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健保ニュース 2019年10月下旬号

全世代型検討会議初会合の議事録
医療保険 給付と負担の見直し論点

内閣官房は4日、政府が9月20日に開いた全世代型社会保障検討会議の初会合の議事録を公表した。初会合では、今後の検討の進め方をめぐって構成員が自由討議したが、有識者の多くが給付と負担の見直しを医療保険制度改革の論点として発言していたことがわかった。

厚生労働省の社会保障審議会会長を務める遠藤久夫氏(国立社会保障・人口問題研究所所長)は、医療保険部会で給付と負担の見直しの議論がスタートすると状況を説明し、検討会議の議論を踏まえ、「社会保障審議会でも議論を進めていきたい」と発言。給付と負担の見直しについては、「国民、保険者、事業者それぞれの考えがあり、コンセンサスを得るのは非常に難しい」とこれまでの議論を振り返り、財政論のみの観点から議論を進めると将来への不安が募り、関係者の納得が得られない可能性に触れた。

そのうえで、「医療や介護のあるべき姿を示すなかで、給付と負担のあり方を考えていくことが重要ではないか」との考えを示した。医療については、給付と負担の見直しと合わせて、地域医療構想、医師の働き方改革、医師偏在対策を柱とする医療提供体制のあり方を含めた全体像のビジョンが必要と指摘した。

経団連会長の中西宏明氏(日立製作所取締役会長兼執行役)は、医療保険制度の給付と負担の見直しに向けて、後期高齢者の2割自己負担と外来受診時における定額負担の導入を「やむを得ない話ではないかと認識している」と述べた。社会保障の現状については、「高齢者に手厚くなり過ぎているという面が非常にある」との認識を示した。

新浪剛史氏(サントリーホールディングス代表取締役社長)は、「若い世代の将来的な負担をいかに軽減していくか、これは大変重要な政策だと思う。就労意欲を向上させるような改革とすべき」と主張し、可処分所得を上昇させるためにも「後期高齢者負担金の拡大による健保組合の負担増にならないような、そういう配慮が必要なのではないか」と拠出金負担増への対策の必要性を指摘した。

櫻田謙悟氏(SONPOホールディングスグループCEO取締役代表執行役社長)も「キーワードとしては給付と負担の見直しということ、この議論は避けて通れない」と発言し、医療について、「やるべきことははっきりしているが、覚悟が必要という分野ではなかろうかと思っている。年齢によって負担割合が決まるのではなく、能力に見合った負担という議論を是非、お願いしたい」と要請した。

田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授)は、「医療費の増加の抑制というのは、地方財政上も喫緊の課題であるので、この観点からも給付と負担の見直しが必要である」としたうえで、地域医療構想の完全実施など医療提供体制の改革を進めるとともに、「高齢者の負担のあり方は、大きな論点であり、きちんと議論する必要がある」との認識を示した。締めくくりとして、「この会議の使命として、大きなリスクをしっかり支える国民皆保険制度、これをどのように次世代に持続可能な形で受け継いでいくか。このような議論ができれば幸いだと思っている」と述べた。

麻生財務相
2022年度までに
実効ある改革が必要

閣僚からは麻生太郎副総理兼財務相が社会保障費を賄うための国債発行を踏まえ、「将来世代に(負担を)先送りしているのは間違いない。そういう意味で、現役世代が、今の形では過重な負担を求められていないか」と問題視し、「団塊の世代と言われる世代が、後期高齢者になり始める2022年度までに実効性のある改革を行うことが必要」と指摘した。

検討会議は非公開で行われ、会合終了後に、事務局を務める内閣官房全世代型社会保障検討室の担当者が、発言者の氏名を伏せたうえで、会議の模様をマスコミに説明した。

初会合の主な議論の内容については、①少子高齢化が進むなかで、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の全体の改革を進めることが不可欠。同時に、元気で意欲ある高齢者が年齢に関わらず働ける環境を整えることが必要②70歳までの就業機会の確保の法制化や意欲ある方が兼業、副業できる環境整備、年金受給開始年齢の選択範囲の拡大、疾病や介護予防、病気、介護予防へのインセンティブ措置の強化③年金、医療、労働、介護など社会保障全般にわたる持続可能な改革を図る必要がある─の3点に集約した。

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