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健保ニュース 2019年10月下旬号

中医協で働き方改革めぐり意見対立
支払側 次期改定で報酬の手当は時期尚早

中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)は18日、医療従事者の働き方改革に関する次期診療報酬改定での対応をめぐり、診療側が全医療機関に影響する基本診療料などで勤務環境の改善を幅広く後押しするよう求めたのに対し、健保連の幸野庄司理事ら支払側は、具体的な効果が見えないなかで診療報酬を手厚くすることに揃って反対した。

厚生労働省は、2024年4月からの医師の時間外労働上限の適用に向け、「院内の労務管理・労働環境改善のためのマネジメントの実践について、今後全ての医療機関においてマネジメントの実践が求められることや働き方と医療安全との関係を踏まえ、基本診療料等における評価の在り方についてどのように考えるか」を論点にあげた。

幸野理事は、医師の働き方改革の重要性や改革に伴って一定のコストがかかることに理解を示したうえで、「2024年度まで改定が3回ある。今ここで診療報酬を付けることについて明快に反対する」と強調した。働き方改革と三位一体となって進める地域医療構想と医師の偏在対策の進捗状況を確認するほか、タスクシェアリング・タスクシフティングやICTの利活用、外来医療の機能分化などに関して診療報酬で対応すべきことを整理する必要があると指摘した。そのうえで、各医療機関のマネジメント改革について、「全体でやるべきことが見えないなか、進捗がまだ確認できてないなかで、これを先付けして診療報酬で対応していくことは時期尚早」と述べ、診療報酬での対応を2024年まで段階的に検討していくことを主張した。

連合総合生活開発研究所の平川則男主幹研究員も三位一体改革が現在進行しているなか、働き方改革に関して基本診療料での評価のあり方を議論することに「時期尚早」と反対した。

経団連の宮近清文社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理は、診療報酬で一律に対応するのではなく、まず各医療機関が積極的に勤務環境の改善に着手し、問題点や課題がみえてきた段階で後押しする方策を検討していく必要があるとした。

全国健康保険協会の吉森俊和理事は、診療報酬での対応について、「マネジメントが始まって、それがワークしていくのはこれからで、評価はそれを待たないといけない」と述べ、勤務環境の改善などの取り組みが進む前に先行して評価の議論をすることに疑問を呈した。

患者の立場から間宮清氏は、医療の質向上や安全確保の観点からマネジメントの取り組みを診療報酬で対応することに、「患者にとって何がどういうふうに安全を担保できるのか具体的なものを示して、それに対して診療報酬でつけていくことが大事である」と述べた。

日本医師会の松本吉郎常任理事は、各医療機関が医師の労働時間の短縮に向けて取り組む事項として労務管理や意識改革の啓発、タスクシフティングなどをあげ、「医療の質を落とさずに、医療安全を図りながら取り組みを進めるためにはコストがかかるので、とくに入院に関しては基本的なところに手当が必要である」と主張した。

日医の今村聡副会長は、これまで医療機関が行ってきた勤務環境の改善と今回の働き方改革による取り組みを比べ、「次元が違う」と強調した。タスクシェアリングやタスクシフティングに関しては、医師の作業を看護師などに移行した場合、移行した職種の過重労働につながらないように調整していく必要があるなど、マネジメントの難しさを訴えた。

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