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健保ニュース 2019年9月上旬号

健保連発表
令和2年度診療報酬改定へ5つの提言
軽い花粉症は市販薬で自ら治療
痛みを分かち合い国民皆保険を維持

健保連は8月23日、令和2年度診療報酬改定に向けた政策提言を発表し、市販品で代替可能な「OTC類似薬」を花粉症に1種類だけ処方した場合、薬剤給付を制限するべきと主張した。市販品を個人で購入しても患者に大幅な負担増を生じさせず、薬剤費の節減につなげる想定だ。健保連の幸野庄司理事は記者会見で、超高額薬の保険収載が続くことを念頭に「公的保険は個人が負いきれない重いリスクを中心にカバーするべき」とし、提言の目的を「患者の負担を増やそうということではなく、団塊の世代が後期高齢者入りし始める2022年以降、公的保険がさらに厳しくなるなかで、国民皆保険制度を維持していくために痛みを分かち合うという趣旨」と説明し、国民に理解を求めた。これに加え、▽平成30年度に新設された「機能強化加算」の要件厳格化▽生活習慣病治療薬の適正な選択基準「フォーミュラリ」の導入▽繰り返し利用可能な処方せん「リフィル処方」の導入▽薬局の機能に応じた調剤報酬─を引き続き課題にあげた。

健保連は、121健保組合の協力を得て平成28年10月から24か月分、約2億7538万件のレセプト分析にもとづき、政策提言をまとめた。

生活習慣関連の疾患別医療費構成は、入院外で糖尿病の29.1%と高血圧症の29.0%、入院で脳血管障害の34.0%と虚血性心疾患の31.7%が多く、どちらも上位2疾患で全体の6割を占める。

幸野理事は会見の冒頭、超高齢社会の進展と現役世代の人口減少を踏まえ、医療保険財政の崩壊に危機感を示し、「健保連は医療資源の効率的・効果的な配分、無駄がなく質の高い医療をめざす観点から、健保組合レセプトの分析にもとづき、様々な提言を行ってきた。今回は医療費に少なからず影響すると思われる5つの提言をする」と述べた。

花粉症の治療には、効果が高く副作用の少ない医療用成分が相次ぎ市販品に転用され、広く流通し、医療機関を受診しない「セルフメディケーション」が期待できる。

健保連は基本認識として、「OTC類似薬全般について、保険適用からの除外や自己負担率の引き上げを進めるべき」と指摘し、花粉症に処方されたOTC類似薬をすべて制限すれば全国で年間に597億円、フランスのように薬剤負担率を7割にすれば239億円の財政効果があると推計した。

まずは診療ガイドラインが初期や軽症に推奨する1種類の処方に限り、薬剤を保険適用外にするべきと判断した。健保組合のレセプトでは、OTC類似薬のみの処方が花粉症薬剤費の11.2%を占めた。このうち1種類処方は88.3%で、全国ベースで年間に36億円削減できる見込み。

代表的な製品を調べたところ、医療機関で処方を受けるより1日当たりの自己負担が30円程度安くなる市販品もあった。幸野理事は「いわゆる軽症の患者は、自ら治療する患者との整合を図る観点から、1剤のOTC類似薬だけのために医療機関に行く場合、薬剤を保険適用から外すべき」と述べた。

継続管理の患者に限定
かかりつけ医機能を評価

機能強化加算については、生活習慣病など継続的な管理が必要な患者に対象を限定するとともに、慢性疾患の指導に関する研修を修了した医師の配置を義務づけたい考えだ。

同加算は現在、地域包括診療料などを届け出た診療所や中小病院が初診料に一律80点を上乗せできる。かかりつけ医機能の強化を目的に導入したが、6か月間の健保組合レセプトを分析した結果、算定患者の57.3%は1回しか受診しておらず、再診がなかった。複数の医療機関で同加算を算定された患者も少なくなかった。健保組合全体の年間加算額は50億円程度になる見通し。

内科を標榜する医療機関について、加算の有無で初診患者の傷病名を比較したところ、いずれも疾病構造に大きな違いがみられず、「急性気管支炎」が最多の20%を占め、継続的な管理が必要な「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」は全体の5%に満たなかった。

後発品を最優先などで
薬剤費を3千億円抑制

フォーミュラリに明確な定義はないが、有効性や安全性だけでなく経済性を加味して薬剤選択の原則的な順番を定めた基準と捉えられている。諸外国を参考に一部の病院や地域で先進的に取り組まれており、これを全国に広げるために、投薬の通則に規定するなど、生活習慣病治療薬のフォーミュラリを診療報酬制度に盛り込むというのが健保連の方針。関係学会には診療ガイドラインへの反映を促す。

高血圧症、脂質異常症、糖尿病を対象とする保険給付のフォーミュラリ案も健保連として具体的に検討した。基本的には後発医薬品を優先し、糖尿病の場合には、昔から使われているビグアナイド系と呼ばれる種類の後発品を最初に使うこととした。

これによる薬剤費削減効果は、全国で年間に高血圧症1794億円、脂質異常症765億円、糖尿病582億円の総額3100億円にのぼると試算した。

お薬受診を抑制し
患者と医師に好影響

リフィル処方は、医師の指示にもとづいて薬局で繰り返し調剤を受けられ、日本医療政策機構による世論調査では約8割が導入に賛成した。すでに似た仕組みとして「分割調剤」があるが、これは医師が処方した日数の薬剤を薬局が複数回に分けて患者へ渡すもので、途中で薬剤師が介入することで有効で安全な長期処方を担保できるが、普及していない。ただ、40歳以上の生活習慣病などで通算180日以上にわたって変更のない処方は全体の半数程度を占め、再診料と処方せん料は全国推計で年間692億円におよぶ。

そこで健保連は、病状が安定した患者を対象に一定の回数や期限を設け、かかりつけ薬剤師に限定したリフィル処方を制度化するよう提案した。頻繁に医療機関を受診する患者の負担を軽減し、多忙な医師の働き方改革にもつながる。通算180日以上にわたり同一処方を受け続ける40歳以上が90日ごとの受診で済むと仮定した場合、年間362億円の医療費を適正化できる。

薬局の機能類型ごと評価
将来は薬機法改正に呼応

調剤報酬に関しては、調剤基本料と薬剤服用歴管理指導料の抜本的な見直しをめざす。

近年、門前薬局が乱立するなど、医療機関に依存した経営が問題視され、改定のたびに調剤基本料の差別化を強めるなど、地域の患者に幅広く対応する薬局への構造転換を推進してきた。しかし、依然として全処方せんの8割以上が、医療機関と同一番地か250メートル圏内の薬局で調剤されていた。薬局の対人業務を評価する柱である薬剤服用歴管理指導料は全処方せんの98%で算定されているものの、かかりつけ薬剤師指導料の算定割合は1%を下回った。

幸野理事は「処方せん受付枚数と医療機関の集中率で(報酬を)分類するやり方は限界」とし、地域医療への貢献実績などによる評価を進める必要性を指摘した。国会で継続審議となっている医薬品医療機器等法改正案に薬局の機能類型化が盛り込まれていることを踏まえ、中長期的には薬機法と整合的に診療報酬体系を再編すべきとの考えを示した。

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