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健保ニュース 2019年8月下旬号

平成29年度社会保障費用統計
社会保障給付費が120兆円突破
高齢化や介護報酬臨時改定で増加

国立社会保障・人口問題研究所(遠藤久夫所長)は2日、社会保障費用統計の平成29年度概況を公表した。医療や年金などの年間経費を施設整備まで含めて積み上げた「社会支出」は総額124兆1837億円、施設整備費を除いた個人向け現金・現物支給の「社会保障給付費」は総額120兆2443億円で、ともに前年度から1.6%増えて過去最高額を更新した。高齢化の進展に加え、介護報酬の臨時引き上げが影響した。施設整備や管理に充てる部分を含めた「社会保障財源」は総額141兆5693億円で、同3.7%増となった。

社会支出は経済協力開発機構(OECD)基準、社会保障給付費と社会保障財源は国際労働機関(ILO)基準にもとづいて取りまとめた。OECD基準は多くの国が採用しているために国際比較をしやすい。ILO基準は戦後間もなく日本が独自に採用し、歴史が古い。いずれも今回から地方単独事業や災害補償などの範囲を拡大し、過去に遡って再集計した。

国民1人当たり額は社会支出が同1.8%増の98万100円、社会保障給付費が同1.7%増の94万9000円で、1世帯当たり額は社会支出が同2.0%増の242万4500円、社会保障給付費が同1.9%増の234万7600円だった。

国内総生産(GDP)が同2%増と堅調に推移したため、対GDP比は社会支出が同0.08ポイント減の22.69%、社会保障給付費が同0.09ポイント減の21.97%で、概ねヨコバイにとどまった。

社会支出
「家族」が高い伸び率
GDP比は米を下回る

政策分野別の支出額は、年金や介護などの「高齢」が全体の45.9%に相当する56兆9399億円、医療や公衆衛生などの「保健」が33.7%の41兆8713億円で、これらふたつで全体の約8割を占めた。

前年度からの増加額も「高齢」の約8530億円と「保健」の約7015億円が大きかったが、伸び率だと、教育・保育給付費負担金や保育所整備交付金が膨らんだ「家族」の7.3%が目立って高く、次に障害者自立支援給付などの「障害、業務災害、傷病」が3.4%で続いた。雇用情勢を反映して「失業」は引き続き減少した。

平成27年度時点の対GDP比で主要先進国の社会支出を比較した場合、日本の22.66%はイギリスの22.47%と概ね同程度で、フランスの32.16%、ドイツの27.04%、スウェーデンの26.74%、アメリカの24.50%を下回った。

アメリカは、前年のオバマケア施行によって医療保険への加入が原則義務化され、それまで任意私的支出だった民間の医療保険が社会支出に計上されることになり、対GDP比が大きく増加した。

社会保障給付費
医療、年金は低調
介護が大幅に増加

部門別の給付費は、「年金」が54兆8349億円で全体の45.6%、「医療」が39兆4195億円で32.8%、「福祉その他」が25兆9898億円で21.6%を占めた。

前年度と比べると、「医療」は1.6%増加した。高齢化や技術進歩により1日当たり費用が上昇したものの、過去10年間のなかでは、薬価や調剤報酬を適正化した平成28年度の0.7%増に次いで2番目に低い水準となった。

「福祉その他」は3.1%の高い伸びを示し、とくに介護対策が4.1%増で著しかった。介護人材の処遇改善を目的とするプラス1.14%の臨時報酬改定や、高齢化に伴う要介護認定者数の拡大が主な要因。

「年金」は0.8%増で、消費者物価の下落を踏まえた年金額のマイナス0.1%改定により、高齢者人口の伸び率を下回った。

社会保障財源
保険料が2.8%増
国庫負担は伸び鈍化

財源は、社会保険料が70兆7979億円で全体の50.0%、公費負担が49兆9269億円で35.3%、他の収入が20兆8445億円で14.7%を占めた。

前年度からの伸び率は、「社会保険料」が2.8%だった。主に厚生年金、協会けんぽ、健保組合で被保険者数の増加や賃金水準の上昇がみられ、被保険者拠出が2.4%増、事業主拠出が3.2%増となった。

公費負担は前年度から1.2%伸びた。このうち国庫分は、厚生年金と後期高齢者医療制度などで増加した一方、年金生活者等支援臨時福祉給付金が終了したほか、雇用保険と協会けんぽに対する負担が減少し、0.3%の微増となった。雇用保険は国庫負担割合が引き下げられ、協会けんぽは平成28年度まであった社会保障・税番号制度システム整備費補助金が国から交付されなくなったことが影響した。他の公費負担は社会福祉、後期高齢者医療、介護保険などの地方分が増加して3.0%伸びた。

他の収入は14.0%増で、年金積立金の良好な運用実績を受けて資産収入が36.7%の大幅増となった。

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