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健保ニュース 2019年6月下旬号

財政審が令和最初の建議
社会保障改革「手綱緩めるな」
2022年より前に対応必要

財政制度等審議会(会長・榊原定征東レ特別顧問)は19日、中長期的な視点で取りまとめた意見書「令和時代の財政の在り方に関する建議」を麻生太郎財務相に提出した。高齢化がピークを迎えた後に社会保障費の伸びが落ち着くとの見方に対して、「75歳以上の人口は2040年以降も一貫して増加していくことが見込まれており、伸びが自動的に抑制されると仮定することは適切でない」と釘を刺し、支え手が減少する見通しのなかで「社会保障改革の手綱を緩めてはならない」と提言した。

建議は社会保障の総論で、現状を「公費負担の比重の大きい高齢者医療・介護給付費の増に伴い、全体として公費負担の割合が増加している。その一方で、公費負担を賄う財源を十分に確保できていないため、給付と負担のバランスが損なわれており、将来世代に負担を先送りしながら必要な費用を賄っている」と分析した。

今後の改革については、「2022年には団塊の世代が後期高齢者になり始めることを見据え、それよりも前に実現していく必要があることは論を俟たない」と指摘した。社会保障の給付と負担のあり方を含めた総合的な施策が、来年の骨太方針で示されることを踏まえ、「これは、社会保障関係費の伸びを抑制し、ひいては2025年度のプライマリーバランス黒字化を達成するうえでも重要な取り組みではあり、改革の内容・実施時期を明確にしたうえで進めていくことが不可欠」とした。

各論では、医療分野について▽保険給付範囲の見直し▽保険給付の効率的な提供▽高齢化・人口減少下での負担の公平化─の3つの切り口を提示した。

保険給付範囲に関しては、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」を基本姿勢として、リスクの小さい疾患の薬剤自己負担引き上げや、少額受診などにおける一定の追加負担を課題にあげた。医薬品・医療技術の保険収載の判断に費用対効果を反映することも重視した。経済性の観点から保険収載とならない医薬品などについては、「保険外併用療養費制度に新たな分類を設けてより柔軟に対応しつつ、併せて、民間保険の積極的な活用を促進していくことも検討すべき」とした。

保険給付の効率的な提供に向けては、さらなる国民健康保険改革、病床再編、薬価と調剤報酬の見直しを求めた。

負担の公平化では、「まずはできる限り速やかに75歳以上の後期高齢者の自己負担について原則2割負担とすべき」とした。金融資産を勘案した負担能力の判定や後期高齢者医療制度における現役並み所得の基準見直しも明記した。

支え手の中核を担う勤労世代の減少を踏まえ、「保険給付率と患者負担率のバランス等を定期的に見える化しつつ、診療報酬とともに保険料・公費負担、患者負担について総合的な対応を検討していくべき」との考え方を盛り込んだ。

財政審建議書を受け取る麻生財務相

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