提供されるように、評価体系が見直されたが。

従来は看護配置を重視する考え方だったのを、基本的な医療の評価部分と診療実績に応じた段階的な評価部分を組み合わせた新たな評価体系にして、とくに急性期は、今までにない大きな再編・統合と言われた。

これは将来的に人口構造が変化し、高度な医療ニーズが相対的に低下することを見据えたものだ。しかし、今年の調査結果によると、急性期で最も手厚い旧7対1病棟(患者7人ごとに1人の看護配置)から、他の病棟に転換したのはわずかにとどまった。

一般病棟のうち急性期の入院基本料は、患者の医療ニーズを「重症度、医療・看護必要度」と呼ばれる指標で測定し、基準に該当する患者の割合に応じて診療実績を評価する仕組みになった。このなかで旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」の基準該当患者割合は、支払側と診療側の意見が最後まで対立し、公益代表の裁定により30%と低めに設定された。基本的な制度設計は大胆でも、最後の段階で基準が甘くなり、病院側に激震とならなかったのではないか。支払側が主張した34%であればバランスがとれた体系となったと思われる。

急性期入院医療の評価体系を再編・統合した際、7対1病棟から10対1病棟(患者10人ごとに1人の看護配置で、7対1より効率的)に転換しやすくするために、旧10対1入院基本料と旧7対1入院基本料の点数格差を埋める中間評価として、10対1病棟を対象とする「急性期一般入院料2」と「急性期一般入院料3」を設けた。しかし、これらの届出はわずかにとどまり、とくに入院料3は極めて少ない。中間評価をふたつ新設する必要があったのか疑問が残る。

入院料1から入院料3まで基準該当患者割合は1%刻みだが、点数の差は入院料1と入院料2が30点であるのに対して、入院料2と入院料3は70点ある。看護配置要件が緩和される入院料1から入院料2へは徐々に転換が進むと見込まれるが、同じ看護配置で基準該当患者割合の要件がわずか1%低いことを理由に、70点の差となる入院料3を選ぶ病院があるのかも疑問だ。

目的は7対1病棟の削減ではなく、急性期入院医療費の適正化であることを忘れてはならない。病棟転換が進むよう、次期改定に向けて患者割合基準の引き上げを主張する。

現行の「重症度、医療・看護必要度」には認知症やせん妄を考慮する項目があるが、これも急性期入院医療の指標としてふさわしいかどうか検討する必要がある。

新しい評価体系は、診療実績をどう測定するかが重要となる。多様な医療ニーズに対応した診療行為や患者の状態、アウトカムといった変動的な要素をより的確かつ客観的に把握できるような手法が求められる。現在の「重症度、医療・看護必要度」は、従来のように看護師などが患者の状態を記録する方式と、診療実績データから変換する新しい方式のどらかを選べる。旧7対1入院基本料に相当する「急性期一般入院料1」では、まだ新方式を届け出ている施設は約3割と低調なので、可能な限り選択性はやめて、一本化することが望ましい。

介護医療院へ転換推進

──療養病棟も平成30年度改定で適正化をめざし、20対1看護配置を要件として、医療的な管理や処置が必要な基準に該当する患者の割合が80%以上の「療養病棟入院料1」と50%~80%未満の「療養病棟入院料2」による2段階評価を原則とした。

医療と介護の役割分担を図る観点から、療養病棟から介護医療院への転換を推進する対応が求められる。

医療としての機能をより明確に評価するために、療養病棟入院基本料は、該当患者割合80%以上の入院料1に一本化すべきだ。医療の必要性が高いかどうかを判定する方法も見直す必要がある。

旧25対1病棟については、看護配置を変えなくても1割減算だけで済む経過措置を新設し、2年間かけて「介護医療院」へ円滑に移行できるようにしたにもかかわらず、多くが看護配置を手厚くして入院料1、2へ逆流し、介護医療院への転換はわずかなことが調査で明らかになった。さらに、経過措置を届出ている病棟の半数超が、今後も現状維持の意向を示している。次期改定では経過措置を廃止すべきであり、仮に延長するなら減算の幅を拡大しなければならない。

──回復期は全体的に増床が必要とされ、地域一般入院基本料、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料いずれも、平成30年度改定で実績部分の評価が充実されたが。

地域包括ケア病棟入院料については、包括点数であるために急性期一般入院基本料より手厚い点数設定になっており、回復期の役割を適切に果たせるような診療報酬上の対応が求められる。主な機能として、①急性期治療を経過した患者の受け入れ②在宅で療養を行っている患者等の受け入れ③在宅復帰支援─の3つがあるが、自院の急性期病棟からの転棟先として地域包括ケア病棟を利用する場合があり、歯止めとなるような要件を①に追加するべきだ。地域包括ケアの実績部分を評価する方法も見直し、病院によってバラツキのある疾患別リハビリテーションを項目に追加したうえで、要件を厳格化する必要がある。

回復期リハビリテーション病棟入院料については、アウトカム評価を一層推進し、リハビリの質を充実すべきだ。アウトカムの前提となる入棟時の測定値が妥当なのか、リハビリ実績指数や日常生活機能評価の項目と測定方法が標準化されているかといったことが課題になる。実績部分の基準はほとんどの病棟がクリアしているため、この基準の妥当性も検討しなければならない。

【外来医療】
生活習慣病を管理

──患者の受療行動を変える対応とは。
 まず、紹介状のない患者から受診時に定額負担を徴収する病院の範囲を広げてはどうかと考える。それまで500床以上だった基準を平成30年度改定で400床以上に見直したが、初診で紹介状なしの患者は4%程度しか減少しておらず、外来医療の機能分化を推進するための効果があまり出ていない。次期改定で200床以上まで拡大することを主張していきたい。

──健保連は政策提言で機能強化加算の問題点を指摘している。
 地域包括診療加算などの「かかりつけ医機能」に関する診療報酬を届け出ている診療所と200床未満の病院であれば、疾患に関係なく、一律80点を算定できることの妥当性が課題だと認識している。対象を生活習慣病をはじめとする慢性疾患を継続的に管理する必要のある患者に限定するなど、算定要件を見直す必要がある。

最大の問題は、社会的に批判を浴びた妊婦加算と同様に、患者が知らないうちに機械的に初診料へ上乗せされる点だ。地域包括診療加算のように「患者の同意」を算定要件に追加するような対応が考えられる。診療側は「かかりつけ医機能の体制を評価する加算である」と主張するが、基本的に診療報酬は、患者が受けた診療行為の対価であり、患者の視点を踏まえた仕組みでないと、国民の理解は得られない。

──かかりつけ医機能の評価として地域包括診療加算がある。
 平成26年度改定で新設されて以降、改定のたびに常勤医師の配置などの要件が緩和されてきた経緯がある。これ以上の要件緩和はかかりつけ医機能を強化する考え方と逆行するため、支払側として許容できない。要件を緩和し対象を広げるのであれば、点数水準を引き下げなければおかしい。地域包括診療加算の届出等を施設基準とする機能強化加算についても、点数水準の引き下げや算定要件の厳格化が必要だ。

──多忙な労働者の受診機会を確保する観点で、オンライン診療への期待がある。
 平成30年度改定で新設したオンライン診療料・医学管理料は、働き盛り世代の利便性を向上させ、働き方改革にもつながり、現在の時流に対応している。ただ、対象疾患が限られ、同じ医師による対面診療を6か月以上にわたり受けていることや、緊急時に概ね30分以内で対面診療できる体制が医療機関側に求められるなど、条件が非常に厳しく、算定実績は極めて少ない。厚労省の指針改訂や医療の質に関するエビデンスの蓄積を踏まえながら、安全性と有効性を確認したうえで、算定要件と施設基準を緩和することが考えられる。

──生活習慣病の重症化予防も課題となっている。
 生活習慣病関連疾患の医療費は、医科診療費の約3割を占めており、今後も増加が見込まれる。平成30年度改定で「生活習慣病管理料」について、健保組合などの保険者とかかりつけ医の連携を要件化した。さらに一歩踏み込み、こうした仕組みを活用したアウトカム評価を導入してはどうか。

医療費適正化と適切な薬物治療を推進するために、経済性も加味した医薬品採用基準「フォーミュラリ」の普及や、繰り返し調剤が受けられる「リフィル処方」の実現もめざす。

フォーミュラリについては、後発医薬品使用体制加算の要件に追加するなどの対応が求められる。中長期的には関係学会の診療ガイドラインで、有効性、安全性を前提として経済性に優れた処方を推奨する環境を整備してほしい。医療保険制度の持続可能性を高める観点からも重要だと認識している。

リフィル処方は、慢性疾患で処方変更のない患者が薬をもらうために通院する「お薬受診」の是正策になる。病状が安定した患者がかかりつけ薬剤師に調剤してもらう場合に限定し、リフィル処方を制度化すべきだ。残薬解消を含めた医療費適正化効果のほかに、かかりつけ薬剤師の有効活用により、勤務医の負担軽減にもつながる。

【調剤報酬】
地域に貢献する薬局を評価

──近年、患者本位の医薬分業が改定のたびに論点になる。
 次期改定でも調剤報酬のあり方がポイントのひとつになると認識している。今の臨時国会で医薬品医療機器等法の改正が成立すると、機能に応じた薬局分類やオンライン服薬指導が制度化される。薬剤服用歴管理指導料のあり方を含め、こうした方向に沿った調剤報酬改定を主張したい。

調剤基本料については、地域に根差した対応を想定した報酬区分に該当する薬局でも、取り扱い処方せんの8割が近隣医療機関から出ている。受付処方せん枚数と特定の医療機関からの集中率で基本料を区分する仕組みは限界であり、抜本的に見直すべきだ。

一方で、後発医薬品の使用割合を政府目標どおり、来年9月までに80%以上に引き上げるためには、さらなる工夫が必要だと考える。

高齢者の多剤服薬による悪影響を防ぐ取り組みも促進しなければならない。これまでの改定で重複投薬・相互作用等防止加算、外来服薬支援料、服用薬剤調整支援料などを通じて減薬を評価してきたが、算定件数が伸びていない。かかりつけ薬剤師指導料の算定実績も処方箋受付枚数全体の約1.5%にとどまっている。

地域包括ケアシステムのなかで薬局・薬剤師が果たすべき役割は多い。対物業務から対人業務への転換が促されるように、調剤料を引き下げて対物業務に偏重する薬局の評価を厳格化する一方で、対人業務に力を入れ、在宅訪問や24時間対応などで地域に貢献する薬局を重視する報酬体系が望まれる。

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